AUBERCY オーベルシー 混血的な存在
フランスの靴ブランドといってとっさに浮かぶのは、おそらくBERLUTI ベルルッティでしょう。今ではすっかりカリグラフィのイメージでハイブランドに近い存在ですが、昔はそれも存在せず、10万円で購入できる良質なフランスの革靴ブランドだったのです。
しかしフランス現地の人々にとって、伝統的なフランス靴というと、むしろこちらの名前が出てくることが多いのです。AUBERCY オーベルシーです。
1935年にパリのヴィヴィエンヌ通りに創業したこの靴ブランドは、もともと創業者が英国靴に強い影響を受けていたこと、さらに創業から約20年でイタリアに工場を移したことがあり、フランス、イギリス、イタリアの靴の良い部分を合わせて具現化したような靴になっています。
ややロングノーズのすらりとしたシルエットはフランス的ですが、デザインには英国的な質実さも感じます。作りはしなやかで軽快、イタリア靴の良さをそのまま生かしています。繊細なコバの処理などはイタリアのSTEFANO BEMER ステファノ ベーメルを思わせますね。
大手の傘下に入ることなく、未だに家族経営が続けられているのも、AUBERCY オーベルシーの魅力です。現在は創業者の孫にあたる3代目のザビエルが当主として経営を任されています。
フランスの感性とイタリアの手仕事
AUBERCY オーベルシーがイタリアに工場を移したのは、単純にAUBERCY オーベルシーの思う最も良い工場がイタリアにあったから、ということだそうです。伝統を重んじるイギリスの靴ブランドであればそうはいきません。自由な思想を持つフランスのブランドだからこそ、クオリティを第一に優先して判断ができたのでしょう。
パリの店舗でラストを製作し、その他のことはイタリアの工場で行うスタイルです。塩田さんという優れた日本人の職人が活躍することで、最近までほぼ行われていなかったビスポークが再開されているとのことです。
フランスのブランドらしくパティーヌを施した靴も多いです。日本ではあまり展開が多くなく、知名度もBERLUTI ベルルッティやCOLTHEY コルテに比べると皆無に等しいでしょう。
しかしブランド化されていないフランスならではのエスプリを感じたいのであれば、AUBERCY オーベルシーの靴は是非チェックしておきたいですね。