一眼レフと言っても主流のデジタルではなく当時のフィルムカメラです。現在では後継機種のF6が辛うじて販売を継続していますが、それは奇跡的と言えるほどで、シェアは非常に少ないのでいつ生産終了してもおかしくない状態です。
フィルムカメラというのは巻取り式のフィルムをセットして使うもので、昭和生まれであればきっと何度か使ったことあるでしょう。平成一桁生まれでも、かろうじてコンビニでインスタントカメラを使ったことがあると思います。しかし現在の十代、二十代は恐らく触ったことが無い人がほとんどでしょう。instagramやiPhoneが主流な今だからこそフィルム写真の魅力に迫ってみましょう。
Nikon F5
1996年10月にニコンから発売されたプロフェッショナル向けのハイエンド機種で当時価格は30万円以上しました。ニコンの一桁は当時から耐久性や連射性に優れ、キヤノンとどちらがオリンピックの報道でシェアを獲得できるか争いをしていたのは有名な話です。
この時代は1994年にカシオからQV-10という初期のデジタルカメラが発売され、少しづつデジタルの技術が確立されつつある時期でもあり、F5は99年のNikon D1(ハイエンドデジタルカメラ)が発売されるまでの過渡期に僅かな期間だけ活躍されたモデルです。
フィルムカメラとして熟成しきった技術で、操作性からシャッターのフィーリング、15万回以上に及ぶシャッター耐久性など、格段と完成度の高いモデルとなっています。
ニコンの一眼レフを使っていた方は気づくかもしれませんが、形がNikon D2Xにそっくりなのです。縦のグリップと横のグリップが人間工学に基づいてデザインされているだけでなく、無駄の削ぎ落とした美しい造形美を実現しています。
それもそのはず、デザイナーはかのGiorgetto Giugiaro(ジョルジェット・ジウジアーロ)、自動車を始めとするイタリアの工業デザイナーで過去にはアルファロメオやマセラティのデザインも手がけています。
位相差AFや本体上部の液晶ディスプレイなど、現行のD1桁シリーズにも近い操作性で、絞り優先やシャッター優先など
普段デジタル一眼レフカメラに慣れているのでしたら、迷うこと無く使うことができると思います。
ニコンF5でフィルム写真を撮影、現像してみる
せっかく入手したので、ISO200のフィルムで撮影して現像に出してみました。
いかがでしょう。こんな感じで昭和の雰囲気が出ます。
ピントやレンズの特性も良いのですが、色合いとハイライトの部分がどことなくフィルムっぽいです。
ボケのにじみ方も柔らかく、髪の毛に当たった光など昭和レトロのような雰囲気が出ています。
最新のデジタルカメラとフィルムカメラの比較!
今度は、NikonD800とNikon F5の比較です。
F5はプロ用モデルなのでシンクロケーブルが使えます。
ですのでスタジオ撮影こんな比較をしてみました。
デジタルの方はそのまま取り込み、フィルムカメラは現像してからスキャナーで取り込んでみました。
やはりフィルムの方がコントラストが強く、暗部が濃い目に出ます。
また面白いことに、縦に潰れているというか、横に伸びているというか、比率が少し違っています。
これは歪曲収差などレンズの特性ではなくボディ側か、フィルム現像の影響のようです。
森の写真は影が濃く出ます。昔のアルバムなどに差し込んであるL版のフィルム写真を見たことがあるでしょうか。どれもこの写真のように影がどっぷり濃く出ていたのですが、それはどうやらフィルム特有のニュアンスのようです。つい最近撮った写真でありながら昔を思い出す感じです。
新しいモノとフィルム写真の融合
この写真のように、古い風景の中に新しいものがあると、古くて新しい感覚を受けさせて面白いと思います。
ニコンF5はこのようにデジタル用の望遠レンズも利用できます。ニコンの素晴らしいところに、新しいデジタルカメラに古いフィルムカメラのレンズを使ったり、一方で上記のように古いフィルムのボディに最新のレンズを使ったりできます。
もちろん絞りやモーター、CPUの相性などで動かないものもありますが、30年以上も同じフォーマットを使い続けているというのが昔からのユーザーを大切にしていると言えます。
今どきのスマートフォンやパソコンは3~4年ごとに新規格が発表されて、いくら良いプロダクトでも数年すれば化石で接続することさえできない…なんてことが多すぎます。ニコンの考え方は、保守的すぎるというネガティブな一面もありますが、長期間に渡ってサポートを受けられて、様々なレンズ資産を活用できるという面では素晴らしい会社の方向性です。
話を戻すと、レンズ側に付いた絞りを利用できるので、マニュアル操作が好きな人には楽しめます。
Nikon F5 を手頃な価格で買える事も
当時30万円位した高級モデルですが、今では綺麗な中古品が3万円前後で手に入ったりと、昔のハイエンドモデルがとてもお得に入手することもできます。
しかし発売から年月が経っているので写真のような状態の良い機種は、どんどん減っています。更にはコンディションが良いモデルは値上がりをする傾向にもあります。例えば新古品のようなものが5万円で売られていたら”買い”だと言えます。
数年して、どうしてもF5の新品が必要な人、長期間愛用してきた人が10万円でも20万円でも手に入れたいと考えるはずですから。マセラティと同じように美しく機能的なカメラを手に入れるのには一番良い時期と言えますね。
そんな訳で、今回はフィルム写真の魅力とニコンF5の紹介でした。
「すぐ見れて」「すぐ消せる」「何枚でも取れる」という、デジタル世代だからこそ、写真を24枚取り切るまで、現像するまで見れない、というのに魅力を感じるのではないでしょうか。
例えばAppleミュージックやAmazonミュージックで100万曲の中から、ひとつのジャズのアルバムを再生するとき。一方でアナログレコードの埃を跳ね除け、そっとカートリッジをそのレコードの上に落としたとき。
どちらが音楽に対して真剣になれるでしょうか。例えそれが同じ曲であっても結果は異なるはずです。
同じようにiPhoneで丸いボタンを長押しして何百枚、何千枚でも連射することはできますが、フィルムカメラは「上手く撮れなかったら消せばいい」というのができ無いので、一枚一枚魂がこもり、シャッターを切る度に心地の良い緊張感を覚える事ができます。アナログというのは使い手に対して真剣さを求めます。これがデジタルと違った良い部分です。
スペック | |
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タイプ | モーター内蔵 35mm 一眼レフレックス電子制御式フォーカルプレーンシャッターオートフォーカスカメラ |
レンズ | |
レンズ | ニコン F マウント ( AF カップリング、AF接点付 ) |
センサー | |
フィルム形式 | 35mm |
フィルムサイズ | 36mm x 24mm |
ASA/ISO レンジ | Auto DX(ISO 25-5000), Manual (ISO 6-6400) |
フィルムスピード検出 | 有り |
フィルムアドバンス | 8 frame/s |
フォーカシング | |
フォーカスモデル | AF-S, AF-C, Manual |
フォーカスエリア | TTL Phase Detection Autofocus 5-zone |
露出/測光 | |
露出モード | P (プログラムオート) / S (シャッター優先オート) / A (絞り優先オート) / M (マニュアル) |
露出測定 | 1005-pixel RGB sensor |
測光モード | 3D Matrix, Center-weighted, Spot |
フラッシュ | |
フラッシュ同期 | 1/300s |
シャッター | |
シャッター | Lithium niobate oscillator controlled vertical focal plane shutter; Electromagnetic Bulb Setting |
シャッタースピード | 30s to 1/8000s in 1/3 steps |
連続撮影 | 8 frame/s |
ファインダー | |
ファインダーオプション | DA-30 オート ファインダー, DW-31 High-mag finder, DW-30 Waist-level finder |
ファインダー倍率 | 約 0.70 倍( 50mm F1.4 レンズ・∞・-1.0m-1 のとき) |
視野率 | 約 100 %(対実画面) |
一般 | |
バッテリー | 8x AA battery, option MN-30 NiMH battery |
オプション | Multi control back MF-28 and Data back MF-27 |
サイズ | 158 x 149 x 79 mm |
重量 | 1,210 g |
生産国 | 日本 |