世界中で話題になっている「イカゲーム」ネットフリックスに加入していたので、試しに見てみたら見応えがあって面白かったので、何故これだけ話題になるのか、一部ネタバレありで考察してみます。
まだ見てない人はネタバレにご注意ください。
俳優のキャスティングが上手
私自身が韓流に詳しくないというのもありますが、イカゲームのシナリオに適役なキャストです。まるで実在しそうなドラマだと思わせるリアリティ感があります。
主人公のソン・ギフン(No.456)演 – イ・ジョンジェは、ウィキペディアで見ると清潔感のある男性ですが、劇中では本当に貧乏くさく日雇いでギャンブルをしてそうな風貌でした。
主人公のギフンの親友であるチョ・サンウ(No.218)は、ソウル大学経済学部首席合格で証券会社に勤務しているエリートだったという設定ですが、まるで証券マンのような雰囲気があります。カン・セビョク(No.067)という北朝鮮から脱北したという女性役も、ウィキペディアの画像ではありがちな韓流女優ですが、劇中では幸薄いメイクと弱々しく雰囲気の中にも覚悟があるような力強さがあり、イカゲームに出てくる全員が実在しそうに思えるほどでした。
俳優のメイクや役作りが徹底しているというのが1つ目の面白い理由だと思います。日本のドラマでは、芸能事務所の人気俳優が普段の化粧でそのまま出演して、棒読みの台本劇を見せつけられることがあります。
わたしが見たある日本のドラマでは、ある男性グループ事務所と女性歌手グループのキャストが出演していましたが、普段の雰囲気そのもので茶番にしか見えずに全く感情移入できませんでした。
物語ありきの映像作りがうまい
日本のドラマは独特で、ライティングが完璧すぎます。各芸能事務所の影響が強すぎて、顔が隠れたり影ができることをよしとしないので、暗い室内でも顔がくっきり見えるようになっています。
イカゲームはハリウッドのようなVFXやCG効果はそこまで無く、一部でハイスピードカメラを用いたスローモーションなどを活用していましたが、地味なシーンが多いです。ですが、作品に没頭できるというのは、その場の雰囲気やシナリオを最優先して次がキャストというのを徹底しているからだと思います。
そのため、停電のシーンではキャストが何をしているのか全く分からないほどに臨場感がありドキドキハラハラさせられます。日本の映像作りでは、「誰が何をしている」がハッキリ分かる映像になっています。良さもありますが、垢抜けない理由のひとつです。
単なる殺戮にはしない
日本のデスゲームのつまらない所は、グロテスクであればあるほど観客が喜ぶと思っていることです。普通の罪のない家庭が暴力で壊されたり、無差別殺人されるのが面白いと思っているフシがあります。
例えばリアル鬼ごっこ、今際の国のアリスなんかは罪の無い人が次々殺されて、ハイお涙頂戴!がよくないです。その点、このイカゲームは(ある程度)覚悟を決めた人の参加者で戦うという能動的なデスゲームなのが面白い理由のひとつです。
ネタバレになってしまいますが、デスゲームのルールの一つに参加者の過半数が中止を求めればゲームを中断できるというものがあります。そこで一度、大勢が投票するのですが実際にゲームが中断されて、日常に戻るシーンがあります。結構衝撃的で「え!?」と思いました。
普通このような映画やドラマでは、「絶対に出れない殺戮会場」みたいな恐怖心がありますが、半数以上の人が同意すればいつでも中断できるという設定が良かったです。実際には、巨額の富を目の前にして、ほとんどの人が再び参加してしまうのですが。
一人ひとりに感情輸入しすぎない
日本のドラマや映画の悪いところは死ぬ人物に限って、その人物の美しい過去をいちいち見せるということです。「この人は今から死にますが、主人公と昔からこんなに仲良くて助け合う約束もしたんですよ〜!ハイ死んだ!泣いてください!」という寒い演出が多すぎます。
ひどいと幼少期や数十年前にまで遡って回想シーンを作るので、うんざりしてしまいます。イカゲームは回想シーンは全くと言っていいほどなく、全ての人物が”今”として表現されています。不遇な環境を語るシーンはありますが、「ハイ!お涙頂戴」という露骨な演出ではなく、ごく自然な流れなので作品に集中できます。
敵役になる主催者が人間的
この手のデスゲーム系のドラマや映画は、敵役の組織が全くクローズで未知な存在であることがおおいです。今際の国のアリスなんかは、結局1シーズン見ても全く誰が犯人で何が目的なのかさっぱりわかりませんでした。
イカゲームの面白いところは、ある程度見ていると犯人役の主催者は賭博黙示録カイジに出てくるようなお金持ちが道楽でデスゲーム賭博に興じているということが分かります。そしてフロントマンと称されるデスゲームの支配人も元参加者で、人間としての過去があり感情があるということ、運営者の顔が○△□の人物たちも雇われた人々が働いているだけで、軍隊のように厳しい規律のなかで働いているということ。運営者も立場が上がれば自由が増えていくという、敵役の人間性が見えてくるのが面白いです。
絶対に何をしても勝てない存在ではなく、組織の内部から、または外因によってゲーム自体が警察によって暴かれる可能性も示唆していて、ゲーム参加者と主催者とで均衡が取れていました。
音声とBGMのバランスが良い
イカゲームは日本のドラマと違い、アメリカの連続ドラマに近い音作りになっています。日本のドラマは俳優の声が聞き取りやすく、ハキハキと発音して年配の人にも聞こえるように作られています。
日本の感動のシーンは「感動ストリングスBGM、男性が叫ぶ、死と同時に感動のBGM」コレの繰り返しです。イカゲームは主要人物が死んだからといって、これ見よがしに感動BGMを流すというよりは淡々に現実を見せつけるような、軽やかな曲が流れています。それも流行る理由のひとつなんじゃないかと思います。
韓国ドラマNetflix「イカゲーム」が日本ドラマより面白い理由
このようなキャスティングからメイク、映像のつなげ方から人物の見せ方、シナリオのバランス、リズム感などひとつの作品つくりを考えているのが面白い理由です。