※大人になれる本の記事がTOKYO MXテレビで放映されました。
「こだわり」という言葉があります。
男は自分で良質な物を選び、それを大切にし、自分のスタイルとしていくことを、ある種の生き甲斐にしているのです。
しかしその「こだわり」という言葉があまりに一般化しすぎていて、逆に何をどうこだわるべきなのかを見失ってしまった人も多いはずです。
そういうわけで今回は『大人になれる本』のメンズファッション担当ライター田中が、男が是非ともこだわるべき10のアイテムを、「こだわり方」と共に紹介していきます。
1. 自分のスタイルを表現する『スーツ』
男がこだわるべきものとして最も重要な物の一つが、スーツです。
仕事でスーツを着る人も、そうでない人も、パーティや同窓会、パートナーとの記念日デートなどで着ることになる『スーツ』はやはり欠かせません。
しかし男のこだわりの“一張羅”を買うならば、ただ使い易いスーツを買ってはいけません。
一張羅は普段使いのスーツではなく、自分のスタイルと個性へのこだわりを詰め込んだ一着にすること。そして大人の男に品格を与えてくれるような、最高の仕立てと生地のものを選ぶことが大事です。
まずは、自分のこだわりたい色柄を決めましょう。例えば、自分はストライプではなく、チェック柄のスーツを着たい。自分は深いブルーのような鮮やかなネイビーを着たい。ベージュのスーツやブラウンのスーツを一張羅にしたい。何でも構いません。
もちろん正式なパーティやビジネスなど、場面によっては着ることのできない色柄も多いかもしれません。ダークスーツ指定ならばダークネイビーかチャコールグレーの無地しか着られないのですから。
しかし、だからといってそれに合わせる必要はありません。
とにかく自分のスタイルやこだわりを詰め込んだ色や柄、シルエット、ブランド、ディテールを選びましょう。別に祝祭日でなくても、特別な日でなくても構わない。自分が「今日はお洒落して出かけたい」と感じた日に、気分を最高に盛り上げてくれる一着。
そんなスーツを一張羅として買うことが、こだわりのある男になるための第一歩です。
2. 一見して所持者の分かる『革靴』
さて、何よりも先に見られると言われる『革靴』は、やはりこだわる人の多いアイテム。確かに足下に丁寧に磨かれた素晴らしい品質の靴が光れば、こだわりのある男としてこの上ないことですね。
では、どんな靴を選ぶべきか?
実はどんなスタイルの靴であれ、愛情の注がれた高品質な靴は、非常にエレガントな風合いになっていくものです。ですから選ぶ靴は、何年にも渡って使用していける作りで、しなやかなレザーを使ったものであれば何でも構わないでしょう。
しかし一つだけ、条件があります。
それは、一見するだけで「あなたの靴だ」と誰もが分かってしまうほどに、あなたのスタイルを象徴するような靴を選ぶこと。
写真のようなイタリアの工房で作られるホールカットの艶やかな革靴でも、コードバンを使ったアメリカのタフな革靴でも、イギリスのベーシックを極めた革靴でも構いません。
自分のいつもの服装、スーツのスタイルなどを熟考して、あなたのスタイルにふさわしい靴を選びましょう。
例えば普段から少し明るめのネイビーのスーツを着ており、休日は軽快なジャケパンスタイルをしているような人は、ハンドフィニッシュの色合いが美しい、イタリアブランドの靴を選ぶのが良いかもしれません。
アメカジが好きで、休日には必ずといっていいほどヴィンテージのデニムや、ミリタリー系のブルゾンで着こなしている、という人であれば、レッドウィングに代表されるアメリカのブーツを選ぶのも良いでしょう。
ビジネスで使う靴でも、カジュアルで使う靴でも構いません。とにかくスタイルをとことん反映した一足を持つことで、こだわりのある男になることができるでしょう。
3. ベーシックな柄の最上質『ネクタイ』
さて、男のスタイルやセンスが最も顕著に現れるアイテムといえば、やはりネクタイでしょう。ネクタイのセンスの良い男はその他の着こなしも洒落ていることが多く、ネクタイ選びで失敗している男にはやはり隙がある。
「ネクタイは、締めている本人よりも一歩先に部屋に入ってくる」
エリザベス女王のデザイナーとして活躍し、ポール・スミスよりも早く、ファッションデザイナーとして初めて「ナイト」の爵位を与えられたハーディ・エイミス卿はこのような言葉を残しています。
ほとんど、男しか身につけることのない『ネクタイ』には是非ともこだわるべきなのです。
しかしそこでこだわるべきなのは、気品と品質、そしてコーディネートでの役割です。
あなたが犬が好きだからといって犬のモチーフのネクタイをするのだとか、世界史が好きだからと言って、圧倒的優勢にあったダレイオス3世をアレクサンドロス大王が見事に破ったイッソスの戦いを描いたネクタイをするのも……いやぜんぜん悪くないですが、まあ、ここではその話は置いておきましょう。
ベーシックでエレガントなネクタイの中で、いかに自然に自分のセンスを反映させるかが大事なのです。
マリネッラ、タイユアタイ、ドレイクス、シャルベ。世界には数えきれないほど多くの素晴らしいネクタイブランドと、一流シャツブランドの作る良質なネクタイが存在します。そういった最高品質のネクタイの中から、自分のスーツに良く似合うもの、そして自分が「これだ」と思うものを一本選ぶこと。
これこそが、ネクタイのこだわり方です。
(ちなみに、ネクタイは大変失敗の多いアイテムで、男が自分のセンスで選ぶと“歩く災難”になってしまうことも少なくありません。こだわりたいけど失敗が怖い人はこうします。スーツを着て、丸の内のマリネッラというネクタイ専門店に行って、店員のお姉さんに、そのスーツに似合うネクタイを2〜3本選んでもらう。そこから、自分が気に入るものを選ぶのです。ここからが大事ですが、あくまでそのネクタイは自分のセンスで自分で選んだものとして、ドヤっと堂々結びましょう。)
4. 溺愛する『愛車』
おそらく皆さんもこだわりを持っているであろう、車。やはり車へのこだわりも男ならば忘れてはいけません。
しかし必ずしも高性能なスポーツカーである必要はありません。グレードの高いモデルである必要もありません。
私なんかは少し古いイタリア車が好きですが、燃費で日本車に負け、信頼性でも日本車に負け、性能でドイツ車に負ける。あげく手間が掛かってばかり。しかし好きなものはしょうがないのです。
確かに昔は○○○350よりも○○○550の方が偉い、それよりも○○63 AMGの方が偉い、なんていうような風潮がありました。○シリーズよりも○シリーズの方が偉い、それよりもM○の方が偉い、という考え方が当然とされていた時代もあったことは否定しません。(本当は性能なんて殆ど変わらないのです。皆さんが尊び厳守しているところ=「法廷速度内」であればね!)
また○人乗れなければいけない、燃費が良い方がいいなど様々な条件があるのも分かります。
ですが何よりも大事なのは、自分が本当に憧れていた車、少し無理してでも乗りたい車、名前を付けて毎週末に洗車してしまうほど、心から溺愛してしまう車を愛車にすることです。
ある人は日産GTRを買うかもしれませんし、ある人はチンクエチェント(フィアット 500)を買うかもしれません。
どの車でも構いません。好きな車にこだわりましょう。
本当に好きな車に楽しそうに乗っている人は、いやらしい目論みがあって「モテる車」に乗っている人よりもよほど魅力的だと、女性達も言います。
5. 毎朝を共にする『カップ&ソーサー』
多くの男性にとって盲点となってしまうのが、女性的なものと扱われている食器。
しかし本当にこだわりのある男であれば、革小物やネクタイ、車などをこだわるのと同じように、自分が毎朝紅茶やコーヒー、エスプレッソを飲む時に使う愛用の食器を一客揃えていても何らおかしくはありません。
シンプル且つエレガントなデザインとイタリア的な軽快な色合いを楽しめるリチャード・ジノリ。特に有名なベッキオ・ホワイトは、イタリアファッションを語る男ならば一客は持っていないと話が始まらない定番品です。
もっと突き詰めた美しさを欲する人であれば、おすすめはクールで洗練された白と重厚感のある造形美を楽しめるマイセン。
ドイツの北東部でチェコとの国境付近、特に美しく独特の文化を持つとされるザクセン地方に、ドレスデンという有名な都市があるのをご存知でしょう。第二次世界大戦で英国空軍の爆撃により大破し、200億円弱の寄付金で再建された聖母教会の話などは非常に有名ですね。
そのドレスデンの中心部を流れるエルベ川をつたって、数十キロ北上したところにあるのがマイセンという街です。
優れた職人文化を持つザクセン地方の陶器は、日本人の感性に非常に馴染み易いと言いますね。確かにフランスのリモージュなどに比べると、なんとなく日本固有の色に合う絵付けや造形が多いように感じます。
普段から美しいものを見慣れている人であれば、その造形や発色の美しさに見とれてしまうはずです。
食器は女性の趣味、という考えはもう昔のもの。こだわりのある男は、毎朝を共にするカップ&ソーサーを一客、持っておきましょう。
6. 何度でも読み返す自分の『聖書』
最近では様々な情報や娯楽が溢れているせいで、本を読む時間がめっきり減ってしまったという人も少なくないのではないでしょうか。
しかし自分の生き方を変えた一冊や、考え方の基礎となっている一冊、すなわち自分にとっての「聖書」となるような本は、やはり書籍の形で持っておき、少し空いた時間などで手に取って読むことのできる場所に置いておきたいものです。
例えば少し時間が空いたとき、もう何度も読んだ本を電子書籍の画面で開いて、適当な場所までスクロールして読み始めようという気になるでしょうか。いや、ならないですよね。ニュースやSNSなどをかわりに見てしまうでしょう。
でもそんなときに、手元に本があったら?
何度も読んだ本であっても、適当に開いて活字を追い始めるのは、自然にできてしまうことです。
個人的に最も好きな小説であるドストエフスキーの『罪と罰』は、あまりにもボロボロになったり、ヨーロッパの空港で荷物の重量制限に引っかかって処分したりとで、結局3度買い直しています。
日本語の表記で曖昧な部分をはっきりさせるために、英語版も買って読み比べたことも覚えています。
何度読んでも消耗され尽くされることのない名作だからこそ、これほどまでに読み返すことができるのでしょう。
あなたにとっての『聖書』はどの小説ですか? 是非、こだわりの一冊を本の形で手元に置いてくださいね。
7. 重厚感のある一点物の『傘』
スーツやジャケットにこだわっているのに、傘は100均のビニール傘。そんな「晴れの日限定」の紳士にはなってはいけません。こだわりのある男ならば傘だっても、自分だけの一本にこだわりましょう。
もともと英国の紳士は必ずと言っていいほど、ステッキを持っていました。
重厚なステッキは、歩行の補佐器具というよりは、ステータスの一つだったのです。現在では年配の方でもない限りステッキを使っていれば「懐古主義者」と後ろ指を差されてしまいますが、傘であればその心配もありません。
何よりも良いのは、一点物の木を使った傘。文字通り世界に一本しかない傘は、男がこだわるにふさわしいものです。
例えばこちらの傘はイタリア南部、ソレントのレモンの木を使った傘。硬葉樹の葉ようなグリーンをキャノピーに用いているあたり、素材の由来にちなんでおり、非常にお洒落ですね。
英国のフォックス・アンブレラズ、上の写真の傘イタリアのマリオ・タラリコなどがこういった一点物の木を使った傘で有名ですね。
フランネル素材、チョークストライプのスーツに合わせるような重厚な傘が欲しい人にはフォックス、ベージュのコットンスーツに合わせるような軽快さと洒脱感のある傘が欲しい人にはマリオ・タラリコがおすすめですね。
8. 常にわずかにまとう『香り』
いつも「同じ香り」がする。
それも大げさではなく、例えば席を外していて戻ってきたときにふと香ったり、隣に座ったときにその香りがしたり、そういう香り方です。
こだわりのある男であれば、自分が常にまとっている香りにこだわるのも、重要です。必ずしも一つの香りである必要はありませんが、いつも柑橘系の香り、などというように系統付けをすることで、スタイルを確立することができますね。
それが必ずしも香水である必要はありません。むしろ無意識に香水は付けすぎてしまうリスクの高いアイテムです。フレグランスの石鹸やボディクリームでも十分すぎるほど香りをまとうことができるので、慎重に選びましょう。
さらに、香りをまとうときに最も重要なことを一つ。
これは意外に書いている人が少ないのですが、香り物を付けるときには、他の香りやニオイを消しておくことが最重要です。
例えば服を洗うときに使う市販の香り付き洗濯洗剤や柔軟剤はほとんど、ニオイがケミカルできついものしかありません。こういったものを使っている限り、良い香りをまとうことはできないでしょう。
ちなみに最近の香り付き洗濯洗剤や柔軟剤やニオイは強烈で、嗅覚の乏しいことを自己紹介してしまうことになるほか、大抵が化学物質で作られており、人によってはくしゃみやかゆみ、悪心などを催すため「香害」と呼ばれています。すぐに使うのをやめた方が懸命です。
『大人になれる本』編集部ではバイオクリーンという、非常に優しい天然由来のシトラスラベンダーの香りで、洗った後には全く香りの残らない洗剤を使っていますが、某販売サイトではこれに「良い匂いがするということで買ったのに、香りが全くしない」というレビューが。普段どれほどニオイの強い洗剤を使っているのでしょう。
またタバコや部屋のニオイなどは予想以上に衣服に残っていますし、ヘアワックス等も比較的強烈なニオイを持っていますので注意が必要です。
そういったものを一つ一つ見直し、完全に無臭に近い状態を作ってから、香りのあるものをわずかに用いる。これがこだわりのある男に知っておいて頂きたい、正しい香りのまとい方です。
9. 音で選ぶオーディオ
ヘッドホンにしろオーディオセットにしろ、自分の生活環境や聴く音楽に合わせて最適なリスニング環境を作ること。これは大人だからこそできる贅沢でも、こだわりでもあるでしょう。
もしあまり大きな音量を出すことのできない部屋に住んでいるのであれば、最高峰クラスのヘッドホンを試してみましょう。数千円〜2万円程度のヘッドホンを色々と試してみるのも悪くはありませんが、やはり5万、7万となってくるといきなり音質が変わります。
ヘッドホンが「音の良さ」ではなく、「高音質を前提とした音の個性」で語られるようになるのはこの値段からです。スタイルを持つ男であれば、自分好みの音質を持つヘッドホンで音楽を楽しみたいですよね。
ちなみに個人的な好みはドイツの老舗オーディオメーカーである、ゼンハイザーのHD650です。
低音から高音まで非常にバランス良く、美しい音で再生してくれますが、中でもリバーヴ成分の集中する10kHz周辺の再現力が高く、空気感と立体感を伴う気持ちの良い音を聞かせてくれます。
ただ、それでいてドラムのスネアやエレキギターなどの集まる音域は控えめで、低音が豊かなので、一種独特のサウンドですね。
また持ち家の人など、音を出せる環境にある人は、是非オーディオセットを。最近マセラティとコラボしたことでも有名なB&Wを始め、ここにも一つの広く深い世界が存在しています。
詳しくはこちらのページを参考にどうぞ。
10. 次の世代まで使い続けられる『外套』
「我々は皆ゴーゴリの『外套』から生まれ出でたのだ」
ヨーロッパ人にとっていかに外套=コートが大切なものであったか。数々の小説の中で、貴重なスペースを割き、何文にも渡ってコートの描写がされていることを見れば、コートが彼らにとってただの「服」では無かったことが分かるはずです。
ゴーゴリの『外套』でアカーキイ・アカーキエウィッチが全財産をはたいて新調した外套、ドストエフスキーの『罪と罰』でラスコーリニコフ青年が着ていた「一種独特の趣のある」コート。
シャーロック・ホームズの象徴ともなったインバネスコート。小説の他には映画007でも、数々の大切な意味を持つシーンでジェームズ・ボンドがチェスターコートを着て登場するのを、ファンは見逃しません。
コートは着用期間が他の服よりもずいぶんと短く、比較的厚手の生地を用いて作られており、シルエットに流行が少ないこともあり、大事に着ていけば何十年にも渡って着ていくことができます。
特に上質な生地を使って、最高の仕立てで作られたコートは、もはや一生物を超えて、何世代にも渡って家宝のように受け継がれ、着られることも少なくありません。
男が最後にこだわり、いずれは自分の子の「こだわりの物」となる外套。
他のものを極めてしまった人は是非、最高のコートを手に入れましょう。
いかがでしたか?
他にもたくさん紹介していきたいところですが、今回は男がこだわるべきアイテムを10個厳選して、そのこだわり方を紹介しました。
皆さんも是非、身の回りの物にこだわり、スタイルのある男を目指していきましょう!
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