美しい中欧のハンガリーで生まれた「ヘレンド」時代は1826年、ドイツの王立ザクセン磁器工場に遅れをとりつつも、ヴィンツェンツ・シュティングル(Vinzenz Stingl)によって創立されました。
原料の土に恵まれ、以前から焼き物が盛んだったようですが、1842年にはヘレンドが王室御用達に指定されるほどに成りました。
当時のヨーロッパでは、シノワズリ(東洋趣味)が流行しており中国の青磁や、日本の柿右衛門を始めとする伊万里焼にも大いに影響を受けました。
そのため、現在でも大型の香炉の中には有田焼に似た絵柄も存在します。
ウィーンの薔薇の歴史
さて、現在はヘレンドと言えば「ウィーンの薔薇」を思い浮かべる人も多いほど有名な絵柄ですが、実は近年までは一般人が持つことのできないシリーズでした。
オーストリアを統治していた貴族、ハプスブルク家の内使い用の高貴な絵柄で門外不出だったのです。
1918年にオーストリア・ハンガリー帝国が帝位を去る事で、大衆の目に触れるようになりました。王妃であった麗しきオーストリア皇后エリーザベトが気に入っていたそうです。
ハンガリーの隣、オーストリアのウィーンにある窯元「アウガルテン」にも、ウィンナーローズ(ウィーンの薔薇)というシリーズがありますが、ヘレンドとも似た中欧らしい独特な濃淡のタッチはオーストリア・ハンガリー帝国の黄金期を髣髴とさせます。
ウィーンの薔薇の最大の魅力は、ひとつひとつ丁寧にハンドペイントで絵付けを施してある事です。
大量消費時代には、こういった手作業は嫌厭されがちで、プリントや転写などに切り替える窯も多いですが、ヘレンドは今もなお一つづつ絵を描いているのです。
ティーカップやソーサー、プレートなど、同じ絵柄はひとつと存在しない特別感が感動に繋がります。
バックスタンプの横にはペインターのサインがあり、それぞれ個性のあるタッチで描かれています。
それでいてヘレンドの品質基準とも照らし合わされて出荷されるので、バラバラで買ったとしてもシリーズとして完璧に揃うのが凄いところです。
写真では中央に、カップ&ソーサー(ティー用)と手前にモカカップ。
19cmプレート、ミニティーポット(400cc)、パーティートレイ。
筆者の持っているコレクションは限られていますが、これだけでなく他にもシュガーポットやミルクポット。
コーヒーセットなど、数多くのシリーズが発売されています。
こちらは、本家オーストリアの公式ページから引用したものですが、シルエットが特徴的で美しいですね。
王道の赤×緑以外には、ピンクのウィーンの薔薇も発売されていて全てコレクションしてしまいたくなります。
特別な食器で楽しむ紅茶の時間は何にも代えがたい至福のひとときです。
実は、筆者はウィーンの薔薇を生涯大切にするつもりで揃えている途中です。
(最初に買ったカップ&ソーサー1客は21歳の時に買ったものです。)
ハンドペイントの希少な食器達は時代により、どんどん少なくなってゆきますので、気になる方は是非一度手にとって、その魅力を確かめてみて下さい。
ヘレンド・ジャパン公式ショッピング
http://www.herend.co.jp/products/vrh/shopping.html
オーストリア公式サイト(ハンガリー語/英語)
http://herend.com/