ギターの厚さと音の関係
アコースティックギターやクラシックギターを選ぶときには、色々な楽器を試奏してみることになります。そんなときにギターを持って気づく、ギターによる厚さの違い。同じアコースティックギターやクラシックギターでも、差が大きいときでは2倍近く厚さが異なるモデルもあります。
イメージとしてはボディが厚いギターは音がしっかりと響き、薄いギターはあまり音が出ないような感じがしますが、実際のところはどうなんだろう?と考えたことのある人は少なくないはずです。
そういうわけで、今回はボディの厚さと音の関係についてを考えてみます。
同じ厚さでも、音の響きは違う
まず色々なギターを弾いてみて分かることは、ギターの厚さがほとんど同じでも、素材やギターの作りによって音の響き方は全然変わると言うことです。もちろん傾向としてはボディが厚ければ深みのある音が、ボディが薄ければ軽快な音が出ると言われていますが、その限りではありません。
例えば上左のパコカスティージョのギターは、トップにスプルースと言われる木材、サイドバックにシカモアと言われる木材を使っており、非常に軽快なサウンドととなっています。ボディは普通よりもほんの少し薄いくらいですが、音色は普通のクラシックギターとはまるっきり違います。
音には深みがそれほどなく、音の粒が硬く、弦の金属質な感じの活きたサウンドになっています。
それとほとんど同じ素材構成で厚さも近い右のホアンエルナンデスのギターは、もっと音が前に出てくる印象で、音の響き方や音量はまったく異なります。音質もより深みがあり、ボディ全体が鳴っているような気持ち良さがあります。
これはおそらく素材の良さや作りの良さによる差だと言えます。同じ厚さのギターでも音量や音色、音の響きは全然異なりますし、厚さと厚さ以外の様々なことが全て作用し合って音ができているということが分かりますね。
薄くても良い音は出る
今度は極端にボディの薄いギターをみてみましょう。ジプシーキングスのシグネチャーモデルで有名なスペインのメーカー、Cordoba コルドバのエレガットです。
このエレガットは基本的に生ギターよりも薄いことの多いピックアップ搭載のナイロン弦のギターの中でも特にボディの薄い部類です。そういうわけで「多分こういう音だろうな」とイメージを持ちながら実際に試奏してみて驚きました。
深くて響くサウンドです。特に低音弦の音量はまるきりこの薄いボディのどこから音が出ているのか不思議なぐらい出ています。高音も、見た目ほど軽くなく堂々としています。
このコルドバのエレガットは見た目では軽快さがあり、音量はやや小さく、歯切れのいいサウンドのギターに見えます。確かにそのイメージは強く、このギターもフラメンコギターとして扱われているため、YOUTUBEの試奏動画などではガチなフラメンコ奏者の人たちがラスゲアートやストロークでのルンバやブレリアのリズム、アポヤンドでの素早いパッセージを弾いていることが多いです。
しかし実際にはそういった弾き方は 、ボディが1.5倍近く厚い、上の写真右のホアンエルナンデスの方がよほど軽快で歯切れ良く、気持ちがいい。逆にこのコルドバのギターは優しくつま弾き、ボサノバや歌の伴奏のアルペジオを弾いたほうが柔らかく深みのあるサウンドが気持ちよく、ギターの良さがよほど生かされます。
ただし特徴として、ボディの薄い楽器や小さい楽器は1〜2KHzあたりにちょっとしたピークがあるような響きを持っていて、そこは評価が分かれるところです。ちょっとレゾナンスがかかったような感じの雰囲気ですね。
まとめ
今回はギターの厚さと音の関係について考えてみました。
実際にはギターは厚さだけでなく、木材の品質、質量や硬さ、作りの良さや作り方それ自体など非常に様々な要因で音が決まっています。なので例えば厚いから音が響く、薄いから音が響かない、あるいは薄いから歯切れが良い軽快な音などの思い込みは捨てて、弾いてみたときのサウンドで判断することが大事です。
ぜひギター選びの際の参考にしてくださいね!