イタリア靴
私たちが一生物になるような靴を見つけようと思ったら、その選択肢になるのは大きく分けて5つの国の靴でしょう。
ひとつはジョンロブに代表される紳士的な靴のイギリス、芸術的な色合いのベルルッティを生み出したフランス、スコッチグレインなど実力派のメーカーが揃う日本、無骨な靴を得意とするアメリカ、そして数多くの一流靴メーカーを生み出しているイタリアです。
中でもイタリアは、その国自体が革靴のイメージで語られるほど。イタリア製の革靴と聞けば誰もが、職人が作るハンドメイドの靴を想像してしまいますよね。
今回はそんなイタリア靴の魅力を紹介していきましょう。
イタリアの靴は軽やかでスマート
上の二つの靴を比較してみてください。
左はイタリアの靴で、右はイギリスの靴です。ブランドはそれぞれbrioniとTrickersです。brioniは靴メーカーではありませんが、生産はイタリアの大手靴ブランドが行っているため、どちらも一流の靴です。また左はヌバックで右はスエードと、少し違いはあるものの、どちらも起毛素材です。
しかし実際に見てみると、ずいぶんと雰囲気に違いがあるのが分かります。
brioniのローファーがすっきりとしていて、全体的に足を一回り包む袋のような雰囲気であるのに対し、Trickersの方は堂々としていて格式高い雰囲気になっています。
このように、イタリアの靴は他のどの国の靴に比べても、軽やかな印象があるものが多いです。これはコバの張り出しが少なくすっきりとしたデザインにしたものが多かったり、ソールが薄かったりという特徴のおかげで生まれる印象です。
また基本的にイタリアの靴は細身で、さらに甲の部分は低い。日本人の場合には形が合わないことも多々あります。しかしその細身で低いスタイルが、イタリアの靴を美しいものにしています。
イギリスの紳士的な雰囲気を好む人と、イタリアの造形美に惚れ込む人。ちょうどその人の性格があらわれるようで、面白いですね。
手作業で作られる独特の色合い
イタリアの靴には、パティーヌという色の付け方がされるものが多く存在します。これはすなわち、色のついていない状態で靴を作り上げ、後でハケや筆を使って染色職人が色をつけていくという方法。
色むらの美しい、まるで絵画のような靴ができるのはこのような製法のおかげなのです。
ちなみにイタリア以外ではパティーヌ靴として特にフランスのベルルッティが有名で、ベルルッティは購入後にパティーヌで色を作ってもらうという方法が取られます。例えば茶色の靴を購入し、革パンチの色サンプルを見てそれを黄色やオレンジに仕上げてもらう、といった感じですね。
イタリアの靴ブランドの場合は、オーダー靴でないかぎりそういった買い方はしませんが、そのかわりベルルッティでは25万円以上するようなこのパティーヌの色合いを、最低3万円から手に入れることができる。
その代表が、上の写真のフランチェスコ・ベニーニョですね。こちらの靴は定価が4万7000円と非常にリーズナブルになっており、革の硬さや製法から履き心地はやや犠牲になっていますが、外見は息をのむほど美しい。
さらには非常に美しく、履き心地も素晴らしいサントーニの靴でさえ、10万円周辺で手に入れることができます。
イタリア製の靴はパティーヌでなくても、ムラ感のある自然な印象の革を使っていることが多いです。この革質はイギリスや日本の靴に比べて表情が豊かに感じられ、華やかな足下を演出しやすいのが特徴ですね。
これはイタリアが革製品に関する技術で非常に進んでおり、また質の良い革を生産できる環境があるからでしょうか。質のいい革は、その革本来の風合いを生かして、自然な仕上げにすることができます。
イタリア的なセンス
そしてやはり、多くの人がイタリアの靴をほしがるのは、イタリア的なセンスによるものでしょう。
イタリアの靴に見られる色合いや装飾、デザインなどそういったものは、艶やかで色気があり、他の国の靴にはなかなか見られないようなものばかりです。
もしツートンの美しい靴が欲しい、自由な装飾の入ったホールカットの靴が欲しいと思ったら、やはりイタリア靴の中から探すのが一番です。
イギリスの靴が格式高い、サヴィルロウ仕立てのスーツのためにあるとしたら、イタリアの靴はナポリ仕立ての軽やかなジャケットを使ったジャケパンスタイルのためにあります。
イタリアの靴は軽やかに、華やかにジャケットスタイルの足下を飾る。適度にラフで、しかしドレッシーで、エレガントさと遊び心を兼ね備えたその美しさが、イタリアの靴の魅力なのです。
いかがでしたか。
次に靴を選ぶときにはぜひ、イタリアの靴を選択肢の一つにしましょう。