“完璧な美しさは稀である。”
BMWの3シリーズクーペのカタログにはこうイントロを紹介されています。
クーペの魅力といえば美しいスタイリング、それに尽きます。
BMWのクーペという魅力
乗用車といえば4ドアの車が殆どで、現在販売されている国産車でクーペの存在は僅か数える程しかありません。
セダンが主流の時代を逆行するかの如くBMWがリリースしているのが素晴らしいです。
やはり、一番売れるのは主力であるセダン。街で見かけるBMWも、その殆どがセダンかハッチバックと言っても差し支えないはずです。
つまり台数が売れない事をわかりつつも、新規でデザインを起こし、金型を作り、多くのパーツが少量生産のクーペのためだけに作られているのです。
そして、スポーツカーとは異なり居住性も高く、4人乗員でも快適にロングツーリングを楽しめるコンセプトとなっています。
昨年、この3シリーズクーペの後継車種として”4シリーズ”がリリースされました。
全てにおいて、このE90 3シリーズを凌ぐ性能となっており、素晴らしい進化を遂げましたが、一つだけ気になる点がスタイリングにあります。
3シリーズクーペとしての存在・スタイリング
確かに4シリーズの性能は高く、実車を見てもデザイン性に優れていますが、”セダン”とデザインが画一化され、F30の3シリーズと4シリーズにおいては、どちらも良く似たものとなってしまいました。
以前のE90の3シリーズは、セダンとクーペは全く異なったデザインが用意されて、最上級モデルであるM3においては、そのクーペとしての美しいスタイリングに魅せられた人が多く居ました。
E90のM3は特別な存在で4リッターV型8気筒のNAのエンジンは、まさにレース専用モデルそのものであり、レッドゾーンまで気持ちよく吹け上がるエンジンを積んでいました。
そういった経緯もあり、3シリーズクーペのオーナーはスペシャリティーカーであるM3と同じデザインであるスタイリングに特に思い入れがあるはずです。
もちろん維持が出来なくて、街乗りに向いているクーペを選んだ人もいますし、スポーティーでなくエレガントさに惹かれて、Mスポーツでない純正のスタイリングを選ぶ人も多くいます。
ですので、”特別なスタイリング”と言った観点から言えば、今も尚この335i クーペは特別な存在であると言えます。
BMW 335iの走行性能
335iの走行性能は3リッター直列6気筒のツインスクロールターボで、F30の新型M3に搭載される直列6気筒のツインスクロールターボに、とても似た仕様となっています。
新型M3/M4は335iの後期にも採用されているN55のエンジンをチューニングされたS55というエンジンで、ボアやストロークなど多岐に渡る改良は加えられていますが、エンジン特性からもE90 335iに似ているとも言えます。
ツインスクロールターボというのは、シーケンシャルツインターボなどとは異なり、一見シングルタービンに見えますが、中で分けられているためエンジンが低回転の時からトルクがしっかりと掛かるようになっています。
具体的には、最高出力225kW(306ps)/5800rpm、最大トルク400Nm(40.8kgm)/1200-5000rpmで、既存のシングルタービンでは実現できない、ごく低い回転数からパワーを得られます。
そのためフラットなエンジン特性となり、NAのような繋ぎ目のない滑らかな加速を体感できます。
ただし、NAのように回転数が上がるにつれての高揚感やパワーがどんどん溢れ出てくる、といった感覚は無く演出はありません。
なので、過去にそういったスポーツカーでNAのフィーリングを体験しているのであれば、335iは”速いけれど機械的な加速”なマシーンであるとも言えます。
回してパワーが出る、というエンジンでないのでスポーツ走行時の楽しみは少ないですが、1200回転から掛かるブーストは強烈で中低速コーナーなどでも真価を発揮します。
エンジンを回しきらなくても最大トルクに近いパワーが出るので、それをコーナリングに結びつける事ができます。
また、シャーシも非常に強靭であり、250キロオーバーのスピードレンジでもよれる事がありません、Mスポーツであれば専用にチューニングされたサスペンションも装着されているので、とても速いスポーツ走行を体験する事ができます。
若干オーバーステアですが、ピーキーではなく操作しやすいハンドリングです。
DTCでの走行性能の違い
この335iには、DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)というシステムが標準で装備されています。
例えば雪道で少しでも滑った場合、雨のコーナーで少しタイヤが滑った場合など、僅かな横滑りでもシステムが干渉してアクセルを自動でコントロール(アクセルのリリース)を行います。
これは安全に運転するには非常に便利なシステムで、日常の99%はこのモードで走行します。
ですが、サーキットの体験走行など安全に車を走らせれるシーンでは、このモードをOFFにする事を強くお勧めします。
スイッチを3秒間押すことによって、DTCをオフにすることができます。
これにより、アクセルがより機敏になり、横滑りでもシステムの干渉が一切無くなります。ドリフト走行なども可能になります。
タイトでアップダウンの激しいコーナーなど、ギャップで車体が浮く事がしばしありますが、こういった場合にもOFFにしておくことによって、リアが滑り出している一番美味しい状態を自由に操る事ができます。
BMW 335iクーペ走行性能のウィークポイント
後期のモデルではDCT(デュアルクラッチトランスミッション)といって、2系統のクラッチを持つシステムになっています。
先ほどのトラクションコントロールと煩わしくてすみません。そのDCT採用の後期モデルであれば、スムーズな変速が可能ですが、
前期モデルの335iはトルコンATでミッションの繋がりがスムーズではありません。
マニュアル車に慣れている人であれば、パワーの伝達に不満を持つと思います。
相対的に考えれば280km/hまで加速できる十分なパワーですが、このクラッチとATの点は留意する必要があります。
BMW 335iと320iの燃費の違い
320iのクーペは2リッター4気筒NAでとても遅いですが、燃費は素晴らしく16~20km/hを推移します。
とても経済的で巡航距離も長いです。国産のリッターカー並みの燃費を誇ります。
それでいて320iは時速240キロまで出せる能力があります。
335iは全てにおいて320iよりも走行性能が高いのですが、3リッター6気筒ターボという事もあり、燃費が悪くリッター9キロ~12キロ程度です。
一度高速道路で90キロ巡航をしたことがありますが、その時だけはリッター16kmをマークしました。
M3の燃費はリッター辺り5~6.5キロと聞くので、本当に覚悟が必要な車です。
BMW 335iの内装・デザイン
3シリーズクーペの内装デザインは、写真で見ると質素ですが、実際に使うと完成度の高さを実感します。
シボ加工の上に、コーティングのフィルムが施されているので触れるとなんとも言えない手触りで心地よく、
プラスティックのダイヤルやボタンなどの反応もクリック感があり良好です。
ハンドルも大きく太巻きな皮ステアリングは、まさにずっと触れていて心地よい操作性です。
BMW特製のウッドパネルですが、木目にも凝っていてバーズアイメープルの虎目など贅沢な高級木材の突木が美しくすっきりと間がとられていて車内が彩られます。
メーターや装備、アンビエントライト(ドアの内張りの横ラインや天井に、ぼんやりと赤いライトが設置されている)など一貫してアンバー色になっているので夜間にドライブするとなんとも心地よいです。
現行のメルセデスEクラスの内装を見るとデザイン性とウッドトリムのよる高級感がひしひしと伝わってきますが、そういった上位の車種と比べてしまうと3シリーズの高級感は乏しく思えてしまいますが、日常使いをしたり、国産の普通車やスポーツモデルから乗り換えるのであればお勧めできます。
BMW 335iの外観
3シリーズクーペはサイドパネルアウター部分のキャラクターラインがフロントフェンダーから
Cピラーへ弧を描くように伸びています。今でこそ国産車にも多く採用されている手法ですが、3クーペのスタイリングは
何故か気品が漂い、単色のアルピンホワイトで表現されるシャドウ&ハイライトはまるで芸術品と言っても過言でないです。
特に「線」を主体としたデザインが好みな自分には素晴らしく思えます。
線を主体としたデザインはドイツ車に多く見られ、AUDIのTTやA5など実車を間近でみると、その線の組み合わせに驚かされます。
それに比べるとイタリア車は丸を主体としたデザインが多く、フィアット、ABARTH、アルファロメオの多くの車種や、マセラティの
グラントゥーリズモ、クアトロポルテなど流線型が主体になっています。
3クーペは、長く低いノーズに厚みを抑えたリアラゲッジ部分、ミラーからリアバンパーまでもひとつひとつが抜かりなくデザインされています。
どの角度からトリミングしても凛としたスタイリングは惚れ惚れするばかりです。
一つ難点がありますが、新しい型式が出ると旧に古く見えてしまう点です。
近年のBMWは旧型からガラッとデザインを替えて、過去に押し出す方法を取るのでそう感じます。
中でも特に3シリーズセダンや5シリーズのセダンは台数が多いため、E90型などはデザインが優れていても「古いBMW」という印象を受けてしまいます。
クーペも4シリーズが発売されたので、335iも既に過去の古いデザインとなってしまいましたが、田舎に住んでいてクーペが殆ど居ないのでいくらか良いです。
その点はさっき少し話に出したイタリア車は、フルモデルチェンジした後でも以前の型式が古く見えにくいです。
アルファなどは一般の人が見たら、何年前にリリースしたか全然判断が付きませんし、マセラティも3200GTやクーペなど今見ても美しくて惚れ惚れする古くならないデザインです。
BMWは335i、M3、435iではどれが良い?
M3
BMW Mの中でも中核をなすM3。走行性能は素晴らしく官能的なフィーリングを持ちます。
ただ、日常使いには多少不便な点もあり、特に日常では低回転~中回転域を多用するため。
また維持費が自動車税が51,000円から66,500円メンテナンス費用(整備)と部品代、オイル交換代、交換頻度など大幅に高くなるとディーラーで説明されました。
ただ、M3はサーキット向けなのでLSDが標準装備のためタイムや運動性能は335iより断然上と言えます。
435i
2013年の秋に発表されたBMW4シリーズ。435iは0-100mが5.1秒!と335iよりコンマ数秒速いです。
せっかくなのでニューモデルを、とディーラーで見積もりをしてみたのですが、サンルーフ+Mスポーツ+諸経費を入れると850万円以上
現行型の6シリーズ(中古車・24ヶ月ディーラー保証付き)が買えてしまうほど高級です…。
経済的に余裕のある人は4シリーズも良いと思います。新車の6シリーズが1000万円を切っている事を考えると、435iを買うというのはある意味、本当に贅沢かもしれません。
428iは4発のエンジンですのでせっかくBMWを買うのであれば6発の方がお勧めです。
Mスポーツか、そうでないか
ノーマルの3シリーズは乗る前にはサスペンションが柔らかくロールすると思っていたのですが、思いの外にしっかりとしていて、多少攻め込んだ位では全くの無問題です。
そして標準のファブリックシートですが、これもまた快適で手触りも良く、車内のお昼寝も心地よく出来ます。
ドライブ中にカフェラテなどこぼしたときは早めに拭かないとシミができちゃうのでウェットティッシュなど常備しておくとよいです。
エアロのデザインですが、やっぱりMスポーツの方がカッコいいと思います。後期のモデルでしたらノーマルでも上品なデザインで良いです。
基本的な設計や性能はMスポーツに関係ないので、ノーマル仕様のクーペが安い価格で中古で出ていたら割りきって選択すればかなりお勧めです!特にディーラーのノーマル仕様はお買い得なので、保証付きの物を買えば、国産車並みの維持費でBMWを楽しむこともできます。
シートヒーターは1分程で暖かくなるので、寒い地域に住んでいる人は活躍すると思います。
他にもエンジンが切れてても、予熱で車内を暖めれるヒート機能など冬場は有効です。
Hi-Fiオーディオ
10万円のオプションで付けれるオーディオですが、物凄く音がいいです!
320iのノーマルオーディオでも低音がくっきりしてバランスの取れた素晴らしいサウンドでしたが、Hi-fiオーディオは格別に良いです。
デモカーのイベントなどで100万円以上の機材が積まれた車種の視聴などしましたが、それよりも尚良いです。
B&WのCM1とPM1の間位の音質の良さです。今後BMWを購入予定で、音楽が好きなのであればHi-fiかハーマンのオーディオをオプションで付けることを強くおすすめします。
ノーマルのオーディオはスピーカーが一体型で、高音域が僅かに曇って聞こえますが、Hi-Fiオーディオはトゥイーターと別体になって高温も自然に離れて聞こえます。
それでいて高音域が耳に突き刺さるような音でなく、あくまでアコースティックな楽器のように自然な優しい高音です。
カー用品店であるような、ドンシャリのスピーカーはキンキン、シャリシャリして疲れる音ですが、BMWが3シリーズクーペの為だけにセッティングしたオプションのオーディオはまるで別次元です。
音量を上げていくと、小さく感じていた低音が立ち上がってきて、ドラムの輪郭がきっちりと再現されます。
特性はナローではなく完全にハイファイ寄りで解像能力も高く、音がきっちりと別れます。
スピーカー数が多く、小さな車内で聞いているので残響や内部損失が低く、音がごっちゃ混ぜになりやすい環境にも関わらず、小さなライブホール+良いPAセッティングで聞いてるような素晴らしい音質です。
335iクーペのあるライフスタイル
車をスポーツ走行だけでなく日常で使いたい人にとてもお勧めです。
日常使いでもお洒落なライフスタイルと快適さ、それに加えてロングドライブやスポーツ走行など本当にバランスが取れた素晴らしい車です。
一度所有してしまうと、その快適さに国産メーカーには戻れないかもしれません。
少し買い物に行くときも感動を覚える様なスタイリングと走行性能。遊びでも仕事でもきっと活躍するはずです。
そんなBMWのあるライフスタイルを是非とも体験してみて下さい。