丘の上の首都『ルクセンブルク』の夜明けを歩く

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ルクセンブルクへの道のり

アルザス建築と運河の町並みで世界を魅了するフランスのストラスブールから電車で6時間。圧倒的な大聖堂で有名な、ドイツのケルンから電車で6時間。

どちらを選ぶかということで、ドイツのケルンから電車に乗ると、それはもうひたすらな田舎風景が続きます。車窓から見える景色は荒野と、小さな村。一つの村に必ずと言っていいほど一つ、教会があります。

その村と村の間を埋めるのがブドウ畑。

この辺りはラインヘッセン地方と呼ばれる地域で、リースリングと呼ばれる白ワイン用ブドウの一大産地です。

もちろんラインヘッセンで作られたアイスワインを片手に旅するのも優雅ですが、全粒粉の塩パンとドイツビールで時を過ごすのも悪くはないでしょう。

それからのあらすじと言えば、それはもうヨーロッパの鉄道旅行のお決まり。周りの景色もずいぶん暗くなって、ちょっと不安になってきた頃にさっと目的地にたどり着く。

大事なのは不安になって途中下車しないことなんです、目的地にたどり着きたいなら。

そして無事たどり着きました。常に人で賑わうヨーロッパの中央、ひっそりと奥まったところに小国ルクセンブルクがあります。

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夜が明ける前に部屋を出て

ヨーロッパの旅行で夜に新しい街に着いたのなら、寝ることです。

それはどうしてかって、明るくないと景色が見えないからです。景色が見えないと、来た道は覚えられません。

そういうわけもあってルクセンブルクを歩くには、夜明け前こそが魅力的。

観光客が出歩かないこのひっそりとした時間帯は、まるで作り物の街の中にいるかのような静寂に包まれています。

さあ朝目を覚ましたら、太陽が昇りきってしまわないうちに部屋を出ましょう。

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昇りつつある太陽の光と、夜の雰囲気の残る町並みが絶妙な色合いを作っていますね。

ルクセンブルクは1国の首都でありながら、小高い丘の上に作られた要塞都市でもあります。城を主体として築き上げられた典型的な街ですが、築き上げられた場所は典型的ではなかった。

岩肌の上は標高300メートル以上で、そこに登っていく大きな橋はまるで空中都市へ続いているかのようです。

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これはルクセンブルクの中では最も有名な景色の一つで、グルント地区と呼ばれるところですね。

実は宿から街へとのぼっていく橋の途中で見られる景色でした。ところどころで煙突から煙が上がっています。

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この日は特に空が美しく、感動的な朝焼けの予感がしてきます。

丘の上の都市は複雑な立体をしているので、太陽の光がシルエットを浮かび上がらせたときには不思議な景色になります。

橋が空中数十メートルのところに自分が立ち、数十メートル下に街と川を見ながら、さらに上の街を目指して歩く。こんな体験はルクセンブルク以外ではなかなかできるものではありません。

下に見えるのがアルゼット川、先ほどから見える大きな建物はサン・ジャン教会です。

14世紀にドイツ皇帝の座にあったルクセンブルク公爵アンリ7世によって建てられた教会で、17世紀に戦火に遭い消失しましたが、再建され今は教会とは別の用途で使われています。

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朝の散歩は行き先を決めずに

そろそろ街の中まで歩いていきましょう。

坂はずいぶん長いですが、そんなことも忘れてしまうような絶景です。下ばかりを見ていてはいけませんね。そろそろ街に入っていきましょう。

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こちらでも煙突から煙が上がっています。太陽の光と空の色が混じって、いささか煙とは思えないような美しさです。

さらに歩きます。

朝の散歩の良いところは何かって、それはもうどこに行くか決めなくても良いこと、それに尽きるでしょう。

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あちらこちらの標識を見ながら、お洒落だなと思う。でも意味しているものは何も分からない。

そのくらいの方が散歩にはちょうど良いのかもしれません。

まだほとんど人は歩いていませんね。

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昔からの石畳とスチールの街灯が美しく、いかにもヨーロッパらしい景色を作っています。

ルクセンブルクはベネルクスとしてベルギーやオランダと比べられる国ですが、景色に関して言えばドイツに近いものを感じます。ドイツとフランスの国境付近、フライブルク・イム・ブライスガウで路地に迷い込むと、ちょうどこんな風景が見られます。

チェコ・プラハは「百塔の街」と呼ばれますが、ルクセンブルクも塔が多い。しかもプラハと建物も少し似ているところがあります。

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そんなこんな歩き回っているうちに、1時間近く経ちました。

朝の散歩もほどほどに、宿の朝食の時間に合わせて戻りたいところです。来た道全てを覚えているわけではありませんが、それでも何となく方角で戻れてしまうものです。

先ほどの場所、グルント地区に戻ったころにはきっちり朝焼けになっていました。

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街灯も消えて、いよいよ夜の面影は無くなり朝が近づいています。

皆さんもうすぐ目覚めることではないでしょうか。

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ルクセンブルクの朝焼けはずいぶんドラマチックです。これもやっぱり、大きな教会や岩肌の丘が作り出す立体感があるからこそだと思います。

標高300メートル以上、ルクセンブルクの丘の上に住んでいる人は、皆よりも少しだけ早く夜明けを見ています。もちろん彼らはそれよりもさらに早く、太陽を見ているでしょう。

どこからか集まり、朝を待つように一列に並び始めました。

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これで、ルクセンブルクの朝の旅は終わりです。

さりげなく宿に戻り、何事もなかったかのようにベッドに横になって朝食の時間を待ちます。部屋にティーセットがあれば、ちょっと早い紅茶にしても良いでしょう。

紅茶を入れたならば、窓からの景色を眺めましょう。

だんだんと車の通りも賑やかになり、現地の人はもちろん、観光客も多く出歩く時間が近づいてきます。

でもまだ、ビレロイ&ボッホのカップをゆっくりと傾けるくらいの時間はあります。

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幻想的な物語のような町並みがやがて、誰もが知る観光名所ルクセンブルクへと色をかえるまでの、もう少しの間です。

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