「能登半島を復興させてはいけない」は暴論なのか

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「能登半島を復興させてはいけない」という衝撃的な主張を目にしたとき、被災者に対してどうしてこんなにも酷いことを言えるのだろうと、まず疑問に感じました。特に、能登半島が故郷である人々にとって、復興を否定されるような発言は、信じがたい暴言のように聞こえるかもしれません。

しかし、その主張をさらに読み進めると、根拠がまったくない誹謗中傷だと断じるのも難しい局面が見えてきます。それは、現在の能登半島が直面している過疎化と高齢化という現実が背景にあるからです。

カバー写真:https://maps.app.goo.gl/XN1dKaRSTGWQQaP88

能登半島の過疎化と人口減少

能登半島、特に奥能登地域では、過疎化と高齢化が進行しています。珠洲市では65歳以上の住民が全人口の51.7%を占め、輪島市でも46.3%に達しています。これらの数値は全国平均を大きく上回っており、地方の人口減少問題を象徴しています 。また、若年層の人口流出も深刻で、地元に残る若者は少なく、地域の経済活動は縮小し続けています。

奥能登管内の状況 – 石川県
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/okunoto/kannai.html

2024年の能登半島地震が与えたさらなる打撃

2024年初頭に発生した能登半島地震が、さらに地域の存続を脅かしています。輪島市や珠洲市では、多くの住宅が損壊し、住民の避難や移住が相次いでいます。地震後、転出者の数は前年同期比で大幅に増加し、特に若年層の離脱が顕著です。これにより、地域の人口減少は加速し、復興の基盤となる人手が不足しているのが現状です。

住宅耐震化促進事業では、市町村の負担は45万円、県の負担は45万円、残りの60万円は国が負担しています。

財政的な現実

また、これらの地域の自治体は財政的にも非常に脆弱です。輪島市の財政力指数は0.24、珠洲市は0.22と低く、地方交付金に大きく依存している状況です。能登半島の復興には莫大な資金が必要ですが、そのコストをどこまで正当化できるかが問題となります。復興に対する国の資金投入は重要ですが、持続可能な形での復興ができるかどうかには疑問が残ります 。

輪島市 令和2年度 財政状況資料集
https://www.city.wajima.ishikawa.jp/docs/2019120900013/file_contents/_172049__2020.pdf

復興への議論とリソースの最適化

このような状況を鑑みると、能登半島を従来の形で完全に復興させることが現実的であるかどうか、議論の余地があります。20年後、能登半島の多くの地域が消滅する可能性が高いとされています。日本全体が抱える人口減少と財政の制約を考慮すると、限られたリソースをどの地域に投入すべきかを慎重に判断する必要があります。

「縮小ニッポン」で繰り返される悲劇、過疎地域を直撃した能登半島地震の教訓 JBpress

新たな地域再生の可能性

とはいえ、能登半島のすべてが失われるわけではありません。地域の観光資源や文化を活かした新たな取り組みが可能です。観光業の振興や他地域との連携により、能登半島が持つ自然や伝統を基盤とした持続可能な再生が期待されます。例えば、豊かな自然や文化遺産を活用した観光促進や、地域コミュニティの再生が実現可能です。

総務省の発表によると、2019年4月時点で日本には2万372の限界集落が存在し、これは過疎地域にある6万3237集落の32.2%を占めています。この割合は、2015年の前回調査から約1割増加しており、限界集落は今後も増加することが予想されています。限界集落とは、住民の半数以上が65歳以上の高齢者で占められている集落で、地域社会の持続可能性が著しく低下しています。この現象は能登半島に限らず、どの都道府県でも同様の状況が見られる可能性があり、日本全体が抱える課題です。

能登半島の過疎化や高齢化は、単に地方の問題にとどまらず、日本全国で進行している大きな社会問題の一環です。したがって、能登半島での地域再生の取り組みは、他の地域でも応用可能なモデルとなる可能性があります。限界集落問題に直面している地域は、観光業や地域資源を活用することで、新しい発展の道を模索しています。これにより、能登半島のみならず、日本全体で持続可能な地域づくりが推進されるべき時代に突入しています。

「能登半島を復興させてはいけない」という主張は、一見過激で残酷に感じられるかもしれませんが、そのすべてが間違っているわけではなく、冷静な議論が必要です。日本には無限の財源があるわけではなく、中東諸国のように地面から原油が湧き出るわけでもありません。税収の大半は、日本人が汗水を流して働いて得たものです。財政的な制約の中で、どこに資源を投じるべきか、今こそ真剣に考えるべき時期に来ています。

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