ネットで話題になっている「子供部屋おじさん」という言葉を見かけたとき、最初は「大人になってもTVゲームに囲まれている部屋」を想像しました。しかし、実際には「子供の頃から同じ部屋に住んでいる中高年男性」という意味で、やや軽蔑的に使われる表現だと知りました。
実際に「子供部屋おじさん」や「子供部屋おばさん」と呼ばれる人々は存在し、私自身もそのような人たちに会ったことがあります。例えば、ある28歳の女性は、実家から一度も出たことがなく、小学生の頃から同じ部屋に住んでいると言います。家事や食事も全て親に任せており、買い物に行く際に少し手伝う程度とのこと。これではまるで「大きな小学生」のようです。では、なぜこのような生活が問題なのか、「子供部屋おじさん」について考察してみます。
行政手続きや契約などができない
一人暮らしを始めると、住民票の移動や保険の手続き、不動産契約など、さまざまな事務手続きを自分で行う必要が出てきます。例えば、賃貸物件を借りるためには、不動産屋に行って契約書を確認し、捺印したり、火災保険に加入したりします。また、源泉徴収票や所得証明書を提出する機会も増えるでしょう。
しかし、「子供部屋おじさん・おばさん」は、子供の頃から実家に住み続けているため、こうした手続きを経験することなく30代〜40代を迎えることが多いのです。もちろん、すべての人が契約書を読んだり、登記簿謄本を取得したり、eTaxやeLTAXを使いこなす必要はありません。
しかし、少なくとも成人したら、自分の住民票を移動したり、銀行口座を開設したりといった最低限の手続きは、自分でできるようにしておくべきです。それができないと、大人としての自立が大きく遅れてしまうでしょう。
一人暮らしの経験が成長につながる
大学生の時点で一人暮らしを始める人も多いです。一人暮らしをすると、家賃や食費、水道光熱費などの生活費をやりくりしなければなりません。ズボラな男子大学生でも、「今月はやばい!」とか「電気代を減らさなきゃ」といった現実的な問題に直面し、計画的にお金を使うようになります。
人によってお金の管理能力は異なりますが、一人暮らしをすることで、最低限の生活能力を身につけることができます。もし家賃や水道光熱費を滞納せずに生活できているのであれば、それはすでに一つの自立の証です。
一方で、「子供部屋おじさん」のように実家に住み続けている場合、生活費のやりくりや家事に対して経験が乏しくなります。家賃や水道光熱費、食費、さらには住民税や健康保険料、固定資産税といった経済的な現実に直面せずにいると、30代〜40代で一人暮らしを始めたとしても、適応に苦労するかもしれません。
恋人を作り、結婚することが難しい
20代後半に恋人を作る際、実家暮らしはウィークポイントになることがあります。恋人を自宅に招くことが難しく、「家に泊まっていく?」と言いづらい状況になります。両親や兄弟が家にいると、落ち着いて過ごすこともできません。たとえ親が好意的に接してくれたとしても、恋人にとっては居心地が悪く、関係に亀裂が生じる可能性があります。
最近ではマッチングアプリや結婚相談所を利用する人も増えてきていますが、条件として実家暮らしの人はどんなに良くても除外するという人も多く存在するようです。中には、結婚相手を義理母の介護要員として見ているのではないかというネガティブな発言をする女性もいます。
仮に結婚まで至ったとしても、実家暮らししか経験していない人は、結婚後の共同生活に困難を感じることがあるかもしれません。一人暮らしを経験していれば、家事や炊事を自分でこなすスキルが自然と身についているものですが、実家暮らしから直接結婚生活に入ると、相手に頼りがちになってしまうでしょう。
また、相手に実家での同居をお願いするという選択肢もありますが、現代ではそのケースが少ないため、相手にとっては大きな負担となる可能性があります。
子供部屋から巣立つのは25歳が目安!
ツバメは、孵化してからわずか20日前後で巣立ち、その後は一人で餌を取るようになります。一方で、人間は30日で自立することはできませんが、25歳(約9,125日)を目安に一人暮らしを目指すべきです。20代後半に差し掛かると、人によっては結婚や出産、住宅ローンの検討、子供の幼稚園の入園手続きなどを始めることがあります。一方で、まだ実家に住み、幼少期と変わらぬ生活を続けている人もいます。
「30歳でもまだ大丈夫」「40歳でも実家暮らしの人はいる」と思っていると、後々大きな問題に直面することになるかもしれません。
実家暮らしも一概に悪いわけではない
もちろん、計画的に貯金をして目標を持っている場合、実家暮らしが有利になることもあります。
例えば、社会人として月収30万円を得ているとしましょう。一人暮らしの場合、家賃や生活費で貯金ができないかもしれませんが、実家暮らしならその分を貯金に回すことができます。特に、大学や職場が実家から近い場合、無理をして一人暮らしをする必要はありません。
ただし、最低限の行政手続きや契約などは、自分でできるようになっておくべきです。
せめて小学生の学習机は処分しよう!
実家の自室が小学生の頃のままでも、年に数回しか帰らないなら問題ありません。しかし、そこで生活しているなら、昔のものを整理し、大人としての生活空間を作ることが大切です。例えば、小学生の頃に使っていた学習机や、ポケモンシールが貼られた家具は、早急に処分した方が良いでしょう。30代後半の大人が、小学生時代のトートバッグや家具を使い続けているのは、あまりにも不自然です。
アップライトピアノのように、将来的にも使うことを前提に購入したものは別として、幼少期の家具や道具は断捨離するのが賢明です。捨てるのが惜しい場合は、思い出の品としてダンボールに収納し、押し入れにしまっておくと良いでしょう。
いつかは大人になる
「子供部屋おじさん・おばさん」という言葉は、実家に住み続けている大人に対する批判的な表現ですが、必ずしも実家暮らしそのものが悪いわけではありません。大切なのは、年齢にふさわしい自立心を持ち、必要なスキルや経験を積むことです。
一人暮らしをすることで、生活費のやりくりや行政手続きなど、社会人としての基礎的な能力を身につけることができます。実家暮らしであっても、計画的な貯金や具体的な目標があれば大いに価値があります。
しかし、いつかは自分の力で生活するための準備をしておくことが大切です。大人として成長するために、過去のものを整理し、新しいステージに向けた心構えを持つことが重要です。