本が好きな人「夢の本棚」はなぜ炎上したのか

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「建築知識10月号」という本がSNSで大炎上しています。
個人のアカウントではなく、株式会社エクスナレッジという出版社が発行しているもので、こうした専門書のアカウントが炎上するのは珍しいです。

なぜ本棚が炎上したのか?

画像の左上には「安全に、豊かに過ごす本との時間。」とキャプションが付いていますが、建築の素人である私から見ても、非常に不安定な足場をスリッパで、つま先だけで支えているように見えます。

「新吉田の家」設計:藤井伸介建築設計室、写真:津久井輝明
新聞記者の夫と書店勤務の妻、そして本好きの子どもが暮らす住宅。蔵書数が多く、リビング・ダイニングに壁一面の本棚をつくることになった。ただし普通の
本棚ではない。地震がきても本が落下しにくく、高い棚にも梯子を使わず本棚自体に登ってアクセスできる、傾斜した本棚だ。
出典元:https://x.com/xk_kenchi/status/1838787223157903413/photo/1

最近、国民生活センターから、脚立や梯子の使用中に転落する事故が多発しており、死亡事故や重傷を負った事例が増えているとの注意喚起がありました。

数段の脚立でも致命的な事故になる

例えば、山本健一さんのツイートには15,000以上の「いいね」が付き、彼は医師として救急外来で脚立やはしごの事故による緊急手術が多いと警告しています。

本棚の右側の260mm部分を計算すると、全体で3500mm、つまり3.5mになります。とても危険で、上の本を取る際は業者に依頼したくなるレベルです。素足ならまだしも、写真では靴下にスリッパを履いているため、さらに滑りやすく危険な状況に見えます。

本が落下してくる危険もある

例えば、200gの本が1mの高さから落下する際の位置エネルギーは約1.96ジュール、3.5mの高さから落下する際のエネルギーは約6.87ジュールです。エネルギーの差は約4.91ジュールで、約3.5倍の力が加わります。

図鑑など1kg程度の本が1mから落下する場合の位置エネルギーは約9.81ジュールで、3.5mから落下すると34.34ジュールにもなります。エネルギーの差は約24.53ジュールとなり、打撲や骨折のリスクが大幅に増します。特に、足の指や骨の弱い部分に当たれば、骨折する可能性も十分に考えられます。

設計上問題なくとも、運用上で本を取り出そうとしたときに手が滑って、下にいる家族に直撃するといった人為的ミスは考えられます。

また直下型地震が発生し、多くの本が一気に落下した場合、この本棚の下で過ごすのは非常に危険です。斜めに設置されているため危険性が低いとされているものの、ロック式の戸棚がないため、何かの衝撃で本が飛び出す可能性は否めません。全体として非常に危険な本棚だと言えます。

日差しで本が劣化する

私の知り合いにも本が大好きな人がいるのですが、そうした方々は例外なく遮光カーテンを使い、大変暗い中で本を保管しています。ネットで調べてみると、地下室に本棚を設置している人もいるようです。

こういった人たちは、単なる蛍光灯の設置ですら嫌がります。彼らは紫外線を発しない特殊な蛍光灯を使ったり、LEDに切り替えたりして、少しの光でも本が劣化しないように細心の注意を払っています。また、愛好家の中には、一冊ずつグラシン紙やブックカバーフィルムで覆って保管する人も多いです。

そのため、外の日差しが直接本棚に当たるような設計は、こうした人たちには最も嫌われます。例えば、数々の建築賞を受賞した『茅野市民館図書室』は、図書館全体がガラス張りの設計になっていて、光が大量に入るため、背表紙が焼けて青くなってしまっている本が多いそうです。

映画やアニメのシーンであれば、それはそれでおしゃれに見えるかもしれませんが、実際の市民図書館として運用するにはお粗末と言わざるを得ません。

また、傾斜のある棚は埃がたまりやすく、掃除が難しいという声もありました。家の設計自体は素敵ですが、ここまで高い棚だと、上の段には落ちてきても安全なぬいぐるみや布製品など、軽量なものに絞った方が良いでしょう。

デザイン性と安全性の両立が課題に

総じて、このような本棚はデザイン性や機能性が一見魅力的に見える一方で、安全性や実用性に大きな課題を抱えています。特に、日差しによる本の劣化や、地震や落下のリスクを考えると、長期的に本を大切に保管するためには慎重な設計が必要です。また、傾斜のある棚や高所に本を置く際の安全対策にも細心の注意を払うべきでしょう。美しさと実用性を両立させるためには、デザインだけでなく、実際の使用シーンを十分に考慮した設計が求められます。​

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