面白そうな記事のタイトルを見て、読んでみたのですが、スイスから旅行に来た二人組が3週間かけて日本の地方都市を巡り、感動したという話でした。
「本当に損している。どうして行かないんでしょう」 初訪日のスイス人がほかの外国人観光客に疑問を抱いた理由とは
東京だけでなく、青森や宮城、石川、長野など日本の地方都市を巡るのは素晴らしいといった話です。「地方都市を巡ってよかった」という話はなかなか美談だなと思うのですが、 逆に日本人はスイスを3週間巡るのは極めて難しいなと思ってしまいました。
物価が高く多くの日本人は観光が難しい
私は昨年、イタリアとフランスを旅行しましたが、その際、物価高と極度の円安によって、旅費はこれまでで最も高額となりました。
ちょうど11月に旅行したため、ユーロは1ユーロ165円程度で請求されました。現在は急激に円高が進み、少し下がったものの、それでも1ユーロ160円程度です。今年の夏には、175円と過去30年で最も高い水準にまで上がりました。
この影響で、水を1本買うだけでも、少し前と比べて1.5倍以上の価格差が生じ、ルーブル美術館などでは単なる水が600円以上で販売されています。簡単な食事でも2,000〜3,000円以上かかるので、日本よりも負担が大きいと感じました。
スイスは、そうしたフランスよりもさらに高額な旅費がかかります。
2012年頃までは、1スイスフランが80円で両替できましたが、その後、徐々にスイスフランは値上がりし、コロナ前には110円程度まで上昇しました。そこからさらにじわじわと上昇し、今年の夏には179.72円と、過去20年で最も高い水準に達しています。
いくら出せばスイス旅行ができるのか
では、実際に夫婦2人で3週間スイス旅行をする場合、どれくらいの予算が必要か見てみましょう。
宿泊費
スイスは宿泊費が特に高く、平均的な中級ホテルでも1泊あたり約CHF 305(日本円で約53,375円)かかります。3週間滞在するとして21泊することになりますので、合計で 1,120,875円 となります。
食費
外食をメインにする場合、1日あたり夫婦2人でCHF 114(約19,950円)ほどかかると見積もれます。これを21日分計算すると、食費は 418,950円 となります。
参考:https://help.myswitzerland.com/hc/en-us/articles/213130669-How-much-do-lunch-and-dinner
この料金には、ワインやビールなどお酒の値段は含まれていませんし、サービス料も追加されていません。
交通費
スイスでは鉄道やバスなどの公共交通機関が発達しており、スイスパスという便利なパスがあります。3週間滞在するなら、1週間あたりCHF 400(約70,000円)の2等車パスを利用するとして、3週間で210,000円 ほどかかる計算です。
観光・アクティビティ
観光地や博物館などの入場料、ケーブルカーや展望台の利用料などもかかります。1日あたりCHF 102(約17,850円)を目安にすると、21日間で 374,850円 ほどになります。
航空券
日本からスイスへの往復航空券は1人あたり約200,000円が相場ですので、夫婦2人で 434,900円 ほどかかります。
スイス旅行の合計費用
これらの費用を合計すると、次のような結果になります。
•宿泊費: 1,120,875円
•食費: 418,950円
•交通費: 210,000円
•観光・アクティビティ: 374,850円
•航空券: 434,900円
最終的に、3週間のスイス旅行は 約2,559,575円 という高額な旅費になります。
これが最高級な旅行かというとそうではなく、平均的なホテルとエコノミークラス、またちょっとした平均的なレストランに行った場合の計算です。
上記の費用には、レストランのチップやタクシー料金や海外旅行保険、またお土産は含まれていないので、 クレジットの利用手数料なども換算すると、合計で300万円程度までいくのではないでしょうか。これだけのお金を出しても乗れる飛行機はエコノミーで、移動する電車も二等車となります。
休みが取れても観光は難しい
これを考えると、日本人がスイスで3週間の長期旅行をするのは、現状では極めて難しいと言わざるを得ません。物価が高騰している上に円安が続いているため、宿泊費や食費、さらには交通費までもが日本と比べて大幅に高く、相当な予算が必要です。
しかし、逆に言えば、スイスから日本を訪れる外国人観光客にとっては、日本の物価が比較的安く、特に地方都市を巡ることが「お得」と感じる要因かもしれません。