キャビアとシャンパンの相性は本当に良いのか?

ワイン

映画やドラマで描かれる貴族たちは、ディナータイムにシャンパンとキャビアを合わせて楽しんでいるイメージが強いですよね。しかし、私たち一般人がキャビアを食べる機会は、そう頻繁に訪れるものではありません。結婚式で出てくる料理にほんの数粒乗っているのを味見する程度、という方も多いのではないでしょうか。

料理好きであれば、一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、国内最高峰とされるフランス料理店「ジョエル・ロブション」では、現代フランス料理を代表する一品として「キャビア・アンペリアル」が提供されています。粒々が美しく盛られたお皿のビジュアルは、インスタグラムなどで目にしたことがあると思います。集合体恐怖症の方には少し怖いですね。

私自身、キャビアを頻繁に食べているわけではありませんし、シャンパンもたまにプレステージキュヴェをたまに楽しむ程度です。
ですので、マニアの方にはやや情報が物足りないかもしれませんが、キャビアとシャンパンの相性について私なりに考えてみたいと思います。

地方に住んでいるとキャビアが食べられない?

まず、キャビアを楽しむ機会は、住んでいる地域によって大きく左右されます。東京都内やその近郊に住んでいる人であれば、キャビアに触れる機会は比較的多いです。

たとえば、銀座の東急プラザにはキャビアハウス「プルニエ」があり、同じ系列店が新宿伊勢丹の地下にも入っています。スプーン一杯分のキャビアとシャンパンを3,000円から4,000円程度で体験でき、高級フランス料理店に比べると、比較的手軽に楽しむことができます。

また、ワインバーやカジュアルなフレンチレストランでもキャビアを提供していることがあり、意外と食べる機会が多いかもしれません。

一方、私は静岡市出身ですが、地方に住んでいるとキャビアに出会うのは非常に難しいです。一年間さまざまなレストランを訪れても、キャビアを扱っているお店はほとんどありません。輸入食材店に行っても、置いてあるのはキャビアに似た「ランプフィッシュ」という模造品がほとんどで、真のキャビアに巡り会うことはなかなかありません。

キャビアは偽物が多い?

Amazonや楽天などのオンラインストアで購入すれば良いかというと、必ずしもそうとは言い切れません。

偽物ではないものの、例えばイタリア産のパストライズキャビアは低温殺菌されており、1年以上の保存が可能です。しかし、その加工過程によって風味や食感が損なわれることが多く、フレッシュなキャビアと比べると味わいに大きな違いが出てしまうのが実情です。

さらに「キャビア」と名のつく商品には、ランプフィッシュの卵や、ロシアのベルーガキャビアとはまったく異なる味わいのものも多く存在します。これらは一般的に安価で手に入りやすいですが、本物のキャビアが持つ深いコクや独特の風味を期待していると、がっかりすることもあります。

キャビアの主要な産地と種類について

キャビアと一口に言っても、その産地や魚の種類によって味や食感が大きく異なります。主にチョウザメの卵を使用するキャビアですが、産地によってその風味や質が異なります。
ここでは、代表的な産地とキャビアの種類についてご紹介します。

ロシア産キャビア

ロシアは、キャビアの世界的な産地として有名です。
特にカスピ海や黒海沿岸のチョウザメから採れるキャビアは、最高級品として知られています。ロシア産のキャビアには、以下の3つの代表的な種類があります。

ベルーガキャビア:最も高級で希少なキャビアとして知られるベルーガキャビアは、大粒でクリーミーな口当たりが特徴です。強い塩気と深いコクがあり、贅沢な風味が楽しめます。

オシェトラキャビア:中粒でナッツのような香ばしさと、上品な塩味が特徴のオシェトラキャビアは、世界中の美食家に愛されています。しっかりした歯ごたえとまろやかな味わいが魅力です。

セヴルーガキャビア:粒が小さめで繊細な味わいのセヴルーガキャビアは、比較的リーズナブルに楽しめる種類です。軽い塩味と滑らかな食感が特徴で、初心者にもおすすめです。

イラン産キャビア

イランも、カスピ海沿岸で採れる高品質なキャビアで知られています。
特に、イラン産のベルーガやオシェトラは、独自の熟成技術によって独特の風味を持ち、世界中の高級レストランで使用されています。イラン産キャビアは、口に入れた瞬間にとろけるような滑らかさがあり、塩味が絶妙に抑えられているため、シャンパンやウォッカとの相性が抜群です。

ヨーロッパ産キャビア

ヨーロッパでもキャビア生産が行われており、特にイタリアやフランスが有名です。
これらの国では、持続可能な養殖が進められており、品質も非常に高いです。
特にイタリアでは、パストライズキャビアが手軽に楽しめるものとして人気があります。フランス産キャビアは、繊細な塩加減と鮮やかな色が特徴で、洗練された味わいを求める人々に支持されています。

中国産キャビア

近年では、中国もキャビアの主要生産国として注目を集めています。
特に、楊子江チョウザメから採れるキャビアは、ヨーロッパやアメリカでも高評価を受けています。中国産キャビアは比較的リーズナブルでありながら、質が良く、輸出市場でも広く流通しています。エントリーレベルでキャビアを楽しみたい方にとって、手軽な選択肢となっています。

日本のキャビアが最も美味しい?

私がこれまでに食べたキャビアの中で最も美味しかったのは、浜松で採れた「ハルキャビア」です。

これは浜松市天竜区春野町で養殖されているもので、塩漬けされていない採れたての状態で提供されました。ワインバーに珍しく入荷しており、味見をさせてもらったところ、信じられないほど芳醇な香りで、嫌な塩辛さが全くなく、従来のキャビアとは別物のような美味しさに驚かされました。

世界的にはロシア産のベルーガキャビアが最高峰とされていますが、私個人の意見では、日本のキャビアがこれまでで最も美味しいと感じました。もちろん、人によって感想は異なるかもしれませんが、私なりの仮説があります。

静岡市内某所

その理由の一つは、養殖から実際に食べるまでの時間が極めて短いため、驚くほど新鮮な状態で食べられることです。もう一つは、日本人として日常的に生魚やイクラといった魚卵を頻繁に食べている点です。日本人の魚に対する執着は非常に強く、真鯛のような白身魚でも産地や天然・養殖の違いによる味の違いを厳密に見分けます。また、冷凍されたものよりも、生の採れたてのものを好む傾向も強いです。

そのため、世界基準ではロシア産などが高評価を受けているかもしれませんが、私や多くの日本人にとっては、日本産のキャビアが最も美味しいと感じるのではないでしょうか。

また、もう一つ肝心なことを忘れていました。食べるときのスプーンは「キャビアスプーン」と言って、白蝶貝を削り出したスプーンが一般的です。これには温度と素材が関係しています。
変質の低いステンレスにキャビアを乗せると、臭みが増幅してしまうこともありますし、そもそも舌触りが悪いです。その点では、白蝶貝は、舌触りも大変滑らかで、温度の変化も少ないので、口当たりも良いですし、木製のスプーンなどと比べても薄いので、違和感を覚えることがありません。

巷では純金製のスプーンを用いることもあるようですが、 バーティーシーンであれば華やかですが、 個人的には貝のスプーンの方が美味しく食べれると思います。

キャビアとシャンパンの相性は本当に良いのか?

キャビアとシャンパンの相性は、基本的に良いと思います。特に、塩味が強く生臭さが少し残っているキャビアは、ブラン・ド・ノワールのコクのあるシャンパンとよく合います。

一方で、国産の臭みが全くないキャビアや、ロシアやイランの高級キャビアであれば、ブラン・ド・ブランのシャンパンが最適だと思います。特に、バックヴィンテージではない、現行ヴィンテージであまり熟成が進んでいないシャンパンが相性が良いのではないでしょうか。

キャビアとシャンパンを楽しむタイミングについても重要です。麻布台ヒルズには「プルニエ アール デュ キャビア フランセ 麻布台ヒルズ」がオープンしましたが、短時間の滞在で背の高い椅子に座ってテイスティングを楽しむスタイルが取られています。

この形式は非常に理にかなっていると思います。ディナー前の機運を高めるために、シャンパンとキャビアで気分を盛り上げるのが良いでしょう。長居せず、アペリティフとして短時間の雑談を楽しむスタイルで、15分から30分程度の滞在が理想的です。

逆に、時間をかけて前菜が出てくる本格的なフランス料理店では、最初のシャンパンに合わせてアミューズとキャビアを楽しむという方法もあります。結婚式やパーティーなどでは、スタンディング形式でクラッカーにキャビアやチーズを乗せたフィンガーフードを提供すれば、華やかでエレガントな演出ができそうです。

日本人はあまりキャビアには馴染みがないですが、機会があったらぜひ積極的に試してみてください。 また、日本のキャビアを見つけることがあれば、迷わず食べてみてくださいね。


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