『地面師たち』ネタバレありの感想・レビュー

ブログ

話題の『地面師たち』を観たので、ネタバレありの感想を書いてみます。あらすじやストーリーについては他のサイトで詳しく紹介されているので、ここでは特に気になった点に絞って述べます。

2024年に公開されたNetflixオリジナルドラマ「地面師たち」は、2017年に実際に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をベースにしたクライムサスペンスです。

物語は、不動産詐欺を行う「地面師」と呼ばれる詐欺集団と、彼らを追う警察の攻防を中心に展開されます。主人公は、地面師のリーダーであるハリソン山中(演:豊川悦司)と、その部下である辻本拓海(演:綾野剛)です。彼らは地主や不動産業者になりすまし、偽造書類を使って土地を不正に売買しますが、警視庁捜査二課の警部(演:リリー・フランキー)が彼らを追い詰めていきます。

出典元:https://www.netflix.com/jp/title/81574118

ストーリーにリアリティ・緊張感がある

過去には暴力的な地上げ屋が暗躍した時期もありましたが、本作では、土地所有者を脅すことなく、架空の売買を成立させる手法が描かれています。本物の所有者がその土地に住んでいるにもかかわらず、本人になりすまして偽の売買を行うという緊張感が、この作品のスリルを一層引き立てています。

また、本作は「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルとしており、実際の事件に似せた設定やシーンが見受けられます。たとえば、土地の購入を急ぐ被害者側の企業が、社長決済で稟議書を飛ばす点や、社内の派閥争いなどがリアルに描かれています。

実際の事件のように、真の所有者から警告文として「売買契約はしていない、仮登記は無効である」と記された内容証明郵便が届けられて、地面師を疑うようなシーンもあります。

キャスティング非常に良かった

出典元:https://www.netflix.com/jp/title/81574118

池田エライザが演じる女性刑事については、少し無理があるように感じました。まるで雑誌の表紙に居そうなモデルで、華やかすぎる気がします。
視聴率を意識したキャスティングかもしれませんが、実際にはもう少し地味な役者でも良かったかもしれません。

一方で、辻本拓海(綾野剛)、ハリソン山中(豊川悦司)、後藤義雄(ピエール瀧)、稲葉麗子(小池栄子)のキャスティングは、非常に適役で、彼らが本当に地面師であるかのような雰囲気がありました。他の作品に出ているときと雰囲気が異なり、ドラマへの没入感が高まりました。

出典元:https://www.netflix.com/jp/title/81574118

個人的にキムタクと藤原竜也のドラマ出演が嫌いで、個性が強すぎて作品に没頭できません。毎回演技も似たりよったり……。その点、『地面師たち』のキャストは演技も非常に自然で、日本のドラマとは思えないほどの出来栄えでした。
特に、辻本拓海(綾野剛)が、さえないホストの見習いをするシーンから、地面師としての本性を表すシーンは天才的な演技だと思いました。

ハンティングシーンは不要だった

冒頭にある海外でのハンティングシーンは、少し不要だったように思います。

特に熊が襲ってくるシーンはチープで、一昔前のB級映画を見ているような印象を受けました。YouTubeなどでリアリティのあるクマの襲撃シーンを参考にした方が良かったかもしれません。

アメリカのドラマには本物のハンティングシーンなどが出てくるので、こうしたものをそっくり真似る方がリアリティがあると思います。 もしくは北海道など、実際に鹿やイノシシを狩るハンターが存在するので、そうしたところで撮影してもよかったのではないでしょうか。

ホスト・歌舞伎町シーンは凄みがある

ホストクラブや歌舞伎町のシーン、住職の来客シーンなどは、キャスティングのリアリティが際立っており、非常に恐ろしい雰囲気が漂っています。特に、半グレ役のオロチ(演:アントニー)は、実際に歌舞伎町で見かけてもおかしくないほどのリアルさがありました。

シャンパンを入れてからの交渉や、ホストがフェラーリを乗り回すシーン また、異常な性癖があるなど、本当にありそうなストーリーがちょっと怖いくらいです。

アジトが少しB級映画感

地面師たちのアジトが、雑居ビルの一角にあるスケルトンオフィスという設定ですが、B級アクション映画の秘密基地のように見えてしまうのが惜しいところです。実際の地面師であれば、もっとこじんまりとしたバーのような居抜き物件が似合っていたのではないでしょうか。

一方で、マイクホームズや石洋ハウスのセットは、実在する不動産会社の雰囲気ができました。今まで賃貸マンションの契約などで、 新宿にある大きな会社の来客スペースを利用させてもらったことがあるのですが、 かなり似ていました。

また、たつ警部(演:リリー・フランキー)の自宅・家庭の雰囲気はリアルすぎて、実際に誰かが住んでいる一軒を借りて撮影したのではないかと思えるほどでした。夫婦関係が冷え切っている演出も妙にリアルで、 距離感が置かれているのも自然でした。

出典元:https://www.netflix.com/jp/title/81574118

お酒の演出はイマイチ

60年代のボウモア、マッカラン、ポートエレンなど希少ウイスキーを出すのは良いけれど、ガラスや調度品にイマイチ合っていなくて浮いて見えてしまいます。
例えば、ゴッドファザーのような調度品の部屋で60年代のウイスキーが出てくる分には整合性があるけれど、 専用撮影セット部屋に囲まれて、新品のバカラのグラスで飲むのは浮いてしまいます。

葉巻が吸いたくなったり、おつまみ食べたくなったり、瓶の水が飲みたくなったりしないのかなとも思いました。

出典元:https://www.netflix.com/jp/title/81574118

「地面師たち」最終回ラストは微妙すぎる

数年前、辻本拓海の一家を焼死させた真犯人が、彼を地面師として育ててくれたボス=ハリソン山中だと判明します。その後、辻本はアジトで復讐を図りますが、格闘シーンが微妙な展開となり、最後には女性刑事が突入して手榴弾が爆発し、彼は病院に運ばれるという結末を迎えます。

しかし、ハリソン山中と数年間も組んでハンティングに同行していた辻本が、復讐の場面で獲物を仕留めることに躊躇するのは、少し不自然に感じられました。この作品では、銃器を使わずに物語を進めた方が、より一貫性があったのではないでしょうか。

また、白昼堂々と路上での誘拐シーンが何度か描かれますが、日本では誘拐事件が比較的早期に解決されることが多いため、この点も少し現実離れしているように思われます。もう少し慎重に描写する必要があったかもしれません。

『地面師たち』は近年でも最も面白い

私は普段、海外ドラマの方が好きで、日本のドラマはあまり観ないのですが、この作品は設定やストーリーが非常に作り込まれており、キャスティングも良かったので、大変見応えがありました。

特に、物語の展開が速く、次々とスピード感あふれる展開が続く点が、テレビで放送されている一般的なドラマとは一線を画しています。休みの日に朝から観始めれば、1話から7話まで一気に見てしまうほど引き込まれる作品です。既存のゆったりとした進行のドラマに飽きている方には、こうしたスピーディーな展開の作品がピッタリだと思います。

ぜひ、休みの日の午前中から、一気に観てみてください。

タイトルとURLをコピーしました