去る2021年5月11日、フランスのハイパーカーブランド・ブガッティからエルメス仕様のシロンが発表された。内装をエルメスが手がけたそのワンオフカーの値段は、推定6億円だという。
このニュースを見た人の中には「バッグと車のコラボなんて珍しい!」と思う人もいたことだろう。しかしエルメスとブガッティの関係は100年前にはもう始まっていたのである。そもそもエルメスのあの有名な丸みを帯びたバッグ「ボリード」は最初「ブガッティ」という名前で売られていたのだ。
バッグと車は切り離せない。
車は移動する手段であり、バッグは移動時に物を持ち運ぶ手段である。美しい車で移動するのであれば、美しいバッグが必要になる。
今回はリナシメント編集部が選ぶ「車とバッグの美しいコラボレーション」を、ローマのメンズ・ラグジュアリーバッグブランドの3つのモデルで紹介しよう。
アウグスト NAVONA × フェラーリ 599
フェラーリは皆の憧れの車だが、V12 FRフェラーリはフェラーリオーナーが憧れる車だ・特にフェラーリ599はあのエンツォフェラーリのエンジンをデチューンして搭載し、圧倒的なパフォーマンスを実現した驚異的なモデル。
フライングバットレスというロマネスク建築のような独特のピラーや、至る所に設けられたダクトがダウンフォースを生み出し、超高速域でも地面に吸い付くような走りを見せる。
私もフェラーリ599に乗せてもらったとき、8500回転まで強烈に加速していく感覚と、V12らしい滑らかで力強いサウンドに一瞬で惚れ込んだものである。
しかしそこまでのパフォーマンスを実現していながら、フェラーリ599の本質はグランドツアラーである。極上のレザーシートに包まれ、シート後ろのスペースに荷物をくくりつけて旅をする車なのだ。
そこに合わせるバッグといえば、AUGUSTO アウグストの中でも旅行鞄に起源を持つNAVONA ナヴォナだ。
元来、より大きなボストンバッグであったこのモデルは、グランドツアラーのトランクに載せるために生まれたと言っても過言ではない。
それを現代に合わせてコンパクトに引き締め、装飾やディテールをモダナイズして毎日手持ちで使えるようにしたのが現在のNAVONA ナヴォナだ。実用性は増しているが、デザインの各所に旅行のエッセンスが残る。
ここではフェラーリ599のシートに合わせて、スポーティな黒を。
アウグスト CONDOTTI × ジャガーXKR
XKRはいわば、美しきリバイバルだ。
デザイナーは(今では数億円で取引される)XJ220も手がけた故ジェフ・ローソンだ。伸びやかで優雅なラインは歴史に残るE-Typeを思わせ、クラシックな存在感を漂わせる。XKR限定のボンネットダクトは伝説的なLMレースカーであるジャガーD-Type を連想させるし、レーシングカーのようなコンパクトなコクピットに包まれればそれが21世紀に作られた車であることなど忘れてしまう。
しかしXKRは単なる懐古主義、オマージュの詰め合わせではない。全体のデザインがすべからく調和し、ウッドパネルのゴージャスなレザー内装と相まって、ジャガーの歴史など一文字も知らぬ者から見ても圧倒的に美しい。車そのものの完成度が非常に高いのである。
この名車に合わせるのはアウグストの中でも歴史が長く、同じくクラシカルな雰囲気の漂うコンドッティが良いだろう。
丸みを帯びたデザインは優雅で、どことなく女性的ですらある。しかし横幅40cmの堂々としたサイズ感と力強いハンドルや型押しレザーの質感で、しっかりと男性に似合う雰囲気になっている。
この辺りも、女性的で優雅でありながらも、獰猛なサウンドを放ち強烈な加速をするV8スーパーチャージャーのジャガーXKRに通じるところだ
アウグスト PALATINO × マセラティクアトロポルテ
マセラティ クアトロポルテは、イタリア人の考える理想的なセダンである。
イタリア大統領が公用車にしていたこのモデルは、コンサバティブな美しさを持つピニンファリーナ・デザインに身を包み、フェラーリ製V8エンジンを搭載した大ヒットモデルだ。
このマセラティ クアトロポルテは世界中で売れてマセラティ史上最高の販売台数を誇ったのはだが、何よりもイタリアで人気を博した。ローマの街中を走るグレーのマセラティ クアトロポルテのエレガントさといえば、まるで動く彫刻であった。
この車の素晴らしさは美しく、速く、官能的かつフォーマルであることだ。フェラーリサウンドを奏でながら軽快にドライブすることもできるし、ダークスーツを着て大統領官邸に乗り込むこともできる。しかも向上した信頼性のおかげで、毎日乗ることができるのである。
アウグストのツーハンドル型ブリーフケース、パラティーノはまさにこの車のような存在だ。
洗練された佇まいのブリーフケースとして、ビジネスシーンで活用できるのは勿論のこと。フラップ式のような重苦しさを排したデザインのため、カジュアルな服装に合わせることもできる。
アウグストのパラティーノには、他のブランドにありがちな余計な装飾が一切存在しない。パイピングを使用せず、頑なにステッチワークだけで仕上げたフォルムが美しい。そしてその美しさだけで、どんなブリーフケースよりも堂々とした存在感を放っている。
そして実用性だ。クアトロポルテの分厚いボディのように堅牢なレザーと、しっかりと金具で取り付けられたハンドルは、ノートパソコンや単行本を持ち歩いてもへこたれない。
毎日のエレガンスとして、マセラティ クアトロポルテとパラティーノはいかがだろう。
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ブリーフケース ¥190,000〜