ブーレーズとフランス音楽

みなさまいかがお過ごしでしょうか、ライター高橋です。Apple MusicやAmazon music等のサブスク系のサービスなどを試してみたのですが、なんとなくCDを集めて並べたいという気持ちがあり、今月はすでに30枚ほどCDを買い集めては聴いている毎日です。中でも最近はピアノではなくオーケストラの作品を特に好んで聴いています。今回はそんな中でもフランス音楽を取り上げて紹介させて頂きます。

巨匠 “ピエール・ブーレーズ”

今回紹介するCDの指揮者は全てブーレーズになります。ブーレーズは作曲、指揮はもちろん教育など様々な面で音楽界において重要な功績を残している近代において最も重要な音楽家の一人です。クラシックの作曲家というとかなり昔の方を想像することが多いかと思いますが、実は2016年没とつい最近まで活躍していました。代表的な作品として、「12のノタシオン」や「レポン」などがあげられるでしょう。また、「構造 Ⅰ」 などの作品にも取り入れられており、最も特徴的な技法としてトータルセリエリズムがあげられます。トータルセリエリズムはシェーンベルクの十二音技法や、メシアンのモードなどから影響を受け、発展した作曲技法であり、12音技法で音高をパラメーターとして音程関係を設定した12音の音列を素材とするのに加え、強度や音色、持続などにもパラメーターを設定し、それらのセリーを用いて作曲する技法です。

こちらはブーレーズ「構造 Ⅰ」と「構造 Ⅱ 」の演奏になります。お時間あれば聴いてくださいますと幸いです。

これらの簡易的な説明を書いているだけで私自身が非常に混乱してきています。これ以上書くにはまず私自身の知識が足りないのと、本題からますます遠ざかっていきそうなので。今回はこの辺りにしておきたいと思います。これらの作品により作曲家として非常に高く評価されていたブーレーズですが、指揮者としても非常に高く評価されています。ドビュッシーやマーラー、ストラヴィンスキーなど、様々な録音が残っており、私は残念ながら生で聴いたことはありませんが、過去には来日して演奏していたこともあったそうです。今回はいくつか彼が指揮を振った演奏が収録されたCDのレビューをしたいと思います。

ドビュッシー「海」「夜想曲」

こちらはブーレーズ指揮、クリーヴランド管弦楽団による録音になります。収録作品は全てドビュッシー作曲の作品であり、「夜想曲」「第1狂詩曲」「遊戯」「海」の4作品が収録されています。これらの中で最も有名なのはやはり「海」でしょうか。副題がついた3つの楽章から構成された交響詩となっています。ドビュッシーは詩や絵画などの印象から作曲した作品を多く残しており、その中には日本美術から影響を受けたものもあります。例えば「映像 第2集」の「金色の魚」などは漆絵から影響を受けていたりします。彼は日本由来の美術品などの収集家でもあったそうで、葛飾北斎の「富嶽三十六景」の中でも特に有名な「神奈川沖浪裏」を書斎に飾っていたそうで、「海」の初版の表紙にも神奈川沖浪裏が印刷されていたそうです。こちらのCDの表紙もどこかで見たことがあると思ったらおそらく北斎のオマージュ作品なのだろうと思います。作品そのものが北斎の絵から影響を受けていたかは定かではありませんが、ドビュッシーの色彩豊かな和声感がふんだんに発揮された名曲となっています。個人的に水に関連する作品に置いてドビュッシーの右に出るものはいないのではないかと思うほどに彼の作品の水の描写は美しいと思います。

ドビュッシーとストラヴィンスキー ドビュッシーの書斎にて

このCDの中で私が特に気に入っているのは夜想曲の3曲目であるシレーヌになります。女声合唱によるヴォカリーズと共にセイレーンの美しい歌声と月の光にきらめく波の対比が描かれた作品になります。フランス人の著名なとある教授にレッスンを受けた時に感じたフランス音楽の印象がさながら表現されています。ブーレーズ指揮の演奏を全て聴いた訳ではないのですが、本能的な情動によって突き動かしていくというよりは、作曲家ということもありどちらかというと管理の下に美しい響きやメロディを構築していくといった傾向があるように感じています。ドビュッシーの音楽は特にそういった傾向と相性がいいように感じており、個人的にはこのシレーヌの世界観や美しさが特に際立っているような印象を受けます。

ラヴェル「ボレロ」「マメール・ロワ」

こちらはブーレーズ指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による録音になります。収録作品は全てラヴェルの作品であり、「マメール・ロワ」「海原の小舟」「道化師の朝の歌」「スペイン狂詩曲」「ボレロ」が収録されています。マメール・ロワは こちらの記事 でも紹介しましたが、とにかく素敵な作品です。個人的にラヴェルの作品の中でも特に好きな名曲です。こちらに収録されているのはバレエ版となっており、全曲通して演奏されます。ラヴェルは母がバスク人であったことから、スペインの音楽から影響を受けています。このCDに収録されている「スペイン狂詩曲」などもまさにその一曲です。そして、皆さんご存知の「ボレロ」もスペインの伝統的な舞踊が元になっています。精巧に刻まれる3拍子のパーカッションのリズムの下、色とりどりの楽器が同じメロディを代わる代わる演奏していきます。極限までにシンプルな構造を持ったこの楽曲は、良くも悪くも演奏者のもつ色が前面に出るような気がします。ブーレーズの指揮による精密なコントロールはもちろんのこと、ベルリンフィルの個々の演奏者のクオリティの高さが際立った演奏になっています。

ラヴェル「ダフニスとクロエ」

こちらもブーレーズ指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による録音になります。収録作品はこちらも全てラヴェルの作品となっており、「ダフニスとクロエ」と「ラ・ヴァルス」が収録されています。ダフニスとクロエは古代ギリシア時代に書かれた男女の恋物語であり、20世紀前半にセルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュスによりパリにて初演が行われました。ラヴェルはこのバレエに於いて音楽を担当していました。この作品は今ではラヴェルのバレエ曲としての知名度が最も高いのではないでしょうか。お恥ずかしながらあまりにも有名な作品ながら最近になるまで聴いたことがなく、なぜこの作品に今まで触れてこなかったのかを今では後悔しています。バレエの内容としてはロンゴスの書いた原作と少し内容が変わっており、3つの場面から構成されています。ラヴェル自身がのちに組曲として出版した第3場はやはり特に素晴らしいです。フランス音楽はやはりフランス人が演奏するのがなんとなく一番しっくりくるのですが、ブーレーズに味付けされたこのドイツの伝統的なオーケストラの演奏はそれはそれでとても興味深いものがあります。

おわりに

いかがでしたでしょうか?やはり百聞は一見に如かずということですので、もしご興味あれば皆様一度手に取っていただいて、聴いていただけますと幸いです。ブーレーズ自身の作品に関してももっと勉強して参りますので、機会がございましたら書いてみたいと思います。


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