カスタードクリームのような変わり種リキュール、アドヴォカートはオランダ生まれ

料理

アドヴォカート(advocaat)というアルコール飲料をご存じでしょうか。日本ではあまりなじみのない飲み物ですが、オランダ生まれのこのお酒はこちらではスーパーなどで簡単に手に入れることができます。そう言いながら、筆者はオランダに来て一年近くたってからようやくこのお酒の存在に気付いたのですが。

アドヴォカートの味と見た目、アルコール度数

説明に当たり、まず始めに味と見た目から入りましょう。端的にいえばカスタードクリームのような味がします。原材料に卵が使われているためです。甘く、デザートを食べているみたいで、後味にアルコールの存在感が持ち上がってきます。粘度は固くどろっとしたものから薄くより液体らしいものまでバリエーションがあります。

アルコール度数は14%のものが多いです。

アドヴォカートの原材料

市販されているものには原材料が記されていないのですが、一般的には卵、砂糖、ブランデーなどのアルコールから出来ています。自分で作ることも容易なようです。オランダの大手スーパーであるアルバートハインのサイトにあるレシピによると、卵、砂糖、バニラ、ブランデーが原料です(https://www.ah.nl/allerhande/recept/R-R668454/advocaat)。他のレシピを探すと、卵黄、砂糖、塩(少量)、バニラ、ウォッカ、というように原材料にはバリエーションが見られます(https://www.laurasbakery.nl/zelf-advocaat-maken/)。卵黄だけを使った場合はより粘度が濃く、固くなります。

アドヴォカート名前の由来

発明者の名は知られています。J.G. Cooymansなる人物が、スヘルトーヘンボス(‘s-Hertogenbosch)という町で発明しました。Cooymans という蒸留所は、アドヴォカートが主力商品ではないようですが、今日でも健在です。

直接の発明者は上記の通りですが、由来はもう少し奥深く、南米にあると言われています。17世紀ごろにはアヴォカドとアルコールを混ぜた飲料がそのころオランダの勢力下にあったアンティル諸島(カリブ海にあります)で好まれていることがオランダの文献に記されており、それが船員を通してオランダに広まったというのです。オランダではアヴォカドは育たず、ぞの代わりとして卵が代用として考えられた、そういうわけなのだそうです(http://www.bythedutch.com/about/origins-of-advocaat/)。

名前の由来ははっきりしないのですが、主な説は二つあります。ひとつはアヴォカドの飲料が元になっていることから、アドヴォカートという似た名前になったというのです。もうひとつは弁護士から来ているというものです。オランダ語で弁護士は「advocaat」といい、このお酒と綴りも発音も全く同じ語です。弁護士の間でこの飲み物が、商売道具である喉をすっきりさせてくれる作用があることで人気であったことから、この名前になったというものです。

美味しい飲み方

英語版やオランダ語版、日本語版のウィキペディアによると、オランダ国内で消費されるものは固形に近い形状で、国外へ向けた輸出品はより液体に近いというそうです。日本で手に入るオランダ産のアドヴォカートがどのような固さなのか筆者は分からないのですが、オランダ国内で買ったものは確かに、三種買ったのですが、どれも固いものでした。

したがって、そのまま味わうとしたら、「飲む」というよりスプーンですくってデザートのように楽しむのが適しています。実際、ラベルにも生クリームと一緒に、というようにデザートとしての用途が推奨されています。アドヴォカートの歴史を調べるために、オランダ語の写真などのアーカイブが集まっているサイトで写真の検索をかけたところ、1950年代くらいの写真で人形遊びをしている少女がアドヴォカートの瓶に手を突っ込んで中身を舐めている写真がありました。お酒ですが、甘く、子供がこっそりつまみ食いしたくなるような飲み物であるというイメージが昔からあるのだといえます。

確かに甘いのですが、アルコールのせいかそれほどくどくなく、何口でもいけます。カスタードクリームのような味がすると書きましたが、それこそシュークリームの具に使えばかなり美味なのではないかと思いました。

ストレート

せっかく三種買ってみたので、飲み比べ(食べ比べ)てみました。正直、それほど味の違いは感じ取れませんでした。しかし、真ん中のTwee kippenは少し薄く、アルコール感が他の二つに比べて強く感じられました(度数は三つとも同じ14%です)。両脇のZwarte kipとWarninksはよりこってりとして固い質感でした。個人的にはWarninksが一番固く、濃いように思います。

日本の市場で出回っているアドヴォカートは楽天やアマゾンを見ると、Warninksのものが多いようです。しかし種類が違うようで、ラベルも違うし、アルコール度数も日本のものは17.2%、さらには容量も、オランダでよく見かけるものは500mlですが、日本のものは700ml。さらに、一番大きな違いとして、値段があります。日本で売られているものはどれも1000円台後半くらいしていますが、オランダでの実売価格は2020年8月現在で3~6ユーロ(約370~750円)くらい。

カクテル

そのままでは飲むというより食べるのに近くなりますので、飲もうと思ったら、カクテルにすることになります。アドヴォカートを使ったカクテルの有名なふたつをここでご紹介します。

 

スノーボール(snowball)

原材料:

アドヴォカート 2ショット

ライムジュース 1ショット

炭酸入りレモネード トップアップ分

作り方:

アドヴォカートとライムジュースを氷と一緒にシェイクし、漉してグラスに注ぎます。レモネードでトップアップ(グラスが満杯になるまで足す)して完成です。

氷を注いだグラスに材料をすべて注ぎ、ステアするやり方もありますが、個人的には氷抜きで、レモネードも多くし過ぎず、濃い目に作ったほうが美味しかったです。

クリスマスに飲むカクテルなので、サクランボやシナモンを飾ると雰囲気が出ます。しかし夏なので、今回はそうした飾りはなしにしました。

どんな味かというと、カルピスというのが一番近いでしょう。使ったアドヴォカートの質感が固体に近いものだったからか、少しプリンのような塊もも出来、デザートっぽくなりました。

フラッフィーダック(Fluffy duck)

「ふわふわのアヒル(カモ)」という名前です。

原材料:

ジン 1 1/2ショット

アドヴォカート 1 1/2ショット

トリプルセック 1ショット

オレンジジュース 1ショット

炭酸水 トップアップ用

作り方:

ジン、アドヴォカート、トリプルセック、オレンジジュースを氷と一緒にシェイクし、氷を入れたグラスに漉して注ぎます。炭酸水でトップアップして完成です。オレンジの皮などを飾ってください。

ジンやトリプルセックなどが入っているので、スノーボールより複雑な味わいが楽しめます。カルピス感があるのはこちらも否めませんが。炭酸水の量で飲みやすさが変わります。自分に最適の分量を探してみてください。

トリプルセックというのは甘さ控えめのホワイトキュラソーのことで、元祖はここでも使ったコアントロー社のものです。オレンジの香りが強いリキュールです。なら、オレンジビターズでもいいのでは?と思って、家にあった前にご紹介したことのあるデン・ハーグの蒸留所が作っているものも試してみたところ、案の定、それほど味に違いは出ませんでした。ビターズの方がちょっとくどい味になったかな、という程度の変化でした。

 

参考資料:

オランダの酒屋大手Gall & Gallのアドヴォカートの説明ページ


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