IPAの雄ヨーペン(Jopen)――オランダビール三昧 2

料理

スーパーで簡単に手に入るオランダのビールを飲み尽くすというこの企画の第二弾、私の中の本命であるヨーペン(Jopen)の登場です。

ヨーペンはハールレム(Haarlem; ハーレムとも)にあるクラフトビールの醸造所です。1994年、ハールレム市の存続750周年を記念したお祝いに、ハールレムに伝わる16世紀のレシピによるビールを供したところ、好評であり、「750年に一回じゃなく、もっと頻繁にこのビールを作ってくれない?」という反応に応じて、ヨーペンが生まれたと公式サイトには書かれています。ヨーペンの日本語での情報はまだ非常に限られていますが、この会社はオランダの観光という意味で面白い潜在力があると思います。というのはバー兼レストランが併設された醸造所が、元教会の建物の中にあるのです。いつかそこのレポートも書いてみたいと思いますが、とりあえず本記事ではその外観の写真だけ、冒頭に載せて見ました。

ヨーペンは現在オランダだけでなくデンマーク、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアなど22カ国で売られています。個人的にはオランダのクラフトビールの雄と言えると思っているので、日本でも売り出されることを期待しています。

本記事は二回に分けて、スーパーで手に入ったヨーペンビールの紹介をしたいと思います。ご紹介するのはとりあえず9種類ということになりますが、公式サイトなどを見ると、もっと種類はあるよう。今回レビューできなかった分は、飲み次第追々別記事でご紹介してみたいと思います。

 

一本目はBlurred Lines Neipa。Blurred LinesというのはRobin ThickeとPharrell Williamsの同名のヒット曲からとっているそう。NeipaはNew England IPAの謂。このIPAについてはBrewNoteという日本語のサイトに詳細な説明を見付けましたのでリンクを貼っておきます(https://brewnote.tokyo/2017/07/newenglandipa/)。まとめると、アメリカのニューイングランド地方発祥のIPAの種類で、口当たりがよいこと、色が濁っていること、ホップの主張がそれほど強くないこと、トロピカル、柑橘系のフルーツの味が特徴として挙げられます。

こうした情報は飲んだ後に知りました。では飲んだ時のメモはどうなっているでしょうか。強いレモンの香り、海藻の匂い。味は柑橘系。舌で転がすとマーマレードのような柑橘類の皮の苦み。小麦の味もし、ラベルを見るとやはり原材料に載っている。

メモでは色の濁りについては言及していませんでしたが、小麦(ヴァイツェン)の特徴があることが気になったようで、それはやはり普通のIPAより甘味があり、濁りがあるということにもつながるでしょうか。原材料には大麦、小麦、それからオーツ麦も使っています。オーツは口当たりのまろやかさや粘度を上げることに寄与しているらしい(Scott Janish.comというサイトのリンクを参照:http://scottjanish.com/case-brewing-oats/)。

 

次はLet there be light IPAです。ヨーペンは名前にかなりこだわりがあるようですね。Lightという名前の通り、アルコールは3.3%で低め。ビールの種類としてはSession New England IPAになります。夏の暑い日に軽いビールで楽しもうという趣旨なのでしょうね。筆者は昔ベトナムに旅行した時に、アルコール度数の低い味のピルスナーは熱帯の気候に合うのだということを体感しましたが(暑いと酔いが回りやすいんですね)、このIPAはアルコール度数は低くしても味まで薄くはしないということでしょうか。ごくごくも飲めますが、ゆっくり味わっても複雑な味が楽しめました。

香りはレモン、森の中のような匂い。口当たりはまったりとして粘り付くよう。色は薄い金色で温泉みたいに濁っている。味はグレープフルーツの苦み。自分の飲んだメモを見るとこう書いてありましたが、New England IPAの特徴にまさに合致しているようです。

 

三本目。Hop zin met ons(ホップよ、我らとともにあれ)。うん、うむ、なんだこの名前は。God zin met ons (神よ、我らとともにあれ)という言い回しをもじっているそう。ホップが神なんですね。すてきです。

さっそく、主観による味を見て見ましょう。柑橘系の香り、海の匂いがするが、それほど強くない。抹茶、肉料理のようなコク。煮干しのような味に黒砂糖の甘味。

このIPAの一番の特徴はなんとグルテンフリー。それもオランダで初めてのグルテンフリービールだそう。ですがグルテンフリーに興味がなくとも、単純に味だけで楽しめます。水、大麦、ホップ、イーストというシンプルな原材料ですが、ホップはSimcoe、Columbus、Mosaicの三種類が使われている。中でもキーとなるのがMosaicということですが、このホップはhopslistというサイトによると、2012年にリリースされたホップの種類でIPAやペールエール向き、複雑だが澄んだ、マンゴー、柑橘系、ハーブなどの香りを出すそうです。

 

四本目はMooie Nel-North Sea IPA。Mooie Nel(美しいネル)というのはハーレム近郊にある行楽地として有名な湖の名前。外国向けにはその固有名詞の代わりにNorthe Seaとして売っているとのこと。昔オランダ領東インド(ほぼ今日のインドネシアの領域)に向かって航海していた船に積まれていたIPAがインスピレーションの元としてあるようで、公式サイトの動画ではIPAではなくて東インドビールだと主張しています。アメリカのホップ由来の苦みと香りがオーツ麦によってまろやかになっているそう。その点New England IPAと似ていますね。

感想に行きましょう。香りは落ち着いたIPAという印象。ゆっくりとあとから海藻の匂い。口に含むとやさしい甘みが広がり。リコリスの甘味や苦みも感じられましたが、この点に関しては自分の舌はあまり信用できない。もっと柑橘系の香りを嗅ぎ取るべきだったのでしょうが、IPAの連続で慣れてしまっていたので、こんな感想になりました。

ヨーペンのモットーはラベルの下に書かれている「Anything but boring」。退屈なビールは作らない。そういう気概が感じられる個性派ぞろいのビールでした(しかし全部IPAでしたね)。今回、四種類ご紹介しましたが、また次回、5種類紹介したいと思います。次のビールたちも個性的な名前と味で楽しませてくれることは請け合いです!

前回のオランダビール三昧:

グロールシュ(Grolsch)スペシャルビール飲み比べ――オランダビール三昧 1

ヨーペン(Jopen) 公式サイト(オランダ語ですが)

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