100円のコップと数万円の高級ガラスは本当に違う?

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数字や文字で表現できないものを”良い”と言うのは難しいことです。
特にそれが実用的でない美術品ならなおさらです。1脚10万円近くする高級ガラスや1台50万円近くするクリスタルの花瓶など様々な西洋のガラスを集めてみましたが、それらが役に立つかと聞かれれば、なんの役にも立たないと答える他ありません。100円のコップであっても100,000円のコップであっても同じように飲み物も入りますし、なんなら安い方が強度が高いくらいです。
ではなぜ高級なガラスが存在するのか、そしてそれらは100円のコップと違うのか、その点を実際に収集している立場から解説してみます。

優れた100円のコップ

90年代までは安いコップというのは少なく、2000年前後からブームになった100円均一でもコップの種類は限られたものでした。厚手で型抜きの、重い両手で持たないと持てないものや、台座にグラつきのあるものなど明らかに質感の低いコップばかりでした。

しかし2020年になった今は写真をご覧の通り、優れた100円のコップが続々と販売されています。造形に創意工夫を凝らしただけでなく、型抜きの後も目立たない、薄手のものや透明感の高いものなど何十種類と販売されています。
驚いたことにフランフランなどの雑貨屋さんでは、100円ではないものの1,000円程度で有名なバカラのアルクールと同等のデザインのコップをプラスティック製にして販売していました。
完全なコピーでないので著作権的に問題は無いですし、バカラも1,000円のプラスティック製に対して問題提起することはしないでしょう。
つまり90年代や2000年代に比べても現代の100円コップは非常に優れているといえます。

中にはホテルのバーで出てきてもおかしくないような本格派のロックグラスなど、驚くような商品まで存在します。
100円ではないものの、日本にも美しいガラスは存在します。数多く存在するガラス工房の中でも特に、スガハラガラス(https://shop.sugahara.com/)や木村硝子(https://www.kimuraglass.co.jp/zizi)は特に優れたデザインが多いと言えます。安いものでは千円代から中心価格帯は5千円程度で手に入れることができます。

日本製の良いガラスを手に入れると生活が変わる?

コストパーフォーマンスから言うと上記のような日本製のこだわりのガラス工房のものを買うと生活が変わります。美しさと実用性が両立されており、価格は少々高級ですが充分に日常使いできる範疇です。100円のガラスと比べてしまうのは失礼ですが、大げさに分かりやすく説明すると、飲み物ののどごしや香りの感じ方が違います。口当たりもなめらかです。

ビールの例で言うと、ビールジョッキは喉越しだけ考えられて”ガブガブ”という表現をする飲み方ですが、同じビールでも職人が手吹きで仕上げた薄手のグラスで飲むと味わって飲むことができます。香りの立ち方や口への入り方などが全然異なるのです。また重量が軽いので余計な力がかからず、バランスも良いのです。

日常で水道水を飲むときでさえも、そういったグラスであれば毎回心地よさを感じるのです。そういった意味でも国産のグラスというのは価格と美しさが両立した実用的なグラスと言えます。

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ではなぜ非常識な1脚数万円の高級ガラスを集めるのか?

コストと実用性という面で言えば完全に日本の工房が優れています。もちろんリーデルやツヴィーゼルのクリスタルグラスもコスパ抜群の商品もありますが。しかし何故、遥かに高い高級ガラスを集めるかというと”美しいから”という理由につきます。

ガラスの評価というのは一度は”完全性(精度)”に向かいます。例えば100円の安いグラスが歪んでいたり、濁っていたり、ムラがあるとすれば、2,000円のガラスはまるでコンピューターグラフィックのように精度の高く、薄くて透明で機械的なものが良いとされます。それが精度の高い完全性と言えます。

しかし、数万円するような高級ガラスは再び”不完全”なものの美しさに価値を見いだされます。ヴィンテージの手作業で作ったガラス、それもカッティングや金彩に何十時間も掛かる、手間の掛かる芸術品として…。それは画家の描く作品に似ています。同一の絵を依頼したとしても、少しずつ異なり、その個性が生まれます。
例えばバカラやサンルイ、ヴァルサンランベール、ラリック、ロブマイヤーなどの有名なガラス工房であっても、同一の時期の同一のロットでもムラや品質の差があるのです。それが集めたくなる理由です。作品に人間性があり、ロマンを感じます。

また古代ギリシャ神話をモチーフにしたものなど、古典的な構図や柄など飽きのこない不変的な美しさを持ちます。これらの中には50年それどころか100年近くパターンとシリーズ名の変更なく販売が続けられるものがあります。美しいからこその所以です。しかしこういったガラスを集めるのは少々難しいことです。

具体的な名前は伏せますが、百貨店で10万円近いプライスで売られているガラスの中でも、”手抜き”の商品があるからです。
本来はガラスにエッジングをして、その溝に金彩の塗料(粉)をつけるのですが、この職人が作業する細かな工程を無くして機械でのプリントになっているのです。そのシリーズは過去には手作業であったものが今は機械化された量産品であったりするのです。それだけでなく金の含有量を落とした混ぜ物の多い発色の悪い金であったりします。

陶器のウェッジウッド・フロレンティーンターコイズが良い例です。昔は一つづつ何時間も掛けて龍などの模様を塗っていたのですが、現行品はプリント転写になり特徴であった凹凸もないのです。これでは模様の精度が上がっても何の芸術性もありません。何もかも手でやればいい、という訳ではありませんが、食器の美術品とされるもののほとんどが手作業で施された作品で、何百もの花の絵柄を描いたりとカップ&ソーサーなどは”実際に使うことのできる絵画”とさえ私は思っています。

一見意味の無い高級ガラスは、絵画のように飾っても美しく、職人の技術の結晶でもあり、歴史的な美しい造形や模様を踏襲した作品でもあり、それに酒を入れて楽しむことさえ可能な「傑作」と言えます。 (はっしー)

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