わずか数日のロンドン〜コッツウォルズ旅行を「イギリス」とまとめてしまうのは些か横暴ではありますが、10年ぶりにヒースロー空港に降り立った景色は、19歳の時に見た景色とは異なりました。
Inspiration
インスピレーションというのは往々にして失われやすく、日常とともに自分の世界に閉じ込められます。
普通に生活していると、まるで東京が世界の全てのように感じてしまいますが、飛行機に乗り込むちっぽけなことで、誰も住んでいない広大な雪山が同じ世界にあるのだと実感させられます。
Chelsea
英国女王が住むバッキンガム宮殿から数百メートル、チェルシーを散歩する私達。
どんよりとした雲が広がる想像通りのロンドンの天気です。
厳格主義と清貧を貫いた聖人ドミニコと奇しくも同じ名前を持つ「サン・ドメニコ・ハウス」に滞在した私達。
質素とは対極の部屋ですが、ぼんやり壁を眺めていると旧約聖書の創世記に出てくるノアの方舟で逃げる人々が描かれていることに気づきます。
初日は”硬水の水を浴びる”という洗礼を受けます。
どうあがいても髪はゴワゴワになり、肌はガサガサになります。空調の調整もできず多くの日本人は受難することでしょう。
Antique
Harrodsの箱を車に積み込みアンティークを漁りに来た私達。
英国製のカップ&ソーサーが出迎えてくれますが、eBayで”予習”しすぎたおかげで新鮮味はやや劣ります。
積み重なったガラスの数々。英国骨董の宝庫で千円からガラスが手に入ります
しかしバックスタンドさえ描いてない無名な食器ばかりで、この中から良いものを探すのは経験が必要です。
再びハロッズに戻り暇を潰す私達。
高級車の脇をブラックキャブが慌ただしく駆け抜けます。
悪天候の中ジャガーに乗り込みコッツウォルズを目指します。
大事な事を言い忘れていましたが、先程までの写真はニコンのCOOL PIX Aで撮影しました。
ここからはCANON EOS Rをカバンから取り出します。ミラーレスであっても重たいことには違いありません。
Cotswolds
ブロードウェイやボートン・オン・ザ・ウォーターは焼成煉瓦や石を積み重ねた建築が何百年も残る。地震が無いためか裏通りに入っても新しい建築物が無く、街灯やたいした宣伝広告がないのでタイムスリップした気分に浸れる。
庭先にあるテーブルセットを除けば100年前となんら変わりのない景色。
ここにも電柱や看板などはない。
輸入品の子供のおもちゃのような形の野菜は色彩も異なり日本人からすると味の想像はできない。
残念ながら新鮮な野菜があっても、どこも同じ料理が出てくる。
バターとクロテッドクリームは信じられないほどに美味しい。
特にジャージー牛だけで絞られた牛乳は日本のものとは別格のコクと喉越しがある。
家畜のストレスは無いに等しく
新宿御苑より広い面積をわずかな羊が占領します。
顔と足の黒いサフォーク種は、サウスダウン種とノーフォーク・ホーン種の交配種で、高級羊肉や仕立て服の原毛として出荷されます。
奥に見える発色の良い黄色い絨毯は菜の花畑です。
初めて運転したジャガーのSUVはイギリスの田舎に溶け込む。
未舗装の道も多く残り悪路を走るのには最適と言えます。
川のほとりに宿を取り散歩する私達。
柔らかな木漏れ日は、柔らかな若芽色で日本で見る色彩とも異なります。
彩度とコントラストの低い光が河流を照らし、小鳥が集まります。
cherry blossom
私達の知っている桜と違って小粒の花弁が枝先まで密集しています。
香りが強くパフュームのような濃厚さがあります。イギリスに来て思うのが、その場に合う香りというのが存在する事です。
例えば英国製であるCREEDのROYAL MAYFAIRは、ロンドンのウェストミンスター、ナイツブリッジを歩く時には信じられないほどぴったりの香りがします(もちろんメイフェアも)。
この小ぶりなチェリー・ブロッサムは形は似ていても日本の桜とは全く異なり、川の畔の若草に溶け込む調和のある香りなのです。
宿の近くに住み着く猫。水飲み場があっても餌は余り貰えてないみたいです。
西日が差し掛かるころ、口にネズミを咥えて駐車場の真ん中で遅い昼食を取っていました。
「何を食べているの?」
駐車場を通りがかった宿の管理人が私達がそう尋ね、とっさにRatと答えました。
「あら、ごめんなさいね」と笑いながら去ってゆきました。
TESCO
夜になりテスコで飲み物を買って、さっそく前日に手に入れたアンティークを開封します。
スターリングシルバーのトレイと陶器の花瓶をさっそく宿に忘れて帰りそうになりました。
四月下旬でもコッツウォルズは夜になると冷え込みます。暖炉に薪をくべてマッチで火をつけると体の芯から温まります。
エアコンの空調と違い遠赤外線でどこ座っても暖かく談笑は夜まで続きました。
翌朝はロンドンとも異なる濃霧に包まれ、遠くから大きな鳥の鳴き声が森に響き渡ります。
時折慌ただしくランドローバーが道路を横切るほかは静まり返っています。憂鬱な朝ですが空気は透き通って呼吸もしやすいです。
この日は雨が降ったり霧に戻ったりを繰り返しながら、夕方には美しい天気に変わりました。
四月のイギリスは信じられないほどに夜が長く、10時を回ると一気に暗くなります。
日本ならおそらく5時か6時には真っ暗になりますが、イギリスでは9時位までは快晴で子供も外で遊んでいます。
住んでいる国によって生活のペースや時間が異なるのは当たり前だと強く実感させられます。
わずか数日のロンドンとコッツウォルズの旅行でしたが、ツァイスで見たイギリスは感性を取り戻すのには十分な情景でした。