『Amazon Music』などサブスク音楽配信サービスの副作用とは

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本格的にAmazonMusicを利用して1年弱になります。
月々わずか980円で7,500万曲がHDで聴き放題という、今でも信じられないほどに便利なサービスです。最新リリースも毎日のように更新され、日本人アーティストも新譜が即日登録されるほどです。昔は、アーティストのアルバム1枚聞くのに3000円もお金がかかりましたが、今ではその3分の1の金額で、一生かけても再生しきれないほどの量のアルバムを、自由自在に聴くことができます。
数年前はハイレゾ音源がONKYOやSONYの有料配信で1曲500円しましたが、AmazonMusicではハイレゾ音源も自由に聴き放題なので、オーディオマニアも満足できるような音質で楽しめます。

システム上のデメリットは存在しない

新しい曲が発表されないクラシック音楽や昔のジャズ音楽でも、何万枚ものCDが登録されていて自由に聞くことができます。現在活動しているアーティストであれば、新しい楽曲も自由に聴けるということもありシステム上のデメリットは存在しません。費用対効果を考えても、アルバム1枚の金額で3ヶ月利用できるので本当に安いです。仮に4980円だとしても加入する人は多いのではないでしょうか。

関連再生も優れていて、あるアーティストに関係している人物を自動的に候補に出したり、聞いている楽曲から似たような雰囲気の曲を自動で選んでくれる機能など本当に便利です。
自宅のパソコンで聞いているプレイリストを、そのままiPhoneのアプリでも聞けるというのもメリットです。

唯一のデメリットは音楽に集中できなくなるということ

今までAmazonMusicにデメリットはないと思っていました。ところが、最近になって実はAmazonMusicを筆頭とするサブスク音楽配信サービスには重大なデメリットと副作用が隠されているのではと思うようになりました。

1つは、プレイリストでまとめられていることが多く、演奏が止まらないということです。設定を変えて自動再生をオフにし、アーティストページからアルバムをクリックすれば、CDのように1時間ぴったりで再生が止まるようにはできます。ただ現状、ほとんどの人はプレイリストに入った好きなアーティストやジャンルを、ダラダラと何時間も聴き続けているのではないでしょうか。

これが実は脳への負担が大きいような気がしてきました。好きなアーティストでも何時間も連続で聴くと、耳や体が疲れてきます。それ以上の問題もあり、脳が曲を集中して聞かなくなるようになります。

CDを買っていた頃は「音楽鑑賞」に集中していた

昔CDを購入していた頃は、新しいアルバムが出ると、当日にCDショップに買いにいき、急いで自宅に戻り集中して聴き入っていました。次々と流れてくる初めて聴く曲は、ワクワクして時に鳥肌が立つような感動を覚える事もありました。気分転換したい時は、購入したばかりのアルバムを何度も再生して楽しんでいたように思います。

サブスクに切り替えてからというものの、例え好きなアーティストの新しいアルバムであっても、初めて聴いている曲を途中で飛ばすようになり、1枚のアルバムを集中して聞くことができなくなってしまいました。
そのとき、自分は音楽を聴いているのではなく、音楽を作業用BGMに格下げしてしまったのだと自覚しました。それだけでも衝撃的だったのですが、さらに驚く出来事があります。

サブスクに登録されていない新譜が欲しくて、久しぶりに新譜CDを購入したのですが、届いてから1週間以上もパッケージを開かずに玄関に積み重なっているのです。加齢とともに新しいCDを聴く体力が落ちてしまった、ということもありますが、サブスクの登場により1枚のCDを真剣に聞くという行為が遠いものになってしまいました。

「CDを買う」という本当の意味は?

CDを買うというのはある意味、美術館で絵画を鑑賞するように、そのアーティストの作った音楽に対峙することではないでしょうか。まず、中にどんな音楽が入っているかわからない、10曲前後しか入っていない高級なCDを購入して透明のシュリンクを破り、ディスクをCDプレイヤーに設置して再生ボタンを押します。
固有のアルバムを新品で買うというのは、アーティストを直接的に応援することにもなります。ときには、音楽を聴きながらCDケースに差し込んであるブックレットを眺めて、歌詞を追いながら曲を聴くこともあるでしょう。そして必ず共通しているのは、1時間前後でアルバムの最後の曲が終わりCDが止まるということです。

永遠に作品が展示されている美術館は無いですし、演奏が何千日も続くコンサートもありません、この1時間というのが、人が集中できる時間としてはとても適しているように思います。例えば学校の授業なども、おおよそ50分から60分で終わるようになっています。気分が高揚しているのであれば、リピート再生したり、別のCDを聴くのも良いですが、そこには一度CDを入れ替えるという作業が伴います。

このように、非常に不便で今後消えゆくCDの文化は、今思うと人間の脳に対しては親和性が高かったのだと思います。さらに昔のことをいえば、レコード時代は埃を取り除く作業から始まり、再生時に針を落とすという儀式があります。それに3曲から4曲すると、B面に裏返さなければなりません。レコードは、今の収録技術からしたら古典的なもので、単純に音楽を楽しむという意味では劣っています。

ですがどこか宗教的な、スピリチュアルを感じさせる儀式でもあり、それが音楽に対しての謙虚な対峙にもつながっていたのかもしれません。

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関東在住。14年ほどブロガーをやっています。

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