単身高齢者、独居老人問題の根深い闇

一人暮らしの教科書

漠然と人口動態統計のマクロのデータを見せられても、目で見ていないものは実感しにくいものです。実際に筆者が見たミクロな視点と織り交ぜて単身高齢者、独居老人問題について考えてみます。

65歳以上人口が初めて4人に1人を超える
我が国の人口は、1億2711万人(平成27年10月1日現在)で、平成22年から94万7千人の減少となり、大正9年の調査開始以来、初めて減少しました。
総人口を年齢3区分別にみると、15歳未満人口は1586万4千人、15~64歳人口は7591万8千人、65歳以上人口は3342万2千人となっており、65歳以上人口は、調査開始以来一貫して増加を続けています。
また、総人口に占める割合は、15歳未満人口は12.7%、15~64歳人口は60.6%、65歳以上人口は26.7%となっており、65歳以上人口が初めて総人口の4人に1人を超えました。なお、15歳未満人口の割合は調査開始以来最低となり、少子高齢化が進んでいることが分かります。
平成27年国勢調査-抽出速報集計結果からみる高齢化社会-より引用

今から6年前の平成27年には、総人口の4分の1が65歳以上になり、15歳未満人口の割合は調査開始以来最低という結果に。

厚生労働省 図表1-1-7 出生数、合計特殊出生率の推移より引用

こちらの図を見るとまだ厚生労働省の見通しの甘さが目立ちます。
朝日新聞デジタル記事の「今年の出生数推計、約80万5千人 少子化ペース、想定より7年早く」によるとすでに2021年時点で80.5万人まで出生数が減っているようです。上記グラフには2019年の右に2040年の推計がありますが、すでに推計グラフの半分まで来てしまっています。

年末に自販機で「おしるこ」を買う老婆

数年前まで少子高齢化といのは、どこか他人事で教科書に出てくる耳タコなフレーズだと思っていました。つい先日、こんな光景を目撃してしまいました。年の瀬の夕暮れどきに、90歳近くに見える高齢女性が手押し車を自動販売機の前に止めて、震える手で「おしるこ」を2本買っていたのです。

読者の方からしたら、造作ない日常の光景に見えるかもしれませんが、筆者はこの光景に愕然としてしまいました。昔住んでいた静岡の田舎村では、そもそも高齢者が自動販売機で飲み物を買うという姿が珍しく、ましてやお汁粉なんてのは絶対に買わないものでした。なぜなら年末にもなれば鍋にうんざりするほど大量に作られて、年末年始は木臼で突き立ての餅を焼いて一族で食べるのが定番だったからです。筆者自身もその頃の体験からか、年末になれば小豆を買って鍋で炊き5~6人前を冷蔵保存して、時間かけて食べています。

もしかしたら、その高齢女性は単に散歩ついでに甘いものが飲みたくなっただけかもしれません。ですが、どこか哀愁漂い一人暮らしで小豆を炊くのも手間になり、おしるこ2本を年越しのささやかな楽しみにしているように見えてなりませんでした。

フードコートで一人食事する老人

こちらも年末に目撃した光景で、うまく言葉にできないのですがとにかく異質でした。暮れも押し詰まり、子供を抱きかかえたような家族が慌ただしく年越しの買い物をショッピングカートに山積みにしています。子供達がサーティワンのアイスクリームを食べているような雰囲気のなか、老婆が一人でフードコートで簡素な食事をしているのです。

今から10年少し前、筆者は静岡の狐ケ崎にあるイオンの近くに住んでいました。今でこそ一人利用も当たり前なのかもしれませんが、当時はフードコートというのは家族で利用するもので、一人での利用はあまり見かけず、いたとしても単身の若い男性がパパっと食事をする程度でした。家が近かったので毎日のように通っていたのですが、高齢者が一人で夕食を食べる姿なんていうのは一度も目撃しませんでした。その頃の体験からか、ショッピングモールのフードコートで一人夕食を済ます高齢者というのは衝撃的に写りました。

少子高齢化に核家族化、単身世帯、独居老人が増えた果てに、フードコートで夕食のマクドナルドを一人で食べる老人の姿を思うと恐ろしいものがあります。

多様性のダブルスタンダード

「女性も働き活躍する時代」「結婚しなくてもいいですよ」「無理に強要されなくても、趣味だけ楽しみ好きに生きていいですよ」「子供は無理に産まなくていいですよ」

これは一例ですが、多様性が認められるようになり、女性の社会進出や結婚の自由が叫ばれるようになりました。昭和の慣例的な「男は働き一家の大黒柱、女は産めよ増やせよ」は確かに時代に即しておらず古い価値観かもしれません、ですが「独身は自由で楽しい個人の権利ですよ」と甘い言葉で囁きつつも歳を取ったら「家族を作らなかったあなたの自己責任」というのはダブルスタンダードに思えてなりません。

筆者は32歳ですが、自宅の浴槽でくつろいでいると「このまま死んだらいつ見つかるかな?」とときおり考えることがあります。32歳でも家族のいない一人暮らしは怖いので、高齢者の心の不安は桁違いのものでしょう。介護施設は高齢者の増加に追いつかず、労働人口の減少や施設数さえも圧倒的に不足しています。たとえ施設に入れる老後だとしても、介護してくれる人が65歳以上という「老老介護」になると揶揄されているほどです。貯蓄があってもインフレで賄いきれず、肝心な年金制度も改悪が続けられています。今の平成世代が高齢者になる頃には、スマートフォンや似たような端末を使いこなしているでしょうが、老いた自分とは対局の若い人たちが綺羅びやかなLIVE配信をしているのを見て、精神的にもストレスを受けることも考えられます。

今後、高齢者の精神疾患や想像もできないような犯罪が増加するかもしれません。そして抜本的な改善が必要なときが迫っていると考えるべきです。

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