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ロンドン発のウイスキー Bimber Distillery ビンバー蒸留所が日本に上陸!

王道のウイスキーといえばスコッチですよね。スコッチは名前の通りスコットランドで製造されたウイスキーです。日本では「英国」と一括で語られるイギリスですが、正式名称がグレートブリテン及び北アイルランド連合王国というように、4つの国が1つにまとまった国家です。日本でも北海道と東京、沖縄が全く別の文化を持つように、イギリスも気候や地質が全く異なり生活スタイルも北部と南部で違いがあります。その一つとしてウイスキーが挙げられます。

意外にウイスキーを飲まない?ロンドン人?

何度かイングランドとスコットランドに訪れたことがあるのですが、ロンドンに滞在しているとお酒を飲む機会があります。渡英するまではイギリス全土でスコッチウイスキーが飲まれていると、信じてやまなかったのですが、実際にロンドンに何日か滞在していると地元スーパーのTesco(テスコ)にはほとんどウイスキーがなく、ビールやジン、ワインばかり。ウイスキーが欲しくて酒屋を探したのですが、本当に少ししか店が存在しません。
パブに行くと少しは置いてあるのですが、これでは日本の田舎にあるオーセンティックバーの方が遥かにスコッチの種類があると驚いたものです。

何冊かウイスキーの本を読むと、歴史的にロンドンでは労働階級はビールとジン、貴族階級はワインやシェリー、ブランデー、ラムを飲んでいたようです。スコットランドは密造酒時代では数百から数千もの小さな蒸留所があり、小さな島でも隠れるようにして製造していたそうです。1823年に、かのグレン・リベットで有名なジョージ・スミスの密造酒蒸留所が初の政府公認蒸留所に指定されたという話は有名です。

ロンドンにはウイスキー蒸留の伝統がほとんどありませんでしたが、19世紀の前半ロンドン市街に少なくとも6つのウイスキー蒸留所があったそうです。スコットランドとの競争とウイスキーの価格の劇的な暴落により、ほとんどすべてが廃業しましたが、ロンドンのリーバレー蒸留所は1903年まで残っていました。

Bimberビンバーは100年ぶりのロンドン・ウイスキー蒸留所!?

テムズ川から3kmほど、ロンドン市街のノースアクトンという地区に蒸留所があります。女王陛下の住むウインザー城からも車で15分位というロンドン中心街から本当に近いところにあります。
ビンバー蒸留所で最初に初留された一滴は2016年5月26日、そこから3年後の2019年9月にビンバー初のシングルモルトウイスキー(The First)をリリースしました。1,000本の手書きナンバー入りボトルの限定リリースは、わずか3時間で完売したそうです。

創作的なクラフトジンなども作っているようですが、気になるのはその外観。都市部にあるので仕方ないですが、住宅街と工業地帯を足して割ったようなエリアに突然出現します。ストリートビューで本当に合っているのか、なんども拡大して確認してしまったほどです。

気になるビンバー蒸留所のウイスキーの味わい、美味しい?

まだ少量しか流通していないのですが味わいが気になり、ACORNさんとAloha Whiskyさんの主催する試飲イベントに参加してみました。バーボンカスク、リチャーカスク、ポートカスク、ヴァージンカスク、シェリーカスク、ジャンパニーズエディションを飲ませていただきました。

正直、ビンバー蒸留所は流行りのウイスキーブームに合わせて急ごしらえされたイロモノだと思っていましたがグラスを手に取ると、その芳醇な香りにうっとりしてしまいました。

シングルカスクリリースの「エクスバーボンカスク#8」を飲んだのですが、アメリカンオーク主体でフルーツとスパイスが合わさったような香りで、クラシックな良質のスコッチを彷彿とさせます。バーボン樽ですが、セカンドフィルのシェリーカスクのような甘い香りが出ているのが驚きです。新樽にありがちなバニラ香も強くなく、「これバーボン樽だな」とすぐに判断できないようなトロピカルな一面もあります。
たった4年しか熟成していないと思えないほどの完成度で、樽が小さく気候の影響もあるためか7~8年の熟成感がありました。

2本目のリチャーカスクはアメリカンオーク樽をリチャー(焦がして)熟成したもので、度数は57.9%・303本生産されたものです。
やや上級者向けの味わいで、ピート臭ではなく、焦げ?の香りが強烈でした。先ほどのバーボンカスクと比べると非常にドライで荒っぽいです。ただし、アルコールの質が悪いかというとそうではなく、短熟のブナハーブンのように強烈な個性を持った1本です。

3本目はヴァージンカスクです。アメリカンバージンオークのシングルカスクで熟成させたもので、摘みたてのりんごのような香りがするようです。確かにフレッシュな果実の香りがあり、非常にエレガントです。
短期間でここまでエレガントなウイスキーはなかなかありません。余韻が長く、飲み終わったあとに喉から華やかな香りが戻ってきて、技術の高さを感じさせます。
ただ、厳しく評価するとボディの厚みがすくなく、アルコール度数こそ57.8%ありますが、ちょっとあっさりとした味わいです。年数を考えると素晴らしいウイスキーです。

4本目のポートカスクもまた難しいボトルです。#43 ポートカスクはアルコール度数は58.4%。
味わいですが、洗浄液や薬品のようなエステル感が出ていました、昔のニッカのジャパニーズウイスキーのボトルを抜栓したときの「うわ」という感じの独特の香りです。飲んでみると味はいわゆるダシ感と呼ばれるもので、カツオや昆布というよりは宗田節の混合節、それも少し酸化したようなダシです。玄人向けのボトルだと思いました。

シェリーは一番人気!試飲している方々から最も評価が高いようでした。ただ、ビンバー蒸留所自体はバーボン樽が主流なので変わり種の扱いになってしまうようです。
実際に飲んでみると、クリーム系のシェリーでオロロソというよりはペドロヒメネスのような干しぶどうも隠れています。昔のマッカランのカスクストレングスのような、コレぞ!王道!という味わいです。複雑性はないのですが、日本人にとってはこの味わいは分かりやすい美味しさといえそうです。

先ほどのシェリーが一番と思ったのですが、最後のジャンパニーズエディションもまた素晴らしい1本でした。
完売品で入手不可能のようですが、カスクストレングスのマッカランを思い出させるボディの厚みと甘い香り、パワフルで湧き上がるアルコール感があるのに不快ではない、非常に完成度の高い1本です。

いずれもシングルカスクということもありますが、最近レビューしたアイル オブ ラッセイ蒸留所よりもレベルが高いのでは?とちょっと動揺してしまいました。

唐突なロンドンの本格的なウイスキー蒸留所で驚きの連続でした。ロンドンサイコー!女王陛下バンザイ!という気分になるのに十分なウイスキーです。

調べてみると原材料の大麦は、単一農場で栽培された英国産大麦で、二条大麦の品種コンチェルトとローリエイトを使用しているそうです。フロアモルティングは大麦を72時間かけて開放型の水槽に浸して発芽を促し、約5日間床の上で発芽をコントロールし、デンプンから麦芽糖へと変化させる「グリーンモルト」という手法を取っています。他にもオープントップの木製ウォッシュバックでの発酵、2台の小型銅製ポットスチルによって蒸留されたニューポットを最高級のアメリカンオークやシェリー樽を厳選して詰めています。

ロンドンは夏の気温が高いため、蒸留したスピリッツが樽から風味を出すのに短い時間しかかからないそうです。スコットランド北部の厳しい寒さだと3~4年熟成のウイスキーは色も薄く、香りも味わいも荒々しいものが多いですが、その点ではロンドンで貯蔵されたウイスキーは原酒が良ければ短時間で素晴らしいウイスキーができるという一つの証明になったといえそうです。

日本ではまだ流通量が少ないですが、もしバーなどで見かけたら是非とも挑戦してみてください。きっとその完成度の高さに驚くはずです。

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