【試飲メモ】心から美味しいと思える日本ワイン、グレイスワイン中央葡萄酒「キュヴェ三澤」

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これほどまでに飲み手の理解を求める飲み物はワインしかありません。茶もワインと同じくらいに難読なカテゴリですが、ワインは一期一会そのボトル1本でストーリーが完結しているので同じ生産者の同じヴィンテージのボトルを開けても違うものが入っているのです。

初めて飲んだ感想は、シャバシャバでまずい!

もう6年以上前になりますが、初めて某ワインバーで中央葡萄酒グレイスワインを飲んだとき正直いってつまらないワインだと思いました。「シャバシャバで薄くて味がない」「なんか水っぽいシンプルすぎるワイン」そんな感想が出てきました。そこからワインにどっぷり浸かり世界各国のワインを色々と飲んでいくうちに、白ワインについても少しずつ理解ができる箇所が出てきました。

20代まではシャルドネの濃い味付けのワインや果実味が溢れているようなワインが好みでした。とてもジューシーでコクがあり、飲みごたえがったためです。特にアメリカの白ワインなんかは果実感が強く、新樽の香りも効いているためにヴァニラのような香りが漂ってきて、それが”大人だな”と感じたほどです。

甲州のワインには、四季折々の地の野菜を食べている人しか正しく感じ取ることのできない感覚にミネラルがあります。ゴボウやほうれん草など土から直接出てくる野菜には土特有のミネラルを含んでいます。シンプルな味付けで野菜をしっかり食べている人には、グレイスワインのミネラルもすぐに感じ取ることができるはずです。

ワインや食への理解が、「甲州ワイン」の理解につながる?

しかし30歳になってから急に食の好みや、味覚の変化が起こってから何故か強烈な味わいの白ワインよりも繊細でぶどう本来の味わいがストレートに反映されているワインが好きになってきました。2021年(今年)の夏には、あのとき飲んだグレイスの白ワインが忘れられずに毎晩毎晩思い起こしてはついに酒屋で買いだめをしてしまいました。連日の暑さで気が参っていたのと、思いを馳せて久々に飲んだグレイス甲州は身に染みる味わいでした。

写真にはありませんが、鳥居平のプライベートリザーブを4000円ほどで購入して飲みました。バックビンテージではなく最新ビンテージでしたので熟成などは感じられずにフレッシュ感が強かったのですが、それでも土壌から湧き上がる力強いミネラルは心を揺さぶる味わいです。
2,000円ほどで買うことのできる手頃なグレイス甲州は入門向けのため、やや造りが量産的でアルコールのアタックがきつく感じます。中級ラインナップの村名のついた、鳥居平や菱山は特定の村の葡萄しか使っていないのでテロワールを感じ取ることができます。

冒頭の写真は実際にグレイスワイナリーに見学に行ったときの写真です。
ある秘密のバスツアーで甲州の菱山と鳥居平の畑を実際に散歩して、ぶどう畑の仕立てや土壌について学ぶことができました。日光の当たり方や傾斜などが違い、それが葡萄作りに影響することなど解説してもらいました。

グレイスの白ワインは、とにかくドライで甘みが少なく酸度が高いのが特徴です。今までの甘口国産ワインとは真っ向から異なる仕上がりになっています。香りからしてステンレスタンクで醸造していると分かる鋭い立ち上がりで、口にふくむとキレのよい酸味と香りが絶妙なバランスで仕上がっています。
飲み干しあとに喉から少し戻ってくる香りはグレープフルーツのような柑橘系の果皮みたいで、普段飲んでいる白ワインとは全く異なるものです。

グレイスの赤ワインは世界品質

しばらく白ワインばかり連続して飲んでいたのですが、入門のグレイス甲州より上はなかなか強気な価格です。輸入ワインを買えるような高価な価格設定ですが、それでも満足できるような本格的な仕上がりです。赤ワインはあまり飲んだことがなかったので、メルロを入手して飲んでみることにしました。

メルロは滑らかな舌触りで、確かにメルロー品種の香りがあるのですが、それを支える味わいが一瞬にして日本の土壌であるということが判断できます。「これはジョージアのワイン」と当てるのは難しいことですが、日本に生まれ育って日本の野菜や果物を食べてきた人にとっては「海外のワインのような香りがするけれど、日本で確かに食べたことのある何かが入っている」そんな風に感じ取れるはずです。
凝縮感があるのに、アメリカワインのように闇雲に濃く作ってあるわけではありません。丹精込めて作られた葡萄から生まれたワインであることを、ワインを通して感じることができます。

キュヴェ三澤は日本を代表するワイン

最後にキュベ三澤の2015年を飲んでみました。実はキュヴェ三澤は某ワインバーで、ブラン(白)を飲んだことがあるのですが衝撃を受けた覚えがあります。鳥居平や菱山は、グリ系品種を思わせるような香気ですが、キュヴェ三澤の白ワインに関しては、シャルドネ品種で水はけの良いところで作られているためか、涼しい気候で凝縮した力強い白ワインの特徴が反映されています。品種が違うということもありますが、甲州鳥居平・菱山とキュベ三澤は全くの別物です。

話を赤ワインに戻しますが、セパージュはカベルネ・ソーヴィニヨン55%、プティヴェルド28%、メルロ17%という構成で完全なボルドースタイルになっています。
コルクを開けて最初のグラスに口をつけて分かりました、これは日本のワインとして一つの完璧な答えになっていると。余り長々と褒めると、神の雫のように”アレ”な表現になってしまうので割愛しますが、それにしても信じられないほどに豊かな果実の強さが反映されています。実際に昨年から今年にかけてシャトー・ラトゥールやシャトー・パルメなどの本格的なボルドーを自宅で飲んでいますが、現地の格付けワインに劣らない品質とブレンド技術だと思います。
厳しく評価するなら樹齢が若いためかボルドーの1級から3級までのワインと比較すると底から湧き上がる力強さで劣ってしまいます。ただ、これは今後20~30年グレイスが今のように造り続ければ更に素晴らしいワインに変化していくのではと思えます。

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