最近のウイスキーブームは凄いですよね!戸棚に飾られた30年近く経ったような国産ウイスキーまで開封され、一大ムーブメントになっています。そこで気になるのが国産ウイスキーの賞味期限です。「お前が生まれた頃に買ったやつだぞ?本当に飲めるのか?」とパパにいわれると、どんなに貴重な国産ウイスキーでも怖気づいてしまいますね。
平成二桁ならまだしも、下手すれば昭和末期のウイスキーに埃がかかって放置されているようなものさえあります。
国産ウイスキーと書きましたが、輸入のスコッチでも同じことがいえます。今回は飲めるかどうかの見分け方と、判断方法について紹介します。
古酒ウイスキーを飲むコツとは?
古いウイスキーが発掘された場合に最初にすることは以下の通りです。
- 立てて保管してあったか、寝かせてあったか
- 日差しが当たっていたか
- 液面の高さが下がっているか
- 封印のキャップの素材は何か
- 銘柄とヴィンテージは何か
- 特級や雑種の表記があるか
これらが飲めるかどうかのヒントになります。
ウイスキーの保管方法は重要!
ウイスキーは蒸留酒ですので醸造酒であるワインと比較すると保管は簡単です。
ただし長時間にわたって直射日光に当たっていると中身が変質していることがあります。
日差しがあたるような棚に毎日数十年間も放置されているなら、飲まずにそっと酒買取業者やヤフオク、メルカリで「犠牲者」を探すのをお勧めします。逆にいうとヤフオクやメルカリの古酒は、どんな保管状態だったか分からないということです。怖いですね。
また絶対に”アカン”保管方法は、横にしてあったウイスキー、これは一発アウトです!
横にして数年以上保管すると、キャップの素材の香りがウイスキーについてしまうことがおおいです。
もしも、飲もうとしているウイスキーが直射日光に長時間露光したり、横にして数十年保管してあったならばキャップを開ける前に売却するのをお勧めします。奇跡的に美味しく飲める場合もありますが、キャップを開ける場合は失敗を覚悟しましょう。
液面の高さが下がっているか
ウイスキーのボトルは、上が細くなっていますが上部をネック(首)、少し下がって太くなっている部分をショルダー(肩)と呼ぶことが一般的です。
ウイスキーマニアの中では、こんな話が出ます。
「このヤフオクのタリスカーさぁ、80年代のジョニーウォーカーラベルだけどショルダーまで下がってるんだよね…」
「さすがに肩より下はアカンのちゃう?」
いくら貴重なウイスキーを発見しても、開けるのを躊躇する理由のひとつがコレです。
ネックより下の液面ウイスキーはヤバい可能性高いです。
さてアルコールや水分や様々な成分が混ざったウイスキーですが、最初に揮発するのは何でしょうか?
この答えは中学生でも分かりますね。キャップの隙間から、アルコールが最初に揮発するのです。
英国のスコッチウイスキーの法律で「最低でも40%の分量のアルコール強度を有するもの」と規定されていますが、これよりアルコール度数が下がるとウイスキーが劣化する可能性があるのです。
高いアルコール度数であれば菌や微生物が繁殖することはないですが、液面つまりアルコール度数が下がったウイスキーは大きく劣化していることもあります。
ウイスキーマニアの勇者は、液面下がってもったいない!という理由で、同一銘柄の現行カスクストレングスやハイプルーフを足して、ソレラシステムのようにして度数が下がった貴重なウイスキーを救出することがありますが、うまくいった例は少ないです。
イメージでいうと貴重な古い白州18年が発掘されて、液面が下がっていたら、アルコール度数58%の熟成前のニューポットを足して度数をあげようという目論見です。
キャップの素材は何か?
コレは開栓して飲もうか判断するときに役立つ見分け方です。
科学的根拠はないのですが、古酒ウイスキーを開けるときにキャップの素材が以下のような順番で劣化しています。
↑飲める
コルクのキャップ
プラスティックのキャップ
アルミキャップ
ガラスキャップ
↓飲めない
一番安全なのがコルク製です。ウイスキーにニオイが移りにくく、1980年代の流通ボトルを開けても「あれ?すぐ飲めるじゃん!」ということが多いです。
次にプラスティックのキャップ 、アルミキャップ、ガラスキャップです。これらヤバい傾向にあります。
プラスティック製は銘柄によりますが、バランタインの1980~1990年代は飲めるけれど、シーバスリーガルの同年代はアウト!といった具合にキャップの製造元によって少しつづ異なります。ウイスキーマニアは銘柄によってのリスクに詳しいので、古酒なのに流通価格が安いウイスキーは危険ということもあります。
バランタインは高いのに、同じ年代のシーバスリーガルが現行以下の値段で買えるというのは、そういうことです。
アルミは経験は少ないのですが、隙間から揮発していることが多いです。立ててあると飲めるのですが、寝ているとプラと同じようにだめですね。アルミキャップの裏についているプラスティック部分が悪さをするみたいです。
ガラス製コレは安全では!?と思うのですが、すりガラスに蝋引きしてあるのであれば究極にコンディション良いと思いますが、実は国産ウイスキーのガラスキャップのほとんどに緩衝用のゴムパッキンが付いています。
このゴムパッキンが激アカンのです。
ガラスキャップは、コルク+ゴムパッキンという構成になっていてゴムパッキンのニオイが強烈にウイスキーに染み付いていることがあり、とても飲めないです。保管状態にもよるので一概にはいえませんが注意が必要です。
銘柄とヴィンテージは何か?
「あれ?これ山崎じゃないな……軽井沢?の21年、まあ飲んでみよう!」
止めはしませんが、あまりに貴重なウイスキーだと後悔するかもしれません。
当時2~3万円のウイスキーが50万円位に高騰していることもあるので、相場を見てから飲むといいですね。
保管状態が原因で、あまり美味しくなかったうえに未開封なら数十万円で売れた!ということもあるのです。
同じ銘柄でも発売時期によって全然値段が違います。オールドボトルとラベルを見比べて、いつの時代か特定すると楽しいですよ!
ウイスキー特級や雑種の表記があるか
もしラベルに「ウイスキー特級」と表記があれば1989年より古いボトルの可能性があります。
酒税法の改正前は、品質に合わせて特級表記がされていました。輸入ウイスキーの場合はY(横浜)やT(東京)、K(神戸)といった具合に通関した税関の場所が書かれています。
古酒の場合は他にも会社名や住所で、大まかな時代を特定する方法もあります。
サントリーアライド株式会社表記、大阪市北区堂島浜2丁目1-40というようにラベルに書いてあります。
「堂島浜通2丁目」 と書いてあれば1979年以前、「堂島浜2丁目」と書いてあれば1979年〜1989年というように住所で判断できることもあるのです。
ちなみに写真のように180mlの小さなボトルは熱劣化や品質劣化の影響を受けやすく飲めなくなっていることの方が多いです。遊びで挑戦するのも良いですが、きっと美味しい!と思ってあけるとがっかりします。
飲めるかどうかの嗅覚での判断方法
上記のように事前知識があっても、実際に飲めるかどうかは嗅覚と味覚で判断するしかありません。
グラスに入れて浮遊物がある場合は「危険」ですので飲まない方が良いと思います。
コルク片など無害なものもありますが、液中に浮遊物が多くあると飲めなくなっている可能性もあります。
次にグラスに鼻を近づけて状態をチェックします。
甘いシェリーのような香りや、華やかな香り、樽の木の香り、このように「わ!美味しそう」と思える香りが出てくるのであれば飲める可能性が高いです。
飲めないウイスキーの場合は、「う、臭い!なんだこれ」という香りがすることがほとんどです。
判断が迷うこともあります。超熟のシングルモルトウイスキーの古酒では、「あれ?あまりニオイがしない」とグラスに入れてもニオイが立ってこないことがあります。
写真のグレンモーレンジ18年は国分株式会社 / 貿易商 株式会社 野沢組時代のものですが、開けてから1年以上経っているのにまだ香りのピークが来ません。コレは傷んでいるのではなく眠っているという表現がぴったりです。
ニオイがしないからといって捨ててしまわずに、開封して数ヶ月放置してみると、だんだん良い華やかな香りが広がっていくウイスキーも存在します。
オールドボトルはヒネ臭といって、キャップ臭やコルク臭が悪さをして濡れたダンボールや雑誌、カビや湿った部屋、物置や押入れのような臭いニオイになっていることがあります。
このヒネ臭がすると、「なんだ!飲めないやつじゃん!」と早々に台所でこぼして捨ててしまう人が普通です。ところがウイスキーによっては、開栓直後にヒネ臭がしても、コルクを新品ワインの余っているものなどに交換して、半年から1年ほど放置すると、ヒネ臭が軽減して逆に良い香りが広がってきて飲めるように変化することもあります。
ヒネ臭の軽減と反比例するように、華やか香りが広がるので、「あのときなんで捨てようとしたんだ!」と反省してしまうほどに見違えます。必ず復活するわけではなく、数本に1本以下の確率ですが原酒が優れていると奇跡が起こることもあるので、捨てずに数ヶ月は根気強く待ってみるのも得策ですよ。
上記の鑑定方法や、実際に自分の嗅覚で飲めるか判断するのは経験を積むほど慣れてくるので、積極的にいろいろな古酒を開けるのも勉強になります。参考にしてみてください。
また数十年前のウイスキーを飲むのは自己責任ですので、常にリスクがあることを理解して楽しんでくださいね。