久々にハズレの本を買ってしまいました。ハズレといっては失礼なのですが、実際に自分の思っていた内容と違い満足度が低かったのは事実です。
「東京建築散歩」という本なのですが、内容は東京の美しい建築を散歩しながら撮影したというものです。アイデアは素晴らしく、きっと美しい建築物が写真とともに紹介されているんだろうなと期待して本屋で中身をあまり見ずに買ってしまいました。
帰って読んでみるとウィキペディアで知れるような建物の”概要”に、インスタグラマーのようなフワフワ写真が貼り付けられていてガッカリしてしまいました。
写真を見れば分かることを1ページに10行ほど書いて、反対側は写真が紹介されています。
その写真を見たときに、この人とは友達になれないなと思ってしまいました。
美的感覚というのは人それぞれですが、この本を買った人は「知っている建物のおさらい」をしたいのではなく、「新しく知りたい」わけです。
なのに一例ではエルメスを紹介するときに、この写真はありえない。全景が省略されているどころか、住所さえ出さない。銀座ということさえ、実際にエルメスの建物を知らないと分からないというお粗末さ。
晴海通り云々浸るのも結構だけれど、その建物の全景が1カットと、住所が載っていても良いのでは?と思ってしまいました。
例えば筆者撮影の一例では、手前が「OKB大垣共立銀行郭町ビル」その左奥が「リッチモンドホテル」このような全景が一枚あった上で、雰囲気重視のアップや俯瞰、仰望が来るのは理解できます。
美的感覚というのは人によって異なるのだと実感しました。
著者は学校の写真の例も挙げていますが、とても「ひと目見てみたい」という気持ちが一ミリも起きません。
新書サイズの場合は写真が小さくなりがちなので、雰囲気重視のハイライトが飛んだ絵を小さく載せても何がなんだか分かりません。
ですので左ページいっぱいにレイアウトして少しでも写真を大きく見せる工夫が必要です。
またパースがあっていない歪んだ写真が多いのも良くない原因の一つです。
必ずしも建築写真用のシフト撮影をする必要はありませんが、はっきりした外観の写真とのメリハリが欲しいものです。
東京シティビューの写真は、記念写真をしている老夫婦に目が行き、何がなんだか分かりません。
人間の目はコントラストが高いところに先にいき、よくみると上部の鏡?のような部分にごちゃごちゃと景色?のようなものが写っています。ちんぷんかんぷんです。
みんなが見たいのはこんな写真です。
https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_1922/ より引用
おお!行きたい!見てみたい、となります。
これではガイドブックだよ、と反論されるかもしれませんが、写真をみて「行きたい」とならないのであればそれは意味のない建築散歩本になってしまいます。
つまり静岡県散歩といえば
この写真を「富士山」と言い切るよりも
これが載っていた方が分かりやすくて良いですね。
行ってみたい気持ちになるかもしれません。
普通すぎて物足りないのであれば
このように、「原型がなにか」「何を伝えたいか」を考えた写真というのが最終的に美につながるのではと思いました。
そんな訳で、本を衝動買いするときは「中身をちゃんと見る」ということもまた大切ですね。