ビタミンDは日光などの紫外線照射によってビタミンD活性を発現して、血中のカルシウム濃度を高めると言われています。厳密には代謝経路などがあるので、細かな代謝が気になる人は下記の薬学用語解説も読んでみて下さい。薬識 – 薬学用語解説 – 日本薬学会
今まではこのように、「カルシウム+ビタミンDを摂取して、外で1日15分程度日光を浴びるのが良いよ!」と言われて来ました。しかし最近になって急に「ビタミンDが花粉症に効く!」という話題が急上昇しだしたのです。
ビタミンDが花粉症に効く可能性は…?
「花粉症がビタミンDで治る!」という本が売られていたりネットで話題になっていますが、実際に文献を検索してみてもビタミンDと花粉症の関連性を指摘するものは見当たりません。
免疫異常が原因の可能性がある、多発性硬化症とビタミンDの関連性を指摘する文献では、「自己タンパク質と異種タンパク質の識別に必要な遺伝子(マーカー)のプローモーター部分に遺伝子の発現にビタミンDが必要」という程度の報告であって、花粉症に効くという研究結果はネット上では見つからないのです。
ビタミンD受容体がホルモンの一群であることから、「免疫システムのバランスが崩れて花粉症になる」と紹介するサイトもありますが、肝心の花粉症の原因となる免疫グロブリンEや肥満(マスト)細胞との関連性については触れられていません。つまり結果的に飲んで花粉症が改善された。という人は居るかも知れませんが、なぜ改善されたのか分からないのです。
東洋医学の漢方薬のように、「何故か分からないけど効く」という作用機序のはっきりとしない薬もありますが、安直にビタミンD=花粉症改善と楽観しない方が良いと言えます。
ビタミンDの過剰摂取は危険!
医師・薬剤師や栄養士でなくとも、生理学などを少しかじるとビタミンDの過剰摂取が良くない事は分かります。
学生のときにビタミンDAKE(ダケ)と覚える人が多いのですが、ビタミン D A K Eは脂溶性ビタミン、ビタミンB Cは水溶性ビタミンです。水に溶けるかどうかで分けられているのですが、脂溶性は水に溶けずに尿で排出されず過剰摂取すると体内に蓄積します。
人気のあるビタミンCは水溶性なので、一時的に過剰摂取しても吸収できない分は尿で出ると言われます。しかし脂溶性ビタミンは肝臓で代謝されるので、効能よりも肝機能障害、腎臓障害などの副作用が出てしまうことがあるのです。
ただでさえサプリメント好きな人達は、プロテインの過剰摂取などで肝臓に負担が掛かっているので、追い打ちをかけることになります。
ツイッターなどで「花粉症に良い!」とリツイートされているもので例えばこのような物があります。
「花粉症には1日5,000IUの摂取が効果がある。」
「自分は1日15,000IU摂取している」
「花粉症を治したい人はビタミンDを10000~20000IU摂取しましょう。」などなど情報は錯乱しています。
厚生労働省の運営する「統合医療」情報発信サイトでは、ビタミンDの海外情報で次のように紹介されています。
ビタミンDの必要摂取量は?(引用)
ビタミンDの必要摂取量は、年齢によって異なります。1日当たりのビタミンD所要量は年齢によって異なります。下記は、米国食品栄養委員会(米国の専門家グループ)による年齢別1日当たりの平均推奨摂取量です(国際単位IUで表示)。
ライフステージ 摂取推奨量 生後12カ月 400 IU 小児1-13歳 600 IU 10歳代14-18歳 600 IU 成人19-70歳 600 IU 成人71歳以上 800 IU 妊婦および授乳婦 600 IU ビタミンDが害を及ぼす可能性はないのですか?(引用)
血中ビタミンDの量が多くなりすぎた場合、有害となり得ます。毒性の兆候には吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘、脱力感、体重減少などが挙げられます。そしてカルシウムの血中濃度を上昇させることにより、過剰のビタミンDは、錯乱、見当識障害、心拍リズム異常を発生させることがあります。また、過剰なビタミンDは腎臓を損傷するおそれがあります。
ビタミンDの安全な上限は、幼児であれば1日当たり1,000~1,500 IU、1~8歳の小児であれば1日当たり2,500~3,000 IU、9歳以上の小児、成人、妊娠中あるいは授乳中の女性(十代女性を含む)であれば1日当たり4,000 IUです。ビタミンD毒性の原因は、ほぼ例外なくサプリメントの過剰摂取です。身体は自身が生成するビタミンD量を制限することができるため、日光への過剰曝露がもとでビタミンD中毒が発生することはありません。
必要摂取量を遥かに超える量は危険!
このように成人男性で一日当り600IUで十分と言われている摂取量を8倍から25倍摂取するのは危険と言わざるを得ません。ビタミンD中毒の閾値(最小限の発症する量)は10,000~40,000 IU/日と言われています。
参考までに血清25というのはビタミンDの代謝後の生成物です。
中毒を生じさせるほど高用量のビタミンDを食品から摂取する可能性は低い。むしろビタミンDを含むサプリメントの大量摂取が中毒の原因となる可能性が非常に高い。
許容上限摂取量を上回るビタミンDの長期摂取は健康に有害な影響を及ぼすリスクがある[1](表4)。ほとんどの報告で、ビタミンD毒性発生の閾値は10,000~40,000 IU/日および血清25(OH)Dレベル500~600nmol/L(200~240ng/mL)となっている。摂取量が10,000 IU/日を下回る場合には中毒症状は発現しにくいが、米国食品栄養委員会(FNB)は、全米調査データに基づく最新科学、観察研究、臨床試験の結果が、ビタミンD摂取量や血清25(OH)Dレベルが低値であっても長期間にわたる場合は有害な影響を及ぼす可能性があることを示唆している点を指摘した。(一部抜粋)
このように一日5000IUでも”やや過剰摂取”、先程のツイートのような一日15,000IUは中毒症状が出てもおかしくない過剰摂取です。
たくさん飲めば効果がある!という気持ちは分からなくもないですが、基準値の1~2倍程度に抑えた方が良いのではと思います。
ちなみに記事に出てくるIUというのは国際単位で脂溶性ビタミンに用いられます。ビタミンD(コレカルシフェロール)の場合1 IU =0.025μgです。
厚生労働省の公開する日本人の食事摂取基準では、18歳から70歳以上まで5.5㎍/日が目安量となっています。
米国食品栄養委員会の600IUを換算すると15㎍、厚生労働省では「そんなにいらんぞ」と言っているのです。
耐容上限量(過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量は)100 ㎍、=4000IU 、つまりアマゾンやiHerbでアメリカから取り寄せる「[海外直送品] ナウフーズ ビタミンD-3 5000IU 120ソフトカプセル」などは既に過剰摂取の危険性があると言っても過言ではありません。
ビタミンDを強烈に推し進めるサイトでは、最新のデータでは基準値が違う!と論文へのリンクを根拠に、新基準について力説していますが、こういった文献もカナダのアルバータ大学の教授とその研究チームが出したデータで、副作用については細かく研究なされていません。
日本人は海外の文献サイトのリンクを貼ってあると無条件に「すごい!信頼できそう!」となりますが、どの学術誌・ジャーナルなのか、誰が研究しているのか、誰が査読・検証しているのか、内容は信頼できるのか、などを考えないと下手すれば一端の大学生の研究結果を鵜呑みにしてしまう可能性もあります。
個人的にはビタミンD大切だと思いますが、安易なネットの情報に惑わされずにしたいものです。
ちなみにフェキソフェナジンのようなアレルギー薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)は処方してもらうと安いので、市販のアレグラなんかを高い値段で買うよりも耳鼻科に行って処方してもらった方がきっと安く済みますよ。
他にも薬を飲まずになんとかするのであれば、朝に鼻うがいなどで綺麗にした状態でワセリンを鼻腔内に塗る方法。
コレは(恐らく)副作用無く、物理的に花粉が付着しないようにする低コストで効果的な方法だと思います!
エビデンスはありません!!以上!!