上級者になるに連れて分からなくなっていく現象

「まーた、はっしーのチラシの裏か…」とお思いの読者様すみません。

技術や学問などへの理解度というのは一見相関関係があるように思います。一般的に考えると次のようなグラフになります。
勉強を進めたり、経験を積み重ねるほど理解度が上がるはずです。

しかし実際には習熟度と理解度が比例しないようです。
医師、数学者、料理人、ピアニスト、お茶専門家、ソムリエ、このような専門分野の人にプライベートで話を聞くと職業にしているにも関わらず「良く分からない」という人が出てくるのです。

もちろん技術や知識は、初心者・中級者と比べて遥かに高い水準であり、仕事にしている人ばかりです。しかし終わりのある分野でない限り、生涯の時間を捧げても完全に理解できないことに気づくようです。

初心者から中級者に向かうときは、メキメキと技術や知識が向上して自信が着きますが、ある程度の部分からは自分が何をしているのか、何ができるのかが分からなくなってくるようです。
そして、そこから着実に経験を積むことによって、再び理解度が上がるようですが、それでも中級者にあるような「完全に理解した」とはならず悩みとともに上がり、緩やかなハイプ曲線を描きます。

ダニング=クルーガー効果」というそうです。

これは筆者も経験があり、ダージリンを毎日のように200種類ほどテイスティングしていると、細かなことに気づいたり茶の良し悪しが分かるようになってきますが、同時に分からなくなります。茶葉の品種、茶園の傾向や収穫時期が分かるのですが「美味しいお茶はどれですか?」と言われると、何が美味しいんだろう?と答えを出せなかったりします。

傷んでいる物はどれ、という単純な答えは出せても。美味しいものはどれ?という漠然としたイメージを見つけるのが難しくなるのです。ヴィンテージ、シーズンや収穫ロットを別として考えると茶の種類は無限にありますし、水質や温度によっても味は異なります。ひどい事に飲み手の体調によっても味が左右するのです。
ある有名なウイスキーのマスターブレンダーが仕事の日は、昼食に必ず蕎麦を食べるそうです。毎日同じものを食べることで自分の体調と味覚を確認するというインタビューを見ました。
ちょっと勉強した程度だと「これがウマい!」と言えるのですが、真剣に何千回も飲んでいると良く分からなくなるのです。

ダージリン87茶園【完全版】

とある事情によって、毎日ブルゴーニュを飲んでいます。初めのうちはジュヴレ=シャンベルタンが美味しい!と思っていたのですが、モレ・サン・ドニ、シャンボールミュジニー、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュ。
ボーヌ、ポマール、ヴォルネイなどと毎日様々な生産者、ヴィンテージで飲み続けていると、いよいよ迷いが見えてきました。同一のヴィンテージ、ロットでも中身の味が異なったりするのです。

良く分からなくなってきてからが本番、という考え方もできます。
何かを極めようとして迷走している期間は、意外にも中級者から上級者への壁だったりすので、悩んでいるときは思い出してみて下さい。

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