エレベーターの事例から見る、メールでの説得方法

ビジネス

以前住んでいた高層マンションで、エレベーターに関する問題が発生しました。今回は、そのエレベーター問題を通じて、メールによる説得と問題解決の方法について考えてみたいと思います。

実際にあったエレベーターの問題とは

実は「シンドラーエレベータ」で落下の危険があった…というような重大な問題ではなく、非常にシンプルな問題でした。マンションの居住者の多くは年配の方で、中には杖をついている方や、まれに車椅子の方もエレベーターを利用します。そのためか、エレベーターの開閉速度が異常なほど遅いのです。私はそのマンションに3年間住んでいましたが、ほとんどの住民が乗ると同時に「閉まる」ボタンを押していました。それは若い人だけでなく、年配の方も同様です。しかし、「閉まる」ボタンを押しても、ドアが閉まり始めるまでに1〜2秒のタイムラグがあるのです。

せっかちだと思われるかもしれませんが、30階建てのマンションで、5〜6人がそれぞれ異なる階で降りるとなると、エレベーターが止まるたびに約10秒間も待つことになり、それが積み重なると非常にストレスになります。

マンション管理組合への要望は無視される

住民はみな温厚で、顔を合わせるたびにお辞儀を交わすような人ばかりです。多くの人がエレベーターの遅さに気づいていたものの、誰もクレームや意見を言おうとはしませんでした。そこで私は管理組合に要望を出しましたが、2回とも無視されてしまいました。おそらく、管理組合は「開閉が遅い方が安全だ」と考えているのでしょう。

それが不思議なところです。住民が不便を感じるだけでなく、降りる際には「同乗者に迷惑をかけたくない」という気持ちからか、降りる住民が「閉まる」ボタンを押しながらエレベーターを出る場面も見受けられます。むしろ逆に、これが危険を引き起こす恐れさえあります。

そこでエレベーター会社に直接メールすることに

マンション管理組合が対応してくれなかったため、私は要点を絞ってエレベーター会社にメールを送りました。

「私は○○○マンションに3年間住んでいる○○と申します。毎日2〜3回エレベーターを利用していますが、相談がありご連絡いたしました。固有番号E1234-5678のエレベーターについてですが、開閉速度が非常に遅く、多くの住民が乗ると同時に『閉じる』ボタンを押しています。

また、他の住民に迷惑をかけたくないという気持ちから、降りながら『閉じる』ボタンを押すという実態があります。防犯カメラでも頻繁に確認できると思います。

このエレベーターには赤外線センサーと接触センサーがついており、人が乗り込んでいる途中ではドアが閉じることはありません。そのため、開閉のスピードを早めることができるのではないかと思います。もちろん、私一人の意見だけで決断は難しいと思いますので、マンションの管理組合でアンケート調査を実施していただければと思います。」

このメールをエレベーター会社に送ったところ、わずか2〜3週間後にはアンケート調査もなく、エレベーターの開閉スピードが調整されました!

その後、エレベーターのドアは信じられないほどスムーズに閉まるようになり、以前の遅さが嘘のようです。もちろん、年配の方がゆっくり乗り込む際は問題なく、誰かが「閉じる」ボタンを押したときのみ素早く閉まるようになっています。

具体的に何をしてほしいか、要件を絞って伝える

メールで誰かを説得したいときは、次のポイントに沿って文章を作成します。

  • 自分が誰で、何をしているのか
  • 何の相談をしているのか
  • 何に困っているのか
  • どうして欲しいのか
  • できない場合の代替案

これらを短文で伝えることが重要です。長文になると、要点がぼやけて相手に伝わりにくくなるからです。

また、もし提案が難しい場合に備えて、代替案を示すことも大切です。おそらく、先ほど送ったメールに対しては、以下のようなテンプレート的な返事が予想されます。

「○○エレベーターの○○です。ご相談いただいたエレベーターの件ですが、マンション管理組合との協議の上で決定しており、当社で開閉速度を変更することは難しいです。貴重なご意見をありがとうございます。今後の参考にさせていただきます。」

このような返事が来るかもしれません。そこで、「他の住民も困っているため、実態調査をしてほしい」といった一文を最後に加えることで、「仕方ないな…」と担当者が重い腰を上げてくれる可能性があります。今回、エレベーター会社が迅速に対応してくれたのは、担当者が優しかっただけかもしれませんが、妥協案や代替案を伝えることで、相手の協力を得やすくなります。

問題のすり替えや、相談先を変えることで解決する

不当な問題に対して「なんとかしたい!」と思うことがあるはずです。例えば、田舎で見かける「野焼き」。藁や木を燃やすだけならまだしも、プラスチックゴミを燃やすことで有害物質や悪臭が発生することがあります。

このような場合、直接本人にクレームを言っても効果は期待できません。「私の敷地だ!」「お前に関係ない!」などと言われるかもしれません。また、町内会長に相談しても、「当事者同士で解決しなさい」や「我慢しなさい」と言われる可能性もあります。

このような時は、まず担当する役所に相談しましょう。野焼きは法律や条例で禁止されている場合が多いため、違法であることを強調することができます。

もし役所が動いてくれない場合は、管轄の交番に相談します。それでも解決しない場合は、警察署に相談し、最終的には消防署に通報することも一つの方法です。「○○工務店から煙が出ている」「火事の可能性がある」など、事実を述べて通報することで対応してもらえるかもしれません。実際に煙が出ていて、火事の危険性もあるのですから、事実を伝えることが重要です。

問題を解決するためには、自分が不利にならないように、事実だけを述べることが大切です。

相談先を変える、論点を変える

このように、Aが無理ならB、Bが無理ならC、それでも無理なら少し論点をずらしてDやEに話を持っていくことが重要です。すべての選択肢が正論であり、嘘偽りのない状態で進めることで、一見不可能に思えることも実現できる可能性があります。

例えば、先日のカルロス・ゴーン氏の逮捕でも、最初に突きやすい問題で起訴し、その後に本丸である二回目の特別背任罪を追及するという戦略が取られました。これは、一つ目の問題提起で議論の場を作り、そこで本題に切り込むという効果的な作戦です。

日本人は、直接的に言いたいことを言えない傾向があります。内輪で愚痴を言ったり、遠回しに皮肉を述べるのではなく、もし何か言いたいことがあれば、「何をしてほしいのか」を明確に伝えることが必要です。万が一その場で負けそうであれば、話す場所を変える、あるいは論点をずらすなど、時には積極的に戦う姿勢も求められます。

 

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