ジャズが本当に好きな人は何故か「ジャズ好き」隠す傾向にあります。
普段からひっそり自分の書斎だけで楽しんだり、もしくは休日に珈琲を淹れてレコードに針を落としたり。
とにかく「私ジャズ好きなんですよ!」なんて人は、よほどの初心者か、よほどの玄人の二種類しか居ません。ジャズバーや宿泊施設付きのジャズ会場など濃い空間でマニアと話すと、いかに彼らがこっそりと生きているか分かります。
さてマニアにお勧めのアーティストは?と聴くと「マイルス・デイヴィス」、「ジョン・コルトレーン」、「ビル・エヴァンス」、「キャノンボール・アダレイ」なんかをお勧めされるはずです。そして奇跡のアルバムとして
「カインド・オブ・ブルー」をお勧めされるか、もしくは少し時代がずれデューク・エリントンの「A列車で行こう」をお勧めされたり、デイヴ・ブルーベックのかの名曲(カップラーメンにお湯を注いでいる間に流す曲)をすすめられます。大抵の初心者はピアノ演奏で聞きやすい、耳に優しい「Bill Evans(ビル・エヴァンス)」を愛聴することになるのです。読書や勉強などの作業中に流す人も多く、街中のお店でBGMにされてカフェやホテル、レストラン、バーなどコレでもか!という程使い回しされています。
「Bill Evansのお勧めCDアルバムは?」と検索したり、誰かに聞くときっとこう答えるはずです。
1.Portrait in Jazz
2.WALTZ FOR DEBBY
3.Sunday at the Village Vanguard
4.Moon Beams
5.Explorations
確かに素晴らしい作品で、絶対に持っていて欲しいし、既に持っているべき名盤です。筆者も16歳の時にジャズ好きに教わり、擦り切れるほど何百回も聞き込みました。当時は25EVANSと言って、死後25周年の記念アルバムも出ていたほどです。
本当に聴くべきお勧めアルバム5選
Bill Evansだけで20枚以上のアルバム、レコードディスクも何枚も買ってアナログ環境でも聞いていました。そして今回本当に聴くべきBill Evansのアルバムを厳選してみました。
1.Paris Concert Edition Two
79年にパリのレスパス・カルダンで収録された「パリ・コンサート」の実況盤です。余り流通していないのですが、集大成とも言えるビル・エヴァンスの美しく儚い演奏を表現しています。1曲目の「Re: Person I Knew」ピアノの音が粒になって輝くように聞こえ、それを背後でベースが支えています。
4曲目の「34 Skidoo」速いペースで進行するリズムの中で駆け足のようにピアノがベースを追いかけますが、途中のサビ部分はうっとりするメロディです。
中でも6曲目のNardis、なんと数ある収録の中でも最長と言える17分32秒という長さです。最後には燃え尽きるのを実感できる、聞き手まで汗を握るような表現です。絶対に聞いた方が良い名盤です。
2.Solo Sessions 1
リリカル・叙情的と表現されるエヴァンスの演奏ですが、本作品では特にそれを感じ取ることができます。珍しいソロ演奏の収録でMy Favourite Things / Easy To Loveとつながって演奏されます。この作品の面白いのが、目を閉じて無意識のまま演奏したのではないかと言えるほどにリラックスして一人で子供のように演奏しています。時折ミスタッチがあったり、なんとなく気に入らなかったのか弾き直すこともあります。
マイ・フェイバリット・シングスを弾くことも珍しいのですが、なんとスパルタカス愛のテーマも収録されています。当時アメリカでもスパルタカスの映画が大流行していたので、そのテーマをさらっと弾いてみた感じでしょうか。
とにかく静かに進行する曲なので、真夜中にウイスキーを飲みながら一人で聞いたり、もしくは曇った雨の日の朝に本を読んだり、ひっそりと一人の空間の時に聴くべきアルバムと言えます。
3.Together Again
人気シンガー、トニー・ベネットとの夢の共演作です。トニー・ベネットはグラミー賞の常連で、アメリカで最も歌唱力のあるシンガーと言われるほどです。
それに少々地味で哀愁の漂うビル・エヴァンスが伴奏をするのですから、これほど面白い作品は中々見かけません。The Two Lonely Peopleや、Lonely Girlなど淋しげな歌に驚くほどエヴァンスの演奏が似合うのです。
アルバムは順を追ってドラマのような仕上がりになっているので、どれも似た傾向の曲です。冬のひどく寒い季節に自宅で聴くのにぴったりです。個人的には夜にひっそりと聞いて欲しいアルバムです。
4.WITH SYMPHONY ORCHESTRA
ジャズマニアからは、また変わったCD持ち出して!と怒られてしまいそうですが、これが良いんです。Bill Evansとオーケストラの共演、クラウス・オガーマンというドイツの指揮者とフィルハーモニーが合わさった”迷盤”中の迷盤です。
ジャズなのにオーケストラ、なんか割とノリノリで演奏して絶好調です。
中でも特筆すべき曲は、フォーレのシシリエンヌと並ぶ「パヴァーヌ」です。スペインの影響を受けた行列舞踏で16世紀のヨーロッパで流行したそうです。
本当にリラックスして癒やされるアルバムです。一人で部屋を暗くして聴くのがお勧めです。
5.Blue in Green
地味なアルバムですが、じっくりと対峙するには最高の名盤と言えます。
先ほどのThe Two Lonely Peopleのソロ版が入っています。What Are You Doing The Rest Of Your Lifeなんかもアレンジされていて聞きやすいです。
やはり最後に聞きたいのは「Blue In Green」ですね。こちらは数人でキューバ産のシガーとスコッチウイスキーを嗜みながら聞きたい一曲です。もちろん男だけで時計も携帯も見ずにずっと話し続けるときに。
まとめ
数あるアルバムの中から本当に聴くべきアルバムを選んでみました。
他にも素晴らしい演奏は数多くありますので、自分だけのベストアルバムを選んでみて下さい。
これらはアマゾンの通販だけでなく、プライム・ミュージックで無料で聞けるものも多いので、作業中に流して「これは!」と思える曲を見つけて下さいね!