こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。今日はこれからスーツをオーダーしようとお考えの皆さんに、ぜひとも知っておきたい生地ブランドを3つ、紹介したいと思います。
なぜマニアックなナポリ仕立てばかりを扱う当店が、今更になってこんな記事を執筆するのか。
大人になれる本の良さとは、誰もが最も簡単に、ある分野の深部に到達できる構造にある。
by 大人になれる本 編集部
つまり、今はまだ「オーダースーツの生地って、どうやって選べばいいのかなあ?」と迷っている皆さんを、読み終わった頃には「世の中には二種類の布しか存在しない。女性に貸すための純白のハンカチか、ランバルディ在庫のビンテージ生地である」という境地に達しているということです。
うんうん、そうだよね、と思った人はすでにこのトンデモブログを読みすぎなので注意しましょう。
さて、早速いきましょう。
DORMEUIL ドーメル 宝石のようなモヘアと多彩なコレクション
DORMEUIL ドーメルは言わずとしれたフランスの高級服地ブランドで、オーダースーツを仕立てる人なら一度は検討したことがあるだろう有名な生地です。
フランスに拠点を置くブランドではありますが、英国よりハイクオリティな毛織物を輸入する形態を最初から取っており、いわば英国生地の輸入ブランドのような形で1842年に設立されました。
DORMEUIL ドーメルの生地の最大の特徴は、非常に多彩なラインナップを揃えていながら常に高品質を保証するブランドであることでしょう。例えばLoro Piana ロロピアーナにしろ、Ermenegildo Zegnaエルメネジルド・ゼニアにしろ、生地メーカーは様々なグレードの生地を生産しています。
それに対しDORMEUIL ドーメルはいつも最高のグレードのものを展開しています。
生地商なので、実に多彩なコレクションを持っています。イタリア的な艶やかさを持つ生地から、実に英国的なクラシックな生地まで。驚くべき数のコレクションを展開していながら、どれも例外なくハイクオリティなのも特徴です。
そしてそのDORMEUIL ドーメルの中でも特に注目されているのが、ビンテージのモヘア生地です。Super Brio スーパーブリオやTonik トニックといったブランドラインが有名ですが、それ以外でも多数モヘア混の生地は作られています。
DORMEUIL ドーメルのモヘアは光沢に富み、美しい色合いを持つものばかりです。色合いはコレクション、時期などによって無限と思えるほどバリエーションが存在します。その多様性と美しさは、まるで宝石のようです。
Holland & Sherry ホーランド&シェリー 最高級の英国的ラグジュアリー
Holland & Sherry ホーランド&シェリーの生地を、単に英国的という言葉で済ませることはできないでしょう。
このブランドの生地は英国的な目付けの良さ、仕立て映えするコシの強さを持ちながらも、常にしなやかさや光沢感、滑らかさを兼ね備えています。
英国的な生地といえば重厚で、ざっくりとしている、というのが少し前までの常識でした。確かにそのような生地もありますが、Holland & Sherry ホーランド&シェリーは伝統的な英国スーティングの長所を生かしながら、よりラグジュアリーな生地感を実現しているのですね。
Holland & Sherry ホーランド&シェリーは、例えばDORMEUIL ドーメルや、その他の世界的な生地ブランドに比べれば生地のコレクションは少し限定的と言えるかもしれません。
例えば鮮やかな色合いのサマージャケットが欲しければ、Holland & Sherry ホーランド&シェリーのバンチからは見つからない可能性もあります。
しかし一生着たくなるようなスーツの生地は、きっとHolland & Sherry ホーランド&シェリーにあるでしょう。絶妙な重量感、仕立てたときに美しい立体感を生み出すコシの強さ。そしてずっと着ていたくなるようなしなやかさと、高級感。
ここまで高い次元でバランスを取っているのは、Holland & Sherry ホーランド&シェリーだけではないでしょうか。
ちなみにHolland & Sherry ホーランド&シェリーのビンテージには、また驚くような生地が多々あります。
例えば写真の生地はウールにカシミア、チンチラという最高級の獣毛を混紡した希少なビンテージ生地。
非常に美しい色合い、コシの強さ、そして獣毛ならではの滑らかさが合間って、稀有のエレガンスと極上の仕立て栄えを保証してくれます。
大変珍しいビンテージなのですが、なぜかプロフェソーレ・ランバルディ静岡では色違いで紺、ミディアムグレー、チャコールグレーと色違いでストックがあるんです。
こういった特別な生地でスーツを仕立てるのは、玄人好みの楽しみですね。
Scabal スキャバル 最高級+1のクオリティを常に維持するブランド
Scabal スキャバルもまた、オーダースーツを仕立てるうえで必ずと言っていいほど名前を聞く生地ブランドですね。
DORMEUIL ドーメル、Holland & Sherry ホーランド&シェリーと並んで仕立て服向けの生地では三大ブランドと呼んでも差し支えないでしょう。
Scabal スキャバルは常にDORMEUIL ドーメルと対抗してきた生地ブランドだったため、そのラインナップはDORMEUIL ドーメルを意識したものも少なくありません。
例えばモヘア混ではDORMEUIL ドーメルのSUPER BRIO スーパーブリオと同じクオリティを持つMONTEGO BAY モンテゴベイ、TONIK トニックと同様のTITAN タイタンなどは有名ですね。
しかし生地によってはDORMEUIL ドーメルの品質を凌駕することも少なくなく、両社は昔から競いながら製品開発をしてきたと言います。
個人的には、特にビンテージの生地の場合クオリティだけでみればむしろSCABAL スキャバルの方が優れている場合も多いと思います。
例えば上の写真のSCABAL スキャバルを代表する生地、GOLDEN LEAF ゴールデンリーフ。これは非常に上質なウーステッドの生地です。
SCABAL スキャバルの生地は、SUPER表記で言えば100前後のものが多いです。
しかしそこには原毛の細さだけでは語り得ない、素材自体の良さや織り方の良さがあり、実際に手に取るとその表記からは想像できないほどの手触り、肉感、そしてコシの強さを感じます。
時々ナポリの仕立て屋でSUPER 200’sのような繊細さ極まる生地を使ってスーツを仕立てる人もいるようですが、彼らはそのような生地を好みません。
「単に値の張るものが好きなだけだ」と言われてしまうのですね。
生地で大切なのは仕立てたときに美しいことであり、生地のスペックではありません。
そういう意味でも、繊細さや光沢でごまかすことをせず本当の意味でのクオリティ高さを追求しているSCABAL スキャバルは、オーダースーツを極めた人に人気なのです。
通はSCABAL スキャバルを選ぶ、ということで当店でもSCABAL スキャバルのビンテージ生地は常時数十種類ストックしています。
長くなってしまいましたが、生地を知れば知るほど、オーダースーツは面白くなっていくはずです。
皆さんも是非たくさんの生地を手にとって、肩にかけて体験してみてくださいね。
それでは、ご機嫌よう。
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