レンブランドと言えばご存知の通り、ネーデルラント連邦共和国(現オランダ)に生まれた光と影の明暗を特徴とする画家です。肖像画を主体としていますが黒く静まり返った舞台から今にも動き出しそうな躍動的な描写を見せます。この技法はミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオから影響を受けたキアロスクーロ(Chiaroscuro)という技法で、イタリア語で「明-暗」を意味する一方向から差し込む光を光源として段階的な陰影を付け、対象物を浮かび上がせるところにあります。レンブランドはバロックを代表する画家ですが、この時代は細部に渡る描写技法、豊かで深い色彩、強い明暗法を特徴とします。
さてinstagramにおいて主流とする写真はコントラストが低く、全体の光が拡散されているクロード・モネのような印象派のような写真が多く見受けられます。フィルターを用いて色彩に富んでいるところもまた以前のバロック、古典やロマン主義というよりは印象主義のよう表されるべきでしょう。
静物画に対して極端な明暗の対比(コントラスト)を付ける
ここでキアロスクーロを取り入れてインスタ映えする写真を撮影してみます。
他のインスタグラマーと似たり寄ったりの写真ばかり公開していては時代を切り開けません、やはり時代は陰影を取り入れたバロックに回帰すべきでしょう。
実際に作例とともに解説してゆきます。
hashiさん、他73人が「いいね!」しました
otonaweb 山で百合を摘んできました。#サンルイ #saintlouiscrystal #百合
いかがでしょうか…。かなり激シブ、右後ろから差し込む光でわずかに百合を照らし、生生しさを演出しています。カッティングされた花瓶に差し込む光が反射して白を作りだしています。
r12_xxchoさん、他35人が「いいね!」しました
otonaweb #Bohemia #Čechy #chandelier
こちらは静寂を表す息を飲むような透明感が出ています。現代のカラーが反射するクリスタルとは異なり、1980年代のチェコスロバキアのガラスが素朴にも光を反射しています。
lsb201さん、他102人が「いいね!」しました
otonaweb #Figurines
フィギュリンと呼ばれる現代の陶磁器で出来た人形。渋い写真というか、インスタ映えしすぎて引いてしまいます。素焼きの艷やかさが当時のBing&Grondahlの技術力を表しています。柔らかく遠くから差し込む光は肌を照らし息を吹き込みます。
choco__1203さん、他72人が「いいね!」しました
otonaweb #minton #teatime #teacup
ハンドペイントで仕上げられたミントンのティーカップ、全景を写すのではなく薔薇の絵の一部、それも外からの光が差し込む場所で周りに陰影ができるようにして撮影します。紅茶を注いでいる中にも映画のフィルムを切り取ったような静寂を感じられます。
wedewoodさん、他7人が「いいね!」しました
otonaweb 花瓶を買いました!
タイムラインに唐突に現れる光の曲線に畏縮してフォローを解除されること間違いありません。どんな形なのかイマイチ掴めず何を言いたいか分かりません。かなり高度な表現方法と言えます。
saw0__sakさん、他40人が「いいね!」しました
otonaweb 海辺で朝食
他の作品と比べ理解しやすいマシな写真と言えます。外から差し込む硬めの光によりテーブルに濃淡がついています。フルーツや皿の影が立体感を演出しています。
mik__mikさん、他128人が「いいね!」しました
otonaweb #rosegarden
薔薇の花弁が零れ落ちるという叙情的な、哀愁を帯びた写真です。かなりのインスタ映えすること違いないです。
キアロスクーロを用いた写真は受け入れられるまでに時間がかかる
一点透視図法を否定したキュビズムが観衆から避難されて受け入れられなかったのと同じように、キアロスクーロを用いたインスタ映え写真は、すぐに人気が出るとは言い難いのが実状です。
しかし淡くフワフワとした砂糖菓子のような写真に飽き飽きとしてきた民衆が表現方法の次のステージを深層で模索しているのは確かなことです。インスタグラムの時代は貴方の手によってフェルメールやレンブラントのようなバロックに回帰すべきなのです。