【薬コラム連載】春の花粉症対策

薬剤師ライター たんぽぽむし 過去の記事はこちら

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。

こんにちは。少し前から花粉が飛び始めましたね。

花粉症のみなさんは治療を始めましたか?

先日、東京の両国眼科クリニック理事長、深川和己先生の講演会にて、花粉症患者さんにすぐに役立ちそうなお話を聞いてきたのでお伝えします。

 

重症化を防ぐためには、目にもマスクを

当たり前ですが、ひどくならないためには、できるだけ花粉との接触を避けること。

花粉は「飛散する」と表現されますが、真正面から一直線に飛んでくるわけではありません。

スギやヒノキなどの花粉は気流に乗って長ければ100kmも飛んでくるので、自分の目に入ってくるときには、斜め上方から降ってくるわけです。ですから、花粉と接触しないためにメガネが有効なのはもちろんですが、できればメガネの上側にガードがついていて斜め上方からの花粉の侵入を防ぐことができる「花粉用メガネ」がより理想的というのは納得できると思います。

通常のメガネで防げるのは51%、花粉用メガネだと実に92%の花粉が防げるとのこと。ただ、花粉用メガネがない場合には、いつものメガネにつばのある帽子を併用すれば、かなりの効果が期待できるようです。試してみてください。

 

目を洗いたくなったときには

外出後やかゆみがひどくなった時に、目を洗いたくなることがありますよね。

そんなとき、とりあえず水道水で洗う方も多いと思いますが、水道水には塩素が含まれているため目の負担になること、また目の表面を覆っている涙を洗い流してしまうことから、「いつも水道水で洗う」というのはお勧めできません。

涙はただの水分というわけではなく、目の表面を覆って目を保護したり、目に酸素を送ったり、中に含まれるムチンという物質が異物(アレルギーの原因となる花粉など)をからめとって目の中に入らないよう防御してくれたりと、目にとってはなくてはならないものだからです。

ただ、花粉は目に接してすぐにアレルギー症状を起こすわけではなく、目の表面で涙などの液体と接することで花粉の粒が破裂し、中からアレルギーのもととなるタンパク質(抗原)が溶け出し、目の表面の細胞(結膜上皮細胞)の間から目の中に入ってアレルギー症状を起こすため、花粉の粒からタンパク質(抗原)が出る前に花粉を目の上から洗い流すということは、意味があることです。

 

では、何で目を洗えばよいのか?

目を洗う液と言えば「アイボン」が有名ですが、洗眼液を購入するときには必ず「防腐剤フリー」と書いてあることを確かめてください。ベンザルコニウム塩化物などの防腐剤の入ったものを続けて使用すると、目の表面の細胞を傷つけてしまう危険性があるからです。目の表面に傷がつけば、痛くなるだけでなく、花粉なども中に入りやすくなり、アレルギー症状もひどくなってしまいます。

また、カップ式洗眼液なので、目の中ではなく目の周りに付いている花粉や化粧品などを集めて目に入れてしまう可能性もあるため、まずは目の周りを洗ってから目を洗うよう心がけてください。

 

当然のことながら、洗眼に使うカップは清潔に保つこと。

カップ式洗眼液は使い方や回数を誤らなければ、まぶたの裏側まで洗える点でなかなかの優れものですが、今お伝えした注意点をしっかり守って・・・となると少々面倒な気もしますね。

では、もっと手軽に使えるものと言うと、“人工涙液”(ソフトサンティアなどの点眼液)。涙に近い成分で作られていて、これが最もお勧めです。

冷やして使うとより効果的で、目を洗う目的で使用する場合は、1回に10滴くらい目にポトポト落として異物を洗い流すのがよいそうです。1本5mlとすると、片目に5滴ずつ使っても10回は使用できます。1日1回両目を洗うと1本で約10日分。

防腐剤が入っていないものを選べば目の負担も少なく安心して使えます。ただ、開けてから10日以上経ったものは使わないよう注意してください。

この人工涙液には、花粉を洗い流すだけでなく、花粉からアレルギーのもととなるタンパク質が溶け出すのを抑える効果もあるそうで、コンタクトレンズの上からさすこともできるので、花粉が飛び散るこの時期には試してみても良いのではないでしょうか?

(眼科で処方してもらうことも、市販で購入することもできますよ)

 

痒みがひどくて困ったときには

痒いときに掻かずに我慢するというのは、大人でも結構大変なことですよね。

でも、アレルギー反応というのは、掻けば掻くほどひどくなるのです。

では、たたいたりつねったりして掻くのさえ我慢すれば痒くなくなるかといえば、それも違います。掻くこともたたくこともつねることも、そこに刺激を与えるという点では同じなので、アレルギー反応を起こす物質(ヒスタミンやロイコトリエンなど)が放出されて、さらに痒くなったり、むくんだり、充血したり症状を悪化させてしまいます。本来は花粉などの異物を攻撃するための反応のはずなのに、さらに自分を苦しめることになってしまうのです。

そんなときにはどうすればよいか?冷やせばよいのです。冷たく冷やしたタオルなどを痒い所(まぶたなど)にそっと当てていると炎症も治まり、冷たさにより痒さも感じにくくなります。先ほど、人工涙液のところでも冷やして使うと良いと言ったのも同じ理由です。この”冷やす“という方法は身体が痒いときにも使えます。

 

それでも痒くてたまらないときには?

眼科を受診して先生に相談してください。

もしかしたら、ひどいときだけ使用するようステロイドの点眼薬を処方してくれるかもしれません。ステロイドは飲み薬以外で使用の場合は、皆さんが思うような怖い薬ではないのですが、使いすぎると眼圧(目の中の水の圧力)を上げて緑内障を起こす可能性があるため注意が必要です。

 

ステロイドの点眼薬は、痒いと感じるたびに頻繁に使用するとか、前にもらったものや家族がもらったものを勝手に使うなど、眼科の先生の指示を守らずに長期間使用すると危険ですから、時々診察を受けながら、指示を守って使用してください。ものすごく痒くて、日常生活もままならないのに、「ステロイドは絶対に使わない!!」などと意地を張り、毎日を不快な状態で過ごすのはとてももったいないと思いますから。

 

もっと快適な春を過ごしたい人は・・・

目の症状だけでなく、くしゃみ、鼻水などの花粉に対する症状全般を抑えたい方はこちらの記事(薬コラム:花粉症)もお読みください。

【薬コラム連載】今から始める花粉症の原因と予防・食生活

基本的には、前の年の夏から身体を冷やさないこと。睡眠をしっかり取ること。花粉症の時期は特に、夜遅い時刻の飲食は控えることなどが重要ですが、もう一つ。

花粉が飛び始めるよりも2週間くらい前から薬を飲み始めること。

目の症状に対しても同様で、花粉が飛び始める2週間くらい前から、アレルギーの点眼薬を(少なくても1日2回くらい)さしていると、目の痒みが出始める時期が遅くなり、痒みなどの症状も軽くなり、うまくすればひどい症状にならず、ステロイド薬など強めの薬も使わずに、快適な春を過ごせるようです。

花粉飛散の2週間前というのが難しければ、とりあえず少し早めに眼科を受診して点眼薬をもらっておき、目が痒いなと感じたその日から直ちに点眼を開始すればよいのです。

飲み薬の初期療法は有名ですが、目に対しても同様の初期治療をすることで症状が軽くできること、その他にもアレルギー作用についての詳しい説明やここまで私がお伝えした内容をもっとわかりやすく詳しく説明してくれているのが、今年1月に発行されたばかりのこの本です。

“発症2週間前からの治療で花粉症の目のかゆみは激減する!”

医学博士 深川和己著 現代書林

とても読みやすく書かれているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

タイトルとURLをコピーしました