【薬コラム連載】困ったときには漢方薬を試してみませんか?

健康

薬剤師ライター たんぽぽむし 過去の記事はこちら

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。


こんにちは。薬剤師ライターのたんぽぽむしです。

皆さんは漢方薬に対してどんな印象をお持ちですか?

漢方ってにがい。まずい。くさい。飲んでもすぐには効かない。

それとも、副作用が出にくい。妊婦さんでも安心して飲める。風邪の引き初めには葛根湯でしょ?etc.

 

今日は、漢方を使ったことがない方はもちろん、すでに試している方にも、せっかく飲むなら効果的な使い方を知っていただきたいと思います。

内容は、よくある症状に対する代表的な漢方薬の紹介と飲み方について。

先日出席した、関西でご活躍の千福貞博先生の弟子であり、えのもとクリニック副院長である福原慎也先生の講演を基に私なりのアレンジを加えてお届します。

 

まず、漢方薬は自然のものから作られているから食品に近いイメージで、副作用はないと思われている方もいるかもしれませんが、漢方薬も薬です。

医師から処方される西洋薬と一緒に飲むと危険なものや注意が必要なものもありますし、当然、副作用が起きる可能性もあります。

ただ個人的には、「病院を受診するほどひどくない」とか「受診する時間がとれないけれど、この不調をなんとかしたい」というようなときに漢方薬を上手に使うとよいと思うので、比較的使いやすく代表的なものについて紹介したいと思います。

(ここで紹介する薬の使用については、病院で薬をもらっていないこと、持病がないことを前提としています。医院を受診中だが漢方も試してみたいという方はかかりつけの医師に、また薬局にて漢方薬を購入する場合は、お店の薬剤師に相談してみてくださいね)

まずは知識として・・・・

漢方薬はすぐに効かないのか?

そんなことはありません。早いものなら5分で効くものもあります。

代表的なものには、急に足がつって、息もできないほど苦しくなるようなこむら返りに効く“芍薬甘草湯”

これは、足がつり始めてから激しい痛みと闘いながらでも飲むことができれば、症状が治まることで有名です。

 

では、他にはどんな薬がすぐに効くのか?

それを見極めるポイントは

“その薬を構成する生薬の種類が少ないもの”     

芍薬甘草湯と同じく構成生薬が2つのものは、他に

大黄甘草湯(便秘に効く)や桔梗湯(咳やのどの痛みに効く)があります。

 

種類が少ないものは即効性があるので急な症状に効きめがありますが、続けて飲みすぎると効果が弱くあることがあるので注意が必要です。

 

逆に構成生薬が多いものというと

生薬数18の防風通聖散(通称やせ薬と言われ、水太りに使います)

漢方薬を構成する生薬の平均は7種類と言われていますので、18と言えばかなり多いですね。「こちらの薬は効果が出るまでに時間がかかる、漢方を飲んだからと言ってそんなに簡単には痩せられない」ということです。

今、漢方薬がお手元にある方は、パッケージの裏などに書いてある生薬の数を数えてみるとすぐに効果が期待できるかわかると思います。

漢方はまずいのか?

飲みやすいものもまずいものもあります。

ただ、よく“良薬は口に苦し”と言われますが、これは漢方には当てはまりません。そのときの状態に合っていれば、“おいしくはないけどまあ飲めるよ”とか、“意外においしいかも”と感じると思います。

その感覚もいつでも同じとは限らず、あくまでもそのときの状態に対してなので、“前に飲めなくて放っておいた薬を試してみたら今日は飲めた”ということがあるかもしれません。“まぁ嫌でもなく飲めた”場合は効果が期待できます。その薬を続けるべきか、合っていないからやめた方がよいのかは、自分の気持ちや身体に聞くのが一番よいと思います。

漢方薬はいつどうやって飲むのがよいか?

基本的には空腹時(食事の前か食事をしてから2時間以上経ったころ)にお白湯に溶かして温かい状態にして、匂いも嗅ぎながら飲むのがよいです。鼻から吸収される香りも治療効果があるからです。

薬の名前に「湯」とついているものは特にお湯で溶かして飲んでください。

溶けにくければ、10~20秒電子レンジで温めても構いません。

もし、粉のままで飲むならば、せめて水ではなく温かいものでお飲みください。また、空腹時に飲めない場合は、次の食事まで薬を飛ばさずに食後でも構わずすぐに飲んでください。わずかに効き目が弱くなる可能性はありますが、最も大事なことは身体の中で薬の濃度を一定以上に保つことなので、飲むタイミングよりも回数を守ることを意識してください。薬の間隔が最低4時間くらいあけば飲めますから。

お勤めの方ならば、お湯で溶かしたものを水筒に入れて持参して飲むという方法もありますね。

もともと甘みがついている薬(膠飴が入っている)もありますが、飲みにくければオリゴ糖とかハチミツなどを入れたり、ココアの粉を一緒に溶かすと飲みやすくなる場合もあります。

ただ、先ほどもお伝えしたように、医師から処方されてどうしても飲まないといけないと言われている場合を除いて、いろいろ加えて味を変えて頑張らなければ飲めないような薬は多分無理して飲んでも効かないと思うので、別の薬に変えた方がよいかもしれません。

それでは、実際に代表的なものからご紹介を・・・

風邪によく効く葛根湯

まずは、風邪の引き初めに。うなじ辺りが凝っているときには効きます。

こじらせた風邪には効果は期待できません。

肩こりや頭痛、授乳婦さんの乳腺炎にも効果があります。

葛根湯は、うなじの張りや痛みを軽減する”葛根・芍薬“と、発汗作用を促す”麻黄・桂枝“そして胃腸の働きを整える”甘草・大棗・生姜“の7種でできています。

ですから、汗を出して風邪を治そうとしているのに、西洋薬の解熱剤を飲んだり、冷却材で身体を冷やしたりしては逆効果です。

また、昔は「うどん屋薬」と言われ、うどん屋さんに置かれたこともあるという葛根湯。風邪の時には、うどんのような温かいものを食べ、布団に入って休むことが一番大事ということなのです。

「葛根湯を飲んだから大丈夫」と言って寒いところや冷房の効いた部屋で過ごしたり、冬の夜に接待でビールなんて生活をしていては、葛根湯の効果は期待できません。

また飲み方にもコツがあり、福原先生は「1日3回と処方箋には書いているが、最初の3回は3時間ごと間隔をつめて飲み、汗をしっとりかく程度ならもう1回飲ませる。着替えるほどの汗をかいたら服薬中止」と指示されているそうです。

葛根湯はうまく汗をかかせて風邪を治そうという薬なので、たくさん汗をかいてからは飲ませてはいけない。ここが大事なポイントです。

また、別の見方でいうと、たとえ風邪の引き初めでも、熱があり、すでにたくさん汗をかいている状態では、葛根湯は適さないということです。

福原先生の指導のもとでは、3時間ごとの服用ということでしたが、個人で服用する場合は4時間くらいはあけた方がよいでしょう。

また、市販薬は医師の処方でもらうときと同じ名前の漢方でも、量が少ない場合もあるので、初日のみ1日4回までは飲んでもよいと思います。

ただ、発汗作用を持つ”麻黄“という成分は、血管収縮作用や気管支拡張作用、中枢興奮作用などがあり、狭心症、高血圧、前立腺肥大、胃十二指腸潰瘍、睡眠障害の方は注意が必要です。自己判断せず、かかりつけの医師に相談してください。

また、抗生剤を飲むと腸内細菌が弱ってしまうので、漢方薬の効果がでにくくなります。

抗生剤は医師の処方がないと飲めないし、前回お伝えしたようにほとんどの風邪に抗生剤は不要ですから、葛根湯で風邪を治そうと思ったときには、家にある抗生剤を合わせて飲むなんてことはしないでくださいね。

咳には麦門冬湯、麻杏甘石湯

痰は少なく乾いた咳、のどがガラガラ、顔が真っ赤になるくらいせき込んでしまう。

口が乾いて、みぞおちのあたりにつっかえる感じがある。便秘気味。
身体の中の水が不足して熱が勝っている、オーバーヒートの状態。
そんな咳のときには、味も飲みやすい麦門冬湯がお勧めです。

お腹を触って全体に冷えていて、皮膚が乾燥気味であれば、さらに麦門冬湯が合っている可能性が高いです。

黄色い痰が出たり、喘息っぽい咳がでているときには、すぐに病院を受診した方がよいですが、もし市販の漢方を試すならば、麻杏甘石湯の方がよいですね。

こんな咳のときには麦門冬湯より効くと思います。

ポトポト落ちる水っぱなには小青竜湯

身体が冷えて薄い痰やくしゃみ、鼻水が出るとき。

これからの時期、花粉症の水っぱなには小青竜湯です。

冷えからくる症状なので、なおさらお湯に溶かして鼻から匂いも嗅ぎながらお飲みください。

水で飲むよりも数倍よく効きます。

嘔吐、二日酔いには五苓散

嘔吐、口の渇き、下痢、頭痛、めまいなどの症状には五苓散がよく効きます。

1包をお白湯100~200ccのお白湯に溶かして、スプーンで少しずつ時間をかけて飲んでください。匂いを嗅ぎながら飲めるとなお良いです。

もし、1回目は吐いてしまっても、胃に残っている薬が吸収されるだけで効果があります。2回目はもっと吐きにくくなるでしょう。

吐き気が強くて、薬を飲んでも吐いてしまうことが心配ならば、スプーンで一口飲んでから時間をあけて、また一口飲んで・・・と繰り返すとよいです。目安としては大人ならば15分くらいで1包を飲みきると良いでしょう。

また、1日目は冷たいものは決して摂らず、体温以上のものだけにすると回復が早いです。二日酔いがひどいとき、雨の日の頭痛にも効果があるので試してみてください。

どこかに冷えを感じたら六君子湯

もともと食欲不振や吐き気、食後の膨満感など胃腸が弱ったときに効くとされる薬ですが、元気が衰え、お腹に限らず身体のどこかに冷えを感じるときにはよく効きます。

冷房による冷えからの食欲不振や神経性の胃炎。

興味深いところでは、心の寒さ(失恋)による胃腸の不調にもよく効くそうです。

“この気持ち、自分ではどうにもできない“ということがあったら温かく溶かして試してみて下さい。

垂れてくるものには補中益気湯

手足がだるく、食欲もなく、何だか力が出なくて頑張れない。

気分が垂れる(浮かない)”うつ病”、食欲や汗が垂れる”夏バテや多汗症”、免疫が垂れる(落ちる)”病気の後やアトピー性皮膚炎”etc.

風邪やインフルエンザが治りきらずスッキリしないときや、病人や高齢者の看病・介護で疲れてしまったときなどに効果があります。

こちらも名前に「湯」がついているので、溶かして温かい状態で。

急な痛みや痙攣に芍薬甘草湯

冒頭で紹介した「こむらがえり」の薬として有名な芍薬甘草湯。

足がつるのは、水分とミネラル分の不足や疲労物質の蓄積、急な温度変化などが原因と言われていますが、この薬はふくらはぎなど筋肉の急なけいれんだけでなく、自分ではコントロールのできない胃腸や子宮など内臓の筋肉の収縮にも効果があります。イメージとしてはキューっと縮んで痛みでうずくまるようなとき。ですから、ひどい生理痛や胆石、尿路結石の痛みにも効果があります。

即効性があるので、痛みを感じたらすぐにお飲みください。

ただ、甘草という成分が含まれているので、続けて飲むとむくんだり、血圧が上がったり、力が入らなくなることがあるので注意が必要です。

痛いときだけ飲んで、良くなったらやめましょう。

 

今日は、代表的な漢方薬について紹介してみました。

薬局で手に取ってパッケージを見たときの感覚、1回飲んでみたときの気持ちなどが頭で考えるより当たっている気がします。

ちょっと調子が悪くて困ったなというとき、参考にしていただけたらと思います。

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