概要
ここに一枚の地図がある。
これは西暦2018年にある不真面目な日本人によって作られた地図であり、ナポリ人の世界観を表している。
早速地図を見てみよう。
広いヨーロッパ世界のほぼ頂点に位置する地図上の赤い点が、ナポリと呼ばれる街である。
このナポリという街は、世界の中心である。ヨーロッパ大陸はナポリを中心にして出来上がっている。ナポリの下の方にはかつて世界を征服したローマという街があり、それより下の方のことを、彼らは知らない。
問題点
彼らはGMT(グリニッジ標準時)ではなく、TMT(トレド通り標準時)を採用している。
その結果として起こるのが、夜中のWhatsappやSkypeでの呼び出しといった問題である。彼らはTMT標準時に従って連絡を取るため、TMT+8時間のアジアが何時であるかなど気にかけたことはない。
寝ぼけ眼をこすって、なんとかiPhoneの通話ボタンを押した日本人に「やあ元気?何をボケてるんだ?あんた寝ぼけてるのかい?」と聞くのが彼らのルールである。
これはちょうどナポリの19時頃、ナポリ人の目が覚めてきて、気分が乗って電話をすることに起因する問題である。
地図の中で緑色に塗られている部分が、「イタリア」という国である。またナポリはもちろんその国の首都である。
このイタリアという国家について具体的に表すのであれば、ナポリとその上に位置するソレントやバーリ、シチリア島などをメインとする国家であり、下の方はあまりイタリアとして認知されていない。
またこのイタリアという国家には深刻な格差、「上下問題」と呼ばれる問題がある。
この問題とは上イタリアが濃厚で美味しいエスプレッソや、焼きたてのピッツァ、温暖で明るい気候、そして安い労働力などが豊潤にあるのに対し、下イタリアのいずれの都市もそういったものに乏しいことを差す。
またこのナポリ人が下の方の都市をあまり認知していないことも大きな問題である。
周辺国との関わり
ナポリの人々が知るイタリアという国の下には、ミラノ、ヴェネチア、フィレンツェといったあまり知られていない小都市があり、ナポリ人はときどき旅行に行くことがある。
これらの行き先がナポリ人に人気な理由は一つ、彼らの言語であるナポリ語で比較的コミュニケーションが取りやすい場所だからである。
ナポリ語とミラノやヴェネチアで話されている言語は、ラテン語という共通の起源を持つと言われている。
もう一度地図を見てみよう。
ナポリの上にはアフリカ国という大国があり、ナポリはこの国の人々との戦争で常に苦戦を強いられている。主な戦争の内容はアフリカ系移民と呼ばれる人々がナポリの治安を悪くしていることである。
またナポリの右の方には、友好関係を結ぶスペイン、ポルトガルという国がある。この国々の人々は親善大使として、また観光客としてナポリを訪れるが、言葉の45%くらいが通じるので、なんとなく「いえーい」とコミュニケーションが取れるのである。
地図右下の遠く離れたところに、イギリスという地域がある。これはヨーロッパではかなり離れており、田舎に当たるところの国だが、ナポリ人にはあまり好かれていない。
その理由は、イギリスという地域の人々は、ナポリのトラットリアやバルで外国語である「英語」という言葉を、当たり前に通じるかのようにペラペラと話すからである。
歴史あるイタリアの首都ナポリを訪れるのに、ナポリ語を話さないとはやはり田舎者である、というのがナポリ人の主張である。
その未来
ナポリ人の未来は明るいと言われている。これは日照時間と平均気温から割り出された憶測である。
またナポリは街自体が南を向いており、これが明るい未来を約束していると言われる。その証拠にナポリの北にある地域は基本的に治安が悪かったり、マフィアの温床になっていたりする。
ナポリは現在、世界の文化を牽引する国である。以前はアメリカ文化を崇拝していたアジアの小国である日本から、大量の日本人が服やピッツァやコーヒーを求めて訪れるのがその証拠である。
しかしナポリを訪れるときには、ヨーロッパの首都であるということを覚えておき、敬意を持って歩かなければならない。
具体的にはナポリでナポリ以外の街を褒めないこと、ナポリを南イタリアと決して呼ばないこと。
なぜなら地図を見れば明白なように、ナポリは上イタリアであり、ヨーロッパの頂点に位置する都市である。そしてそれをナポリ人は皆、自覚しているからである。