Sartoria Dalcuore ダルクオーレ 世界が熱狂するサルトリアを訪ねる

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こんにちは皆さん、Professore Rambaldi プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

現在仕入れやミーティングのためにナポリにおりますが、ホテルでアリアニコ種のこざっぱりとした赤ワインMASSERIA FRATTASIを飲んでいたところ、instagramに嬉しいメッセージが届きました。

Sartoria Dalcuore : 「せっかくナポリにいるなら遊びに来れば?(意訳)」というわけです。

そう言うわけで次の日、早速サルトリア・ダルクオーレを訪れました。今日は、世界が注目するサルトリアの工房をめぐる小さな旅を、みなさんと共有したいと思います。

Sartoria Dalcuore サルトリア・ダルクオーレ

サルトリア・ダルクオーレについてはすでに大人になれる本でも紹介していますが、今一度皆さんにその魅力をお伝えしましょう。

ナポリにはたくさんのサルトリアが存在しますが、その中でも特に高い知名度を誇るのがサルトリア・ダルクオーレです。

仕立てはナポリのサルトリアの中でも個性的で、非常に洗練されたラインと精巧なディテールを持ち、シャープなシルエットを実現しながらも、驚くほど柔らかい着心地を実現しています。

ナポリのサルトリアには様々なスタイルがありますが、サルトリア・ダルクオーレには土着的なナポリらしさ、いわばコテコテなナポリらしさというものはないかもしれません。

例えば副資材を用いないアンコンの肩にくしゃっとした雨降らし袖、ダブルステッチに、向こう側に満月を覗けそうな丸っこいボタンホール。そういうものは存在せず、代わりにあるのはサルトリア・ダルクオーレの感性です。

それは柔軟と言うよりはむしろ頑固と言えるほど、徹底した感性の追求。彼の信じる美意識を追求しきったディテールとシルエットはむしろ気持ちよく、私たちは驚くべき幸福感と共に、その感性を甘受するのです。

そしてダルクオーレは今、世界的なブランドになろうとしています。日本でも数多くの店が取り扱い、既製服はもちろんのことトランクショーも精力的に行なっています。

Che Piccola! なんて小さな工房で

サルトリア・ダルクオーレの工房を写真で見たことのある方は多いでしょう。クリーンな雰囲気の工房には、いたるところに現代美術の抽象画が飾られており、窓からは美しいナポリ湾が見えます。

しかしその写真を見た一体誰が……サルトリア・ダルクオーレの工房がこれほどまでに小さいことを想像できたでしょうか。

そのメインの工房は日本でいったら小学校の教室を2〜3並べた程度の大きさなのです。

マエストロが非常に重要な部分を仕上げる小さな部屋、応接間を兼ねたやや広い部屋、そしてカッティングやアイロンワークを行う小さな部屋。あとは事務所がある程度です。

サルトリア・ダルクオーレは、世界的に有名なナポリ・ブランドになりながらも未だに一軒のサルトリアなのです。私が写真を撮っている間にも、一人のナポレターノが仮縫いに現れていました。

やけにスムーズに仮縫いが済んでいましたが、その風景を見て私は思うのです。「一体何度目の仮縫いなんだろうか」と……。

応接間を兼ねた部屋には、新しいコレクションが並んでいます。秋冬ファブリックの、既製服です。ビスポークのような雰囲気が漂う、素敵なモデルでした。

なぜここまでSartoria Dalcuoreが注目されるか?

アトリエのあるヴィラの入り口。ナポリ・バロックを感じる美しい建築。

しかしこれほどまでに熱い視線が、サルトリア・ダルクオーレに注がれるようになったのでしょうか。

その秘密はやはりその芸術性にあるでしょう。他のサルトリアがナポリらしさを追求しているのに対し、サルトリア・ダルクオーレはあくまで独自の美意識を追求している。

ナポリ仕立てが欲しければここに来る必要はない。しかしサルトリア・ダルクオーレの仕立て服に一度惚れてしまったなら、他のサルトリアで同じものは手に入らない。そういうことでしょう。

またサルトリア・ダルクオーレの服は、そのアトリエが持つ雰囲気が封じ込められているような、革新的な空気を纏っています。

新しいことに挑戦することを厭わず、常にクオリティとスタイルを極めていく貪欲さ。しかし100の変化を受け止めるだけの、強烈な芯があることも明らかです。

その芯とはもちろん職人としてのハイレベルな技術であり、ダルクオーレだけが持つドレープとシルエットですね。

徹底して独自の美意識と感性を表現するディテール、飽くなき挑戦、そして普遍的なドレープとシルエット。

これがサルトリア・ダルクオーレが世界中から注目される理由でしょう。

Sartoria Dalcuore ダルクオーレのルネサンス

 

そしてサルトリア・ダルクオーレは今、新たな仕立てに開花しつつあります。一時は生産量を増やし、一時は縮小してビスポークばかりを手がけていたこのサルトリアは、今やまた急速に拡大し、アットリーニやキートンの背中を追うように、世界のブランドになりつつあります。

ある人々はそのクオリティを心配するでしょう。確かにナポリでオーダーするビスポークと、世界中で見る既製服とではクオリティは異なるかもしれません。このサルトリアに限らず、必ずしも本人が全てを手がけるわけではないのです。

すなわち世界中で手にはいるサルトリア・ダルクオーレと、ナポリでオーダーするサルトリア・ダルクオーレでは、また少し異なっているということですね。

しかしだからと言って、悲観的になることはありません。

この現代美術に囲まれたアトリエを訪れると、私はあるものを感じます。

それは鮮烈なエネルギーです。

サルトリア・ダルクオーレの感性を、世界中に広めようという強い意志を感じるのです。それを感じれば誰もが「サルトリア・ダルクオーレ」はナポリの小さな仕立屋に留まっているべきでなはいのだと、理解するでしょう。

サルトリア・ダルクオーレ、私を含め昔からの仕立てを知るファン達は、まるで成長して離れていく家族を見守っているような気持ちです。

しかしその仕立てはこれまでとは比にならないほど多くの人たちに、感動を運ぶ段階へと来ているのです。その感性はこの小さなアトリエを飛び出して、あなたの住む街へとやってきています。

そして次にサルトリア・ダルクオーレのエネルギーを確かめるのは、あなた自身なのです。

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