まずは皆さんに謝らなければいけないでしょう。
これほどまでに素晴らしいネクタイがあることを知っていながら、紹介するのをずっと怠っていたのですから。
スパッカ・ネアポリス。かの有名なナポリの目抜き通りの名を冠したこのブランドは、これまでのどんなブランドとも違う魅力を持つネクタイです。
素晴らしい生地、ハンドメイドの締め心地……。もちろんそういった表現もしていくことでしょう。
しかし最初に皆さんにお伝えしたいのは、スパッカ・ネアポリスの最大の魅力は、それを手にする全員を圧倒するほどの「情熱」であるということ。
ナポリへ、ファッションへ、そしてビスポークへ。これほどまでに強い情熱を感じるネクタイは、他にありません。
Nicola Radano ナポリ新世代のファッションリーダー
Nicola Radano 公式サイトよりスパッカ・ネアポリスについて紹介するにあたっては、まず彼について紹介しなければいけませんね。ニコラ・ラダーノです。
彼はまだ大学生でありながら既にピティ・ウォモの常連でもあるニコラは、ナポリ仕立ての文化をこのうえなく愛する洒落者です。
サルトリア・ソダーノで仕立てるクラシックな生地のビスポークスーツを軽快に着こなし、ギフトのリボンを結うかのように美しくネクタイを締める彼は、今最も注目されているファッションブロガーの一人ですね。
最近では雑誌や本への露出も増えており、名前は知らなくとも見たことのある方は少なくないはずです。
ナポレターノらしいフレンドリーさと、誠実さ。そして何よりも強い意志と情熱を持ったニコラ、一度会って話をすれば誰でもすぐにファンになってしまうことでしょう。
そんなニコラがプロディースするのが、このスパッカ・ネアポリスというネクタイブランドなのです。
美しい生地と、最高のコンディション(条件)
スパッカ・ネアポリスでネクタイをオーダーするとき、私はニコラと他では考えられないほど念密に打ち合わせをします。何をそんなに話すのか、疑問に思われるかもしれません。
例えば生地と仕様の相性。例えば日本では「裏地は共地だと高級」「セッテピエゲが最高級」といった具合に語られることが多いですよね。
しかしニコラの考えは違います。生地の厚さや繊細さ、そして表情によってそういった仕様を使い分けている。最高のクオリティを生み出すには条件が揃わなければいけないということを、彼は知っているのです。
個人的にも最近巷に出回っているブランドの、生地と仕様のミスマッチを非常に強く感じています。
かなり薄手でビンテージ感のあるシルク生地なのに、流行だからといってセンツァ・インテルノで仕上げられたネクタイ。
ネクタイがペラペラになってしまい、まるでボリューム感が足りないうえに、コストダウンのために長さも短くなっているためにまともな結び目が作れません。
ニコラが生み出すスパッカ・ネアポリスのネクタイは、そういった安直さの対局にあり、それこそが彼のネクタイを皆さんにおすすめしたい一番の理由なのです。
「このシルクは、是非ともハンドロールのスフォデラートで仕上げて欲しいな」
「いや、これは繊細すぎるからしっかりと裏地をつけた方がいいよ」
「じゃあ共地では?」
「問題ないけど、芯地を少し厚くして結び目にボリューム感を出した方がいいかもしれない」
「それなら、やや厚めの芯地を入れて、幅をもう5mm太く、それから長さを5cmプラスしてくれるかな」
と、こんな具合でひたすらやりとりをする。それも一本ずつです。
そして打ち合わせが終われば、エスプレッソを一杯。
ニコラ・ラダーノとのミーティングが私にとって至福のひとときであることは、もはや言うまでもありませんね。
ヴィンテージへの情熱
まったくまだ20代も始まったばかりでありながら、ニコラはビンテージに夢中なんですね。
「新しい生地が入ったよ」といって連絡してくるとき、彼のファブリック・コレクションは希少なヴィンテージのシルクやリネンで満たされているわけです。
しかし彼のヴィンテージ情熱はそれだけではおさまらず、最近ではついにヴィンテージ復刻生地までも手がけています。その一つが上の美しいメダリオン柄ネクタイです。
大柄のメダリオンが復刻して数年、最近ではより大きく、ヴィンテージ感のある柄がトレンドとなっています。しかし彼の生み出すこの復刻版は、ただヴィンテージなだけではない。
注目すべきはその素晴らしいシルクの品質と、そして色使いです。手に持てばさらりと流れ落ちてしまうかのような、さらりとして滑らかなシルク生地。これには驚きました。そしてセンスのある色使いです。
ヴィンテージの復刻生地には色合いがシックすぎて使いにくいもの、またともすると年配の方のネクタイのようになってしまいそうなものもありますが、ニコラのプロデュースするネクタイは色合いが美しく、復刻でありながら新鮮な華やかさを伴っています。
この辺りはさすが、新しい世代のナポレターノの感性ですね。
ナポリ仕立てを受け継ぐ人たち
後継者不足や様々な問題から、ナポリ仕立て文化が危ぶまれてもう十年ばかり。しかしナポリには新しい芽が育ち、ナポリ仕立てが最初に日本で紹介されたときにはまだ生まれてもいなかった人々が、その後を継ごうとしています。
ナポリ仕立ての変革。こんなに興味深く、ドラマチックな時代を目撃できること、そして手に入れることで参加できるということは、本当に喜ばしいことですよね。
そしてニコラ・ラダーノと彼の展開するスパッカ・ネアポリスがその最前線に立つ、次世代のファッション・リーダーであることは間違いありません。
みなさんも彼のネクタイから、新しいナポリの情熱を感じてみませんか?
(プロフェソーレ・ランバルディ静岡は日本初、そして現在では日本唯一のスパッカ・ネアポリス正規取扱店です。彼のネクタイを日本に紹介させていただくことを、誇りに思います。)