Kiton キートンの魅力
さてそのキートンが、どうしてこれほどまでに世界を魅了しているのか。その理由はナポリの職人達のクラフトマンシップと、キートンがエクスクリューシヴで様々な生地ブランドにオーダーしている極上の生地にあります。
まずはクラフトマンシップ。キートンのジャケットは150にも及ぶ工程を経て仕立てられており、1着を仕立てるのになんと20時間も掛けられています。数百人の職人を抱えたキートンの工場は、一見すると現代的にも見えるかもしれません。
しかし職人達の手元を見れば、その作業が他のナポリのサルトリアで行われている作業となんら変わりのないことであると、すぐにわかります。
完全な分業制によって仕立てられるキートンのジャケットやスーツは、各パーツがその部分を専門とする職人によって作られます。これも他のナポリのサルトリアと同じですね。
そして生地。生地はキートンの傘下にあるカルロ・バルベラはもちろんのこと、世界中のメーカーから取り寄せています。
あまり知られていませんが、例えばウールはイングランド、ツイード系はスコットランド、カシミアやリネンなどの混紡はイタリアとそれぞれの生地を得意とするところにオーダーしています。
説明ばかりですと退屈ですので、実際にキートンの魅力を見ていきましょう。今回はプロフェソーレ・ランバルディ静岡で扱っているキートンから3着を選んでみました。
まずはこちらから。
Kiton BLANC BLUE SUPER 180’S ウール スーツ
素晴らしい質感のSUPER 180’sウールを使用したスーツです。
キートンが同社最高グレードのエクスクリューシヴ生地を別注することでつとに知られる、BLANC BLU。まるでしっとりと濡れているかのような美しい光沢。どんなシルクよりも優雅な光沢を放つウールを作れるのは、恐らく唯一ここだけでしょう。
しかし14ミクロン、SUPER180’sとくれば、見たことのある方はそう多くないはずです。
肌に吸い付くかのようなドレープ感。「まとう」という言葉がぴったりのこの生地の柔らかさは、ヴィキューナやグアナコといった幻の生地と並ぶものです。
さらに特筆すべきはこの色合いでしょう。青と紺の中間ともいうべきこの色は、イタリア人が最も好む色合い。ソレントからサレルノへ巡るアマルフィ海岸の夜明けを思わせるブルーです。
これほどの繊細な生地は、既製服では滅多に見かけませんが、それはひとえに扱いの難しさによるものです。すなわち、そこらの工房ではこの繊細さの生地を仕立てることさえもできないのです。
しかし世界最高峰のキートンならば不可能ではありません。まるで宝石を使って芸術的な風景を描きあげるように、BLANC BLUのSUPER180’sを使って、珠玉の1着を仕立てあげています。
一切の迷いを見せないカッティング、美しい立体感を生み出すアイロンワーク、柔らかな手縫い。この希少な生地にかける職人の意気込みが感じられるような、素晴らしい仕上がりです。
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