「最も美しいグラスとは何か?」そう聞かれたら、多くの人がきっと「バカラ」と答えると思います。
百貨店に専門店として入っていたり多くの人に贈答として選ばれます。
少々グラスに詳しい人であれば、「サンルイ」「ロブマイヤー」なども出てくるはずです。
ドイツ製のメーカー不明のクリスタルグラス
この冒頭で紹介したグラスは実はメーカー名不明のドイツ製クリスタルグラスなのです。アンティーク店であまりの美しさに衝動買いしたのですが、なんと価格は4千円。バカラのカッティンググラスの5分の1です。
ところが、自宅に帰ってじっくりと眺めると、バカラのアルクールよりも美しいのです。カッティングの精度が非常に高く、エッジが立っています。もちろん型抜きの跡などはありません。とても巧妙な出来で驚きました。
光にかざすと、透明で向こう側が見えますが、角からは虹光がギラギラと反射して眩しいほどです。
バカラと比べても、カッティング精度、虹光が優れているのは明らかでした。
日本はブランド信仰が強い?
アンティーク店で「なぜ、こんなに美しいのに残っているの?」と聞いたら、驚くべき返答をされました。
ドイツ人のオーナーのお店で、「日本人はブランドばかり好きで、ここに来てはバカラ〜マイセン〜と言って、ロゴの無い商品は興味がない」と。
つまり、これほどに美しいグラスが、ロゴが無い(メーカー不明)というだけで売れ残っていたのです。他にも数多くのハンドメイド品や、ハンドカッティングのグラスがありました。
こちらもドイツ製のアンティークグラス。
クリスタルグラスに着色してあり、江戸切子と同じカッティングが施されています。
よく見るとステムに細かくギザギザがありますが、全て手作業で行われています。
このグラスは、形状がひとずつ少し異なり歪んでいます。現在のマシンメイドが主流のグラスには無い味わいです。
とある北欧アンティーク店でも同じように、なんでネットショップをしないんですか?と聞いたら「アンティークに理解のない人からのクレームが来るから」と答えられたことがあります。
4つ買ったグラスの高さが微妙に異なるだけでクレームが来るのです。
それがハンドメイド品の良さなのに、残念でなりません。
バカラより良いかどうか知る為に、何脚か持っているのは良いことですが、「バカラじゃないと買わない」「マイセンじゃないと買わない」というのは食器の世界ではとても勿体無いことです。
ロゴが無いものでも偉大なグラスや食器が有るので、アンティークを見に行ったら一つずつ手にとって、どんなものかじっくり見てあげて下さい。