「さよならドビュッシー」 中山七里
2013年にも映画化されたこともあり聞いたことがある方もいるかもしれません。
あらすじ
ピアニスト志望で特待生として推薦入学が決まっている主人公・香月遥の住む香月邸が全焼してしまい、全身大やけどを負ってしまったものの形成外科医の新条の移植手術によって奇跡的に命を取り留めます。しかし、カエルのような声、見た目は元通りに見えるが思い通りに動かない指、そんな遥に追い打ちをかけるかのように火事で亡くなってしまった祖父の遺言により、祖父の純資産の2分の1の金額6億3500万円という膨大な金額の遺産相続人になってしまいます。
火傷が完治していないのにも関わらず、予定通り特待生として入学してきた遥はクラスメイトには嫌味を言われ、学校側から特待生として入学してきたからには何らかの結果を出し続けなければならないという条件も突き付けられてしまいます。さらに、家でも遺産相続人が遥だけに指名されていたということもあり階段の滑り止めが剥がされていたり、松葉杖の留め金がゆるめられていたりし身の危険すら感じてしまいます。火事が起こる前から指導をし、期待をかけていたピアノの先生にすら冷たい態度をとられてしまいます。そんな時、ピアノの先生の弟弟子である岬洋介が遥のレッスン役を買って出てくれます。
軽いあらすじはこんな感じですが、この本の魅力はピアノを弾くシーンの描写です。読んでいるとその曲を聴きたくなるような繊細な文章で描かれています。クラシックやピアノを習っていた、習っている人に是非読んでもらいたい作品です。また、巧妙な推理小説でもあり読み応えもあります。
毎日の十数分、数十分の間に読む本として飽きずに楽しんで読める本です。ぜひ、文中に登場する曲を聴きながら読んでみてください。
「贖罪」 湊かなえ
こちらの本も、2012年にテレビドラマ化されている作品です。
あらすじ
とある田舎町にできた足立製作所の工場と、社員のために建てられた田舎には不似合いな住宅に越してきた転校生のエミリとエミリの環境に憧れや羨望の思いを抱きながら、4人の小学生はエミリと仲良くなります。しかし、夏休みのある日のグリーンスリーブスが鳴る午後6時、彼女たちはエミリの死体を発見していまいます。彼女たちは犯人の顔をみていたのですが、どうも思い出せません。そして、事件から15年の経ち、彼女たちが抱き続けてきた罪の意識と、エミリとエミリの母に対する償いが、さらなる悲劇を巻き起こします。
内容的には結構暗い話になりますが、著者の湊かなえさんらしい人間の生々しい奥深い感情がよく出ている作品だと思います。
湊かなえさんの作品を呼んだことがある人ならわかるかもしれませんが、章ごとに語り手(主人公)が変わるつくりです。なので、読み途中で少し時間をあけると内容を忘れてしまって前から読むにも時の流れと内容が章ごとに大きく異るので、毎日の少しの時間にちょっとずつ読むと内容がしっかり入りつつ楽しみながら読める作品ではないかな、と思います。
登場人物達がそれぞれ抱く感情を交えながら、読んでみてください。
「カラフル」 森絵都
この本は2000年に実写映画化、2010年に劇場アニメ化されている作品です。
あらすじ
「僕」は一度死んだはずだが、天使に「抽選にあたりました!」と言われ、生まれ変わり「小林真」という中学生としてもう一度人生をやり直すチャンスを与えてもらえる。そして、小林真として生活が始まるのだが、さまざまな困難がたちはだかった。
一度死んだもの運良くもう一回生きられることになった「ぼく」は小林真の体を借りて好き勝手やる、というのが手っ取り早いあらすじですが、好き勝手やっている間も小林真とその周りの人たちとの人間関係に思わず読み入ってしまう作品です。
読みやすく、比較的短い物語ですが何回も読みたくなるくらいに人間臭いいろんな「小林真」としての「ぼく」を楽しめる本だと思います。読み終わった後、優しい気持ちになれる作品です。是非、読んでみてください。