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第4回 ライター田中のメンズファッション講座【お金の掛け方 編】

メンズファッションの本質を一から勉強したい人のための、メンズファッション講座。今回で第4回となりました。

ファッションは本当に興味深く、知れば知るほどその奥行きに惹かれていくものです。

しかしファッションには様々な企業の思惑が絡んでおり、ともするとお洒落になろうとしてお金を使っているのに、まったく良いものが買えていない、お洒落になれていないということがありえる。

せっかくファッションに興味を持ったのに、金銭的に疲弊してしまってあきらめてしまうなんてもったいないことはありません。

そういうわけで、今回はメンズファッションのお金の掛け方についてを書いていきます。

お金を掛けるべき物、掛けるべきでない物

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ファッションの着こなしにおいて、まず知っておくべきはお金をかけるべきアイテムと、お金をかけるべきでないアイテムの分別です。適切な部分に正しくお金を使うことによって、効率よくお洒落なメンズファッションを構築していくことができます。

例えば多くのウェブサイトや雑誌ではこのように書かれていますね。

「男は絶対、腕時計にこだわらなければならない。なぜなら腕時計は最初に見られるから」

さて、どうでしょう。この意見が本当に正しいかどうか、個人的には少し怪しいのではないかと思っています。

もちろん女の子のいる飲み屋に行って、リッチな人が好きな女性を口説こうと考えているのであれば、それは腕にはできるだけ高級な腕時計が光っている方が良いでしょう。40万円のジャガー・ルクルトはいけません。なぜならばこれは一見で値段が分からないからです。500万円のパテック・フィリップなら合格ですが、最も良いのは金無垢のロレックスです。

しかしそういった狙いを持って着こなしを考えているのではなく、むしろヨーロッパの老舗ホテルや世界中の美食家が集まるレストランで「望まれる客」としておもてなしを受けたいと願う人や、高い地位にある人と対等な取引をしたい人、また日頃から最大限のエレガンスを追求したいと思って着こなしを学んでいる人には、こう言いましょう。

そういった時計はとりあえず、他のものが全て揃うまでは必要ありません。それはなぜか。

「腕時計を見るまでもない」

からです。

「腕時計を見て、あなたを判断する」

これは半分正解ですが、半分は嘘です。例えばあなたを判断する人が腕時計にしか詳しくなく、男の着こなしのほとんどを理解していない人だとすれば、おそらくその人は腕時計を見てあなたを判断するでしょう。

また先ほども書きましたが飲み屋でその人がお金があるかどうかを判別するのに、腕時計はちょうどいい。時計はブランドが分かり易いですから、例えばスーツの生地感やシルエットでブランドや価格帯を覚えるよりもよほど正確で、簡単です。

その他日々の生活の中でも、その人があまりに非常識でないかどうか、また悪趣味でないかどうかを判断するのに腕時計は便利です。スーツにスポーティで厳つい時計を身につけていたら場をわきまえることができない人だということが分かりますし、黒に金のまるきり霊柩車のような配色のツヤツヤな時計をしていたら、おそらく悪趣味であるということが分かります。

もちろん上質で、こだわりのある腕時計は素晴らしいものです。やはり世界中のセレブ、リーダー達は高級な時計を身につけていますし、そういった社会の中では高級な機械式の腕時計をしていることが当然です。

しかしあなたが、普通にお洒落になりたい、またどんな場でも通用する洗練された大人のスタイルを構築したいと考えているのであれば、まず投資すべきは時計ではありません。

先ほど書きましたが、人を判断するときには時計を見るまでもありません。

2メートル離れたところから、その人が着ているジャケットを見て、シャツを見て、靴を見ればその人にセンスがあるか、ファッション的な教養があるか、金銭的な余裕があるかなど分かってしまいます。

「じゃあ、俺のスーツの値段を当ててみろ」って?まあ、一発で大体の値段を当てることが出来るとは限りません。しかし少なくとも全体を5秒見てあなたがファッションにどれほど気を使っている人かは分かりますし、もしかするとスーツの値段もまあまあ良い線まで言い当てられるかもしれません。

ファッションは所詮、暗記です。

普段から着こなしに気を使っている人や、人前に立つために日々装いを研究している人、つまり本当の意味でお洒落な人達は、最高品質のジャケットがどのようなシルエットで、どのようなディティールを持っていて、素晴らしいウールがどんな光沢を放ち、世界基準のシャツがどのような襟元を作るかを暗記してしまっている。

だから腕時計を見なくても、その人を判断できるのです。

しかし逆に言えば、彼らが「これは良い物だ」と判断しているポイントを押さえ、それに則したアイテムを的確に選んでいけば、意外にも低コストでお洒落は実現できる。お金をかけて印象の変わるところにお金をかけ、変わらないところは抑えれば良いからですね。

お金をかけるべきアイテム=見られている、また値段によって見た目の印象がまったく異なるアイテム。お金をかけるべきでないアイテム=見られていない、またお金をかけてもそれほど差が出ないアイテムだと考えましょう。

見た目の印象が一変するモノの価格相場

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上の項ではお金をかけるべきアイテム、そうでないアイテムという表現をしましたが、実際には「これは100万」「これは100円」というような話ではいかず、「ここには、平均よりもお金をかけるべき」という表現をすることになります。

しかしそんなのは分かりにくいですよね。「ネクタイは平均よりもお金を掛けよう」と言われても、ちょっと幾らか分からないでしょう。

そういうわけでここでは、この金額以上で選ぶと一気に見た目の印象が変わるよ!という価格の相場を一気にお教えしましょう。(安いわりに上質、高いわりに粗悪などありますが、ここでは分かり易いようにあえて言い切ることにしますね)

もちろん、価格の割に品質の伴っていないブランドを選んでしまっては意味がありません。ここでは価格相場の話だけをしますが、次回のライター田中のメンズファッション講座でおすすめのブランドも紹介しますので、そちらも併せて覚えておいてくださいね。

ジャケット=7万円

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老舗のホテルに宿泊する、高級レストランで食事をするといったシチュエーション、同窓会やちょっと綺麗目なパーティなどの特別なイベントのときには必ずと言っていいほど必要となるテーラードジャケット。

またビジネスだけどスーツを着るのにはふさわしくない休日の打ち合わせなどにも最適なこのアウターは「あると便利」というよりは大人の男の必需品です。

紺ジャケットは一着持っておけ、というのは本当です。上のようなちょっとした場面でジャケットを着て来ることができるかできないかで、男は器量を測られてしまいます。

例えばある上司が、色々な企業や団体を巻き込んだ重要なプロジェクトの運営メンバーを探しているとします。何も言わずに「日曜日、ちょっとミーティングしよう」と5人に声を掛けたところ、3人はパーカーやウィンドブレーカーなどを着てきて、2人はジャケットをさりげなく着こなしてきたとしたら。

他の要素はさておき、その2人には安心感があり、対外的なプロジェクトでも任せることができるような気がしてしまうものです。

そんなジャケットはやはり一張羅であったとしても、できるだけ品質が良く見えるものが欲しいですね。そこで、少し大きな出費となりますが7万円以上を出して、セレクトショップでジャケットを買ってみましょう。

生地が非常に本格的なものとなり、縫製も手が込んでおり立体的で、身体のラインにぴったりと沿った素晴らしいシルエットのものが買えるはずです。

もしそれが高すぎるのであれば、4万円以上で選びましょう。シルエットの立体感や生地のグレードなどは下がりますが、最近は本格的なスタイルのものも多く、1〜2万円のジャケットとは全く雰囲気が違うのが分かるはずです。

シャツ=9000円

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ジャケットの下に着るようなシャツは、見える面積こそ少ないものの、実はかなり値段によって印象の変わるアイテムです。

特にスーツの重要性に気づいて、ある程度しっかりとしたスーツを買ったにも関わらず、合わせるシャツを消耗品だからといって極端にグレードの低いものにしてしまい、スーツのグレードさえ下がったように見えてしまっている人はもったいない限りです。

シャツは素材と仕様を確認し、9000円以上で選ぶと良いでしょう。

素材は必ずポリエステルなどが入っていない自然素材のもの、形状安定加工のされていないものを選ぶことです。形状安定のポリエステルシャツとコットン100%の自然なシャツとでは、一日着た後の疲労感が違いますし、見た目からしても高級感に大きな差が出ます。

仕様は色違いボタンやリボン、襟裏のクロスなどの装飾が一切ないこと、ポケットがついていないことを確認すると、質のいいシャツに出会うことができます。

そもそも色違いボタンやトリコロールのリボンなどがついたシャツを選ぶのは、とっても怠惰なことです。白シャツに色が欲しければ、季節に合わせた素材のストールを軽く巻いた方が断然お洒落になります。

そういったシャツは、基本的にファッションにそれほど興味の無い人、知識の無い人を小手先の装飾で騙して買わせるために作られているので、品質は総じて悪い。

装飾など一切無しで9000円以上するシャツは完全に素材と縫製の質で勝負していますので、良いシャツに出会えます。またポケット無しを選ぶ理由は、ポケットのついていないのは現在のイタリアファッション潮流に合わせて、グローバルスタンダードな仕様や時代に則したシルエットを追求しているシャツである証です。

Tシャツ(カットソー)=5000円

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俗にTシャツと呼ばれているものは、カットソーという名称で呼ぶとファッション意識の高い人だと思われるので、まずは覚えておきましょう。

カットソーを選ぶときに大事なのは、素材が良い無地のものを選ぶこと。

ブランドロゴの入ったカットソーなんかは、およそ高校の学園祭のときにホームルームごとに作るクラスTシャツと同じものです。それに目の書かれた♡のマークが入ってるからといって1万3000円を払うのは、ファッションというよりはアイドルグッズ集めの範疇ですね。

セレクトショップやベーシックウェアブランドなどで、5000円以上の無地のカットソーを手に取ってみましょう。ベーシックウェアブランドというのは馴染みが薄いかもしれませんが、イギリスのSUNSPEL サンスペル、フランスのBANDOL バンドールなど、探してみると見つかります。

コットンを使い、丁寧な縫製で作られたこれらのカットソーはジャケットに合わせても、ニットに合わせても非常にお洒落です。

雑誌に載っているカットソー+カーディガンの着こなしを実践してみるけれど、なぜかお洒落にならず大学生ファッションのようになってしまう。そこで欠けているのは品質です。丁寧な縫製から来る精巧な首もとのリブや、コットンの品のある光沢感があって初めて、そういったカジュアルスタイルが大人にふさわしい着こなしになるのです。

ニット=1万6000円

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ニットというのは実はかなり値段の張るものです。ハレやレイジブルーといった大学生向けの廉価ブランドでは非常に安い値段でニットが売られていますが、こういったものは製法も素材も粗悪で、買ったばかりは良いものの、着ているうちにすぐに縮んだり型くずれしてしまったりします。

それで毎シーズン4000円のニットを買い足し、すぐに貧相になって4枚を捨ててしまうことを考えたら、とっても良いニットを1枚だけ、1万6000円で購入しましょう。

この値段帯のニットの最大の魅力は、作りと素材が良いために長く使っていくことができること。100均ハンガーに掛けるなどといったニットに対するドメスティックヴァイオレンスを避け、丁寧に畳んで防虫剤と共に保管すれば、何年に渡っても着込んでいくことができます。

またこの値段帯のカーディガンやセーターといったニット類は、綿やウール、シルク、カシミアといった素材を使っており、その風合いは柔らかく高級感があります。

特に色物のニットはナイロン主体の素材だと下品な色合いになってしまいがちですが、ウールや綿の色物ニットは自然で上品な色合いになり、着こなしにも馴染み易いですね。

高級なニットを買うのであれば、アイボリー系か紺などが使い易くおすすめです。

パンツ=4000円

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さて、この値段の格差に驚かれた方も多いでしょう。現在トレンドとなっているイタリアのインポートボトムスは、お値段だいたい3万円〜5万円。

それなのに、パンツは4000円で良いの?

とまあもちろん高いものを買えるのであれば、予算の許す限り高いものを買った方がシルエットや生地がよいのかもしれません。

ただ正直今トレンド中のPT01のようなパンツブランドは、装飾や付属品に大変なお金が掛かっており、まったくどれだけ本末転倒を極められるか競っているような状態です。

あげくに極端なスリムフィット闘争までも勃発しており、お洒落が好きな人ほど、目も当てられないほど裾幅の細いパンツを履いてしまっているのが現状となっています。

最後には裾を折り返すと柄の裏地になっていて……なんてものが出てきていますが、これはどこかで見たことのある仕様ですね。4万円払って、結局ハレやレイジブルーと同じものを買っているわけです。

そもそも高級なものと安物の区別の付きにくいパンツ類、しかも汚れ易い白パンやベージュパンツと来たら、これは安いものを買うのが一番です。

安いパンツは多くの人に合うようにベーシックな太さになっていますので、高級なファッション性を追求したパンツよりも良い意味で無難です。この際、重要ですが裾裏などに装飾の無いものを選びましょう。品質重視の目印です。

あまりお金をかけたくない人は、ユニクロで4000円のものを。お金をかけられる人は1万円〜1万5000円で日本のセレクトショップのオリジナルを買うと良いでしょう。イタリアのパンツと同じようなシルエットと履き心地で、無駄を排したものが手に入ります。

靴=3万5000円

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カジュアルな着こなしにおける靴はもはや、財布などと同じで趣味の世界というきらいもありますので、ここではジャケットスタイルやスーツに合わせる革靴に焦点を当てていきましょう。

革靴の場合、値段によって品質が一変するラインは3万5000円です。

以前は4万円以上出して初めて革底の本格的なイタリア製靴が購入できるといった感じでしたが、今ではどんどん安く良いものが入ってくるようになってきており、3万5000円で大変本格的な構造とイタリア的な美意識を感じる仕上げの革靴を購入することができるようになりました。百貨店の経営努力の賜物ですね。

また国産の革靴メーカー、といっても現在は殆どが「靴セレクトショップのオリジナル」といったところですが、これもまた素晴らしい靴を3万5000円〜作っています。

靴を選ぶ際には、製法と革の質、仕上げの綺麗さ、そして足との相性の4点に注意するのが大切です。基本的に革靴業界は非常にシビアなので、3万5000円以上になれば、ほとんどのブランドが値段相応なクオリティを提供しています。

でないと、日本中の革靴にこだわるオヤジ達からヤジとプレミアムモルツのビール缶が飛ぶからですね。

注意なのはそれ以下の価格帯のもの。同じ3万5000円出すなら、1万7000円で2足買った方がいい、という気持ちも分かります。ですが1万7000円で買える革靴は残念ながら絶望的です。ビールと発泡酒以上の差があります。

ネクタイ=1万3000円

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さて、最後にネクタイについても書いておきます。

ネクタイというものは日本と大変相性の良いアイテムらしく、そこかしこで様々なものを売られていますが、お洒落な人が選ぶネクタイは大抵5つか6つ位のイタリアないしはイギリスのブランドです。

結局本当にセンスの良い色柄を探せばイタリアやイギリスのものにいきついてしまいますし、中途半端なものを買うと締め心地が悪くて後悔することばかりです。

そもそもネクタイというのは、手縫いで作ることが前提のものです。これは締めた時に掛かる力を不規則に分散することで、解けにくく、緩みにくくするためですね。また使う芯地や、使うシルクは注意深く選ばなければ、締めてもすぐに緩むネクタイになってしまいます。

よく日本のサラリーマンで、ネクタイを1分間に3回ほど直している男性がいますが、それはポリエステルの芯材とポリエステルの生地を使った、ミシンで作られるネクタイが、力を全く分散しないからですね。

1万3000円以上で選ぶネクタイは、国産であってもイタリア製であってもほとんどが信頼に足る物です。1万6000円ほどのイタリア製ブランドをセレクトショップで適当に購入し、お洒落に詳しい人のところに持っていけば、「良いネクタイ買ったね!センス良いね!」と褒めてくれるでしょう。

そういったネクタイは一度締めれば殆ど緩むことがなく、結び目も綺麗で、本当のネクタイらしいディンブルを作ってくれるので、Vゾーンが一気に高級感のあるものになります。

いかがでしたか?

今回は少し長くなってしまいましたが、メンズファッションでの服へのお金の掛け方についてを解説してみました。特にクオリティが一変する価格相場は、知っていて絶対に損は無いはずでしょう。

次回のおすすめ定番ブランドと合わせて、是非参考にしてくださいね。

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