今注目のツイードとは!?
最近秋冬になるといっきに街中のセレクトショップやファッションブランドに現れる、ちょっとごわっとしていて、英国調のチェックや折り柄の入った起毛生地。
これはスコットランドで生まれた、ツイードと呼ばれる生地です。
普通の起毛の生地より少し厚めで、メルトン生地のようなフェルトみたいな感じでも、フランネルのような軽くて毛玉のある感じでもない、ちょっとざっくりとした起毛の織物。
ツイードはもともと、19世紀に史上最高とも言える栄華を誇っていたイギリスの中でも、まだ貧しい生活を続けていたスコットランドの荒涼とした土地に住む人々によって、防寒に使われていた実用的な生地ですが、転じて今では世界中で秋冬のお洒落な服地の代名詞ともなりました。
ヘリンボーン柄の持つちょっとカントリーな風合いや、スコットランド発祥らしいタータンチェックの色柄などが非常に特徴的なため、今では多く人の知るところですね。
ただ、お洒落だけどなかなかきっかけがなくまだツイードアイテムを持っていない、という人も少なくないはず。
ツイードを使ったアイテムは定番のジャケットやコートから、手袋、ブーツ、バッグ、果てはペンケースなどの小物まで実に様々。今年こそにツイードに挑戦して、温かみのある秋冬スタイルをしてみましょう!
というわけでツイード特集です。
『しまむら』もコラボしたハリスツイード
ハリスツイードは日本でツイードが人気になるきっかけともなった、有名な生地ブランドです。
スコットランド北西部のハリス&ルイス島という島で、昔から変わらない伝統的な織機を用いて織られるハリスツイードは、かなりごわっとした質感ですが、驚くほどタフで温かく、10年に渡って着用しても消耗するどころかむしろ味の出てくるハードな生地です(しまむらや安いファッションブランドの縫製が10年持つかは謎です……)。
もともとツイードというのは先ほども書いたように寒いスコットランドの土地で人々の防寒に使われていた生地だけありハードな質感ですが、現在の流行はむしろ柔らかく滑らかで軽い生地なので、こういったハードな生地は珍しくなっています。それでも1970年代までのハリスツイードに比べると、ずいぶんと軽く薄くなったみたいですね。
そんな中でも常にこの風合いを守り続け、いつも誰もが手の届く値段にあることが、このハリスツイードの良さですね。
ハリスツイードはハリス島の住民達が家にある人力の織機で手間をかけて織り、それをハリスツイード協会が厳密に選定して「ハリスツイード」ブランドで出荷しているのだとか。ちょうど日本の農協みたいなシステムですね。
もとはハリス島の領主の未亡人であった人物が、ツイードをハリス島の主要産業としていこうと努力を重ねた結果始まったものハリスツイードは、彼女が地道にイングランドやスコットランド本島への営業を重ねたことで知名度を上げていく。
ハリスツイードのような分厚い生地は、貴族達の必需品であるハンティングジャケット等にも使いやすく、次第にイギリスで人気の生地となっていきました。
こんな地域的なビジネスで作られている生地であるのにも関わらず、世界中のブランドが欲しがり発注を掛けているハリスツイードですから、その製造はいつも一杯一杯なのだとか。もちろん製造をし始めた頃に比べれば機械による部分も多くなっていますが、それでも伝統的な製法を守っているのがハリスツイードが信頼されている理由です。
私がスコットランドの首都エジンバラに数ヶ月滞在していたとき、季節はちょうど冬の始まりでしたが、町のそこら中でこのマークを見かけました。
エジンバラの付近にはツイード川という川まで流れており、旧市街のヴィクトリアストリートにはツイード製品の専門店があったりと、流石ツイード発祥の国の首都といった印象ですが、その中でやはり群を抜いて人気だったのがハリスツイード。
特にアジア人の観光客には知名度も高いようで、数多くの人たちがハリスツイード生地を使ったアイテムを買い求めていました。
今では日本でも多くのブランドがハリスツイード生地を使用したアイテムを販売していますね。例えば日本を代表するファストファッションブランド「しまむら」。
バッグや手袋、ブーツなどの一部にハリスツイードの生地を用いており、ハリスツイードの大きなタグが可愛いため去年の発売では売り切れが続出。
ツイッターなどでもその様子が騒がれましたね。もちろんしまむらとハリスツイードのコラボに限らず、様々な低価格ブランドでハリスツイードを使用したアイテムを見つけることができます。
今年も街中がハリスツイードのロゴでいっぱいになることが予測されます。ちなみにハリスツイードのロゴは100年も前から使われている歴史あるものなのだとか。
ハリスツイードほど一般的に有名な生地ブランドって、他にありません。
軽くて滑らか!気持ちの良いツイードもあります
今や日本の冬を埋め尽くそうとしている大人気生地であるツイードですが、素晴らしいのは何もハリスツイードだけではありません。
セレクトショップを始め多くのブランドが、イタリアや日本で織られた軽くて柔らかい現代的なツイードを用いたアイテムを発売しています。これらはソフトツイードと呼ばれ、上質なウールやカシミアを用いて、滑らかな手触りに仕上がっています。
ツイード人気と柔らかく滑らかな生地の人気が同時に来ているため、最近ではソフトツイードを多くのブランドがラインナップしています。例えばイタリアのロロピアーナ、カノニコといった人気の生地ブランド、スコットランドやイングランドの生地ブランドなどが、素晴らしい質感の柔らかいツイードを作っていますね。
流石にハリスツイードだと分厚くなり、ちょっと都会的なスマートさが足りないかな?と思うようなセットアップなども、こういったソフトツイード生地であれば軽やかで洗練された雰囲気になりますよね。
またコートなんかはソフトツイード生地だと、外を歩いているときに寄り添う人が嬉しいというおまけつき。
彼氏があまり良くないチクチクごわごわの生地を用いたコートを着ていたら彼女はくっつきたいと思えないかもしれませんが、それがカシミアシルクの柔らかい生地のコートだったら、気持ち良くてついつい寄り添ってしまうはずです。
もちろん彼女がアンゴラ混ウールの柔らかいソフトツイード生地のコートを着ていたら、彼氏はコートごとぎゅっとしたくなってしまうことでしょう。
色柄は好きだけど、どうしてもハリスツイードのごわごわ感が苦手という人、肌が弱くて柔らかいものを着たいという人にもこういったソフトツイードはおすすめです。
難点は値段が高いこと。一つは上質なソフトツイードは値段が高いこと。ハリスツイードのようにハードな生地であればさして気にならないウールの品質も、ソフトツイードとなればかなり大きな差を生みます。
質の良くないウールで作られたソフトツイードは中途半端にごわごわに、質の良いウールで作られたソフトツイードはやわらかくカシミアのマフラーのようになります。そのため、ちょっと残念なことにソフトツイードは「高い生地であればあるほど、滑らか」になっていきます。
せっかく買うのであれば、何年も使うことを見越して、奮発して質のいいものを一つ買うのがおすすめです。
ツイード以外の秋冬の注目生地は?
秋冬の生地はツイードだけではありません。例えば表面を起毛させたウールやコットンの生地、フランネル。ネルシャツで有名なこの生地ですが、ジャケットなどに使われる上質なものは、さらっとしているけど滑らかな、なんとも言えない手触りが魅力的。
シャツではなくむしろジャケットやスーツで挑戦していただきたい軽やかな起毛生地です。
こちらのようなメルトン生地は、フェルトのような風合いが温かいですね。
特にチェスターコートやダッフルコートで人気な生地。最近の秋冬で定番となったチェスターコートはもちろんのこと、少し重厚感のある英国製「グローバーオール」のダッフルコートなんかにも是非挑戦してみましょう。
またより滑らかな風合いで、スーツなどのウールをそのままわずかに起毛させたような上品な光沢とふんわり感があるサキソニー生地はドレススタイルの定番。
スーツでもジャケットでも、はたまたコートでも。非常に軽やかで薄く、それでいて温かいのでスマートに見られたいビジネスシーンで大活躍間違い無しです。
いかがでしたか?
今回はツイード特集から、その他のおすすめ秋冬生地まで紹介してみました。
今年の秋冬こそツイードに挑戦してみてくださいね!