知られざるナポリの実情とは?
あのゲーテに最も美しい街だと言わせ、「ナポリを見て死ね」という格言まであるナポリ。
世界一のピザとナポリ式のパスタ。イタリア一のエスプレッソに、ブランデーシロップをたっぷりと染み込ませたスイーツ、ババ。世界を魅了するサルトリア(仕立て屋)とカミチェリア(シャツ工房)の手縫い文化。
そして地中海の空気に太陽。
訪れるべき理由を百万と持つこの街には、たった一つの理由を以て多くの人々に敬遠されています。悪名を馳せる、恐ろしく悪い治安ですね。
その治安の悪さのイメージときたら「ナポリを見て死ぬというより、ナポリに行くと死ぬ」と言われるほどのものです。
日本人のバスから降ろさず観光するサファリツアーなるものがあった、などという話は有名ですし、数々の犯罪の温床になっているのも事実。というか事実ナポリでワードプレスを使おうとしたら、ナポリだけは局所的にアクセスが禁止されているという始末です。
イタリアのサルディーニャ島出身の友人とフィレンツェで話をしていたときに、「一ヶ月ばかしナポリにいたよ」と言ったときの反応といったら、「まあ何で君は生きているんだい?」と言わんばかりのものでした。
そんなナポリですが、本当に治安が悪いのか?
実際には正確な情報や最新の情報が少なく、多くの誤解を生んでいます。そういうわけで今回は一ヶ月ばかしナポリにいましたので、ナポリの治安の実情についてを書いていきます。
本当はそこまで悪くないナポリの治安
実際にナポリに行って感じたのは、ネット上などで言われているほど危なくないということ。
危なくないと言っては語弊があるかもしれませんが、つまり他のイタリアの都市を訪れるときよりもあと少し意識して警戒すれば、ナポリに限って超絶危険という事にはならないということです。
例えば上の写真はスリやひったくり、バイクを使った暴行などが多いため十分に注意する、とほとんど全てのガイドブックに書かれているスパッカ・ナポリです。そんなことよりもおじいさんが可愛くて、思わずほころんでしまいそうですよね。
体感としてはちょうど、トルコのイスタンブールを歩いているような感覚でした。
実際にはナポリにはゆったりとした場所も多く、お洒落な場所もあります。手荷物に気をつけ、マップ等を出さずに、いつも必ず目的地に向かっているかのような歩き方をしていれば、十分に楽しめる街です。
こちらはナポリのショッピングストリートの一つである、キアイア通り。
レストランやカフェ、ファッション関係のお店などが集まり散策していて楽しい通りです。このすぐ後ろには一着80万円のスーツを仕立てるナポリの老舗サルトリア(仕立屋)であるルビナッチ、右手にはナポリの有名なバッグブランドであるトラモンターノなどがあります。
ここも安心して歩くことができました。またナポリの市街地を見渡すことのできるヴォメロ地区などは、高級住宅街なので本当に静かです。ドイツの小都市を歩いているときのように安心して歩けました。
私がナポリに1ヶ月いる中では危険と言われている地域にも何度か立ち入ることがありましたが、一度だけスリに合いそうになったこと以外、特に危険な思いなどせずに過ごすことができました。
これはとんでもない数のパトカーや警官達が見回りをしている成果でもありますね。
ナポリでどう気をつけるべきか?
さて、そんなこんなで「気をつければ大丈夫」だなんて書いていますが、具体的にはどのように気をつけるべきか。一般的なことは既に分かっているよ!という人のために、ナポリで特に気をつけるべきことを書いておきます。
まずは危なそうな人を出来るだけ避けること。
ナポリは残念ながら、危ない人がたくさんいます。ローマやミラノを歩いていると、中央駅の周辺に「この人には近づかない方が良いな……」と直感的に離れたくなる人がときどきいますが、ナポリはそういう人がとんでもなく多い。
ナポリ中央駅の周辺などは、そういう人だけを集めて構成したような大変な状態です。
なのでまずはそういう人々に気をつけること。例えば人通りの少ない路地に迷い込んでしまって、自分が進もうとしている先にヤバそうな人が数人溜まっていたら、道を変えたうえで、一刻も早くメインの通りに出る。
そういう気をつけ方です。
次に手荷物を持たないことです。
先ほどガイドブックやネット上の情報は過剰だというようなことを書きましたが、確かにひったくりなどは多いだろうという印象があります。
そのため自分は常にパスポート等はデニムの内側に付けたポケットに入れ、ポケットにiPhoneと小銭、お札とクレジットカードを靴下に入れるようにして、手には何も持たずに歩いていました。
いくら日本人でも手ぶらでサングラスをしていて、コツコツとどこかを目指して歩いていたら、これはもう狙う対象としてはちょっと微妙なところ。それよりショルダーバッグを掛け、マップを持ってうろうろ歩いている日本人を狙うでしょう。
さらに、日没以降は出かけないこと。
こちらはナポリのメインストリートとも言え、多くのファストファッションブランドやお店が集まるトレド通りです。
非常ににぎわっており、昼間はスリだけ気をつければ全く心配のないような場所でしたが、夜9時頃にここを歩いたときにはどこからか、というかすぐ横のスペイン地区からヤンキー達が集まり、バイクで蛇行運転をしていたりと、面倒に巻き込まれそうな雰囲気でした。
昼間はパトカーが大量に巡回していますが、夜になると少なくなるため、荒れ放題なことになっているのかもしれませんね。注意が必要です。
最後に、ナポリにいくつか存在する危険地区に近寄らないことです。これは下の項で詳しく紹介していきましょう。
ナポリの危険地区
ナポリにはいくつか、立ち入ってはいけない危険地区があります。
危険地区というのは要するに貧しい人々が集まって住んでいたり、マフィアの本拠地になっていたりする場所で、ナポリの場合にはそういった地区が明確になっています。逆に言えばそれらの地区に近づかないというだけで、犯罪に巻き込まれる可能性がグンと低くなりますので、幸いとも言えます。
まずはスペイン地区。先ほど紹介したトレド通りの西側がスペイン地区です。
入り口が一つというわけではなく通りに面した地域なので厄介ですが、しかし多くがこのような景色になっており(旗や出店はありません)、丘に向かって登ってくようなかたちになっているので、分かると思います。
まずはここに立ち入らないようにしましょう。
次にフォルチェッラ。上の写真もここです。
フォルチェッラはナポリのマフィアであるカモッラの本拠地になっていることでも有名で、スペイン地区と比べてもよほど危険な場所なので、絶対に近づかないようにしましょう。
具体的にはナポリ中央駅を出て、目の前のガリバルディ駅を超えたところにあるガリバルディ通りの向こう側がフォルチェッラ。基本的にはガリバルディ駅(広場)周辺はかなり物騒なので気をつけることと、ナポリ中央駅から見てガリバルディ駅より向こう側には行かないようにしましょう。
何度かフォルチェッラに行きましたが、ナポリで唯一スリに合いそうになったのが、このフォルチェッラの入り口付近でした。雰囲気的にもスラム街に近いものがあり、かなり危険なので、近寄らないようにしましょう。
今回はナポリの治安についてを解説しました。
しっかりと注意すれば、ナポリはとても面白く、楽しめる街です。少し旅慣れしている人であれば特に、是非ナポリを訪れてみてください!