前回はシーン別に考える、革靴の種類などを紹介しました。これ以降ではより皆さんに知っておいていただきたい、革靴の良し悪しの話や、お待ちかね、独断と偏見のおすすめの革靴ブランドなどを紹介していきましょう。
革靴の良し悪しの見分け方
今回は革靴の良し悪しの見分け方についてを見ていきます。「靴はいいものを買え」というのはもう定番のアドバイスですが、実際には何が「良い靴」なのかを解説している人は少ないですよね。
ここでは、非常に簡単に「良い靴」がどんなものなのかを、4つの側面より説明します。
①値段
こんなことを言ってしまっては怒られてしまうかもしれませんが、やはり革靴の良し悪しは値段である程度決まります。
というのもやはり良い靴を作ろうとすれば、革の調達から鞣し、製作まで非常に手間とコストが掛かってしまう。ある程度ハイクオリティな靴を欲しいのであれば、それなりにお金が必要な訳です。
逆に革靴専門の有名ブランドが作っているものであれば、高いお金を出して粗悪な革靴を掴まれることはありません。何故なら革靴の世界は大変シビアで、どんな価格帯でも対抗するブランドが多く、買い手の目も肥えています。そのため高い値段でふざけたものを作って売っていると、即行で干されてしまうわけです。
問題はどのくらいの金額のものを買うべきか?ということです。
例えば上の写真の靴、シルヴァノ・ラッタンジは一足30万円の世界ですね。確かに超絶技巧とも言える数々の職人技を用いたラッタンジの靴はあたかも芸術作品であり、30万円の価値もあるでしょう。
しかしそういった靴はまあコレクターの範疇です。
このラッタンジなど手縫いの超高級靴の次に来るのが、10〜15万円のハンドメイド靴。
こちらはイタリアを代表する靴ブランドである、サントーニの上位ライン。丁度10〜15万円といったところですね。
もしお金に余裕があるのであれば、このあたりのグレードの靴は非常におすすめ。何故ならこういった靴は定期的にソールを張り替えることで一生モノになり、手入れ次第で本当に人生の全部を共にすることさえできるからですね。
安く良い革靴が欲しい!と思うのであれば是非4万円弱で探しましょう。
2万円強から3万円では、ラバーソールやら質の悪いペンキで塗った革などで燻っている革靴の世界ですが、3万円を超えて3万5000円以上になってくると、急に品質が一変します。
しっかりとした美しい色合いの革を使い、ブラックラピト製法、グッドイヤーウェルト製法などで丁寧に作り上げた靴が増えるわけですね。上のTitlo Classicはスペイン製のグッドイヤーウェルト靴で、少し色むらのある仕上げがお洒落ですが、3万5000円程度です。
その他パティーヌのように美しい色合いを持つ、イセタンメンズの靴が4万円ほどと、やはり2万円代で買う靴はもったいないですね。
②製法とソール
たった今言及したところですが、製法も良い靴を見分ける上ではまた大事な要素です。特にソールが張り替え可能なものであるかどうか、そして革底かどうか、革底の仕上げが綺麗かどうかの三点は、いつもお店で靴を裏返して確認しましょう。
ソールの張り替えが可能な製法で、代表的なものはグッドイヤーウェルト製法。これはイギリスや日本の靴が多く採用している製法で、ソールの張り替えがしやすく、耐久性が良いことが利点です。難点というほどではありませんが、他の製法に比べるとソールが硬く感じられ、歩きやすくなる(靴が馴染む)まで時間が掛かったりもします。
次に有名なのがマッケイ製法と、それを改良したブラックラピト製法です。イタリア製の靴によく見られる製法ですね。
これは直接靴とソールを縫い付ける製法なので、雨の日に水が染みたりという難点はあり、また耐久性ではグッドイヤーウェルトには劣りますが、その分最初から履き心地が良く、また見た目がすっきりとしていますね。
もちろんソールの張り替えは可能です。もう一つのブラックラピト製法、上の写真のソールですが、これはマッケイ製法にもう一つソールを被せた形のもの。グッドイヤーウェルトのような耐久性、メンテナンス性をマッケイの良さをそのままに追加した製法です。
これらを覚えておき、革底のものを選ぶと良いでしょう。有名なブランド、例えば先ほど紹介したサントーニやマグナーニ等でもラバーソールのものはありますが、もし「良い靴」というところにこだわって靴を買うのであれば、やはりおすすめはレザーソールです。
また、ソールの染色や仕上げなどが綺麗で高級感のあるものは、品質にこだわっている証拠ですね。
④革の風合い
黒や濃いブラウンなどの色のものでは分かりにくいですが、明るめのブラウンやカーキ、キャメル等の靴であれば革の風合いを見て品質を判断しましょう。
安い靴は色合いが単一で、べったりとしていることが多いです。また色に表情をつけていたとしても、非常に不自然で安っぽくなっていたりします。ビニールのような手触りや不自然な光沢感も、安くて低品質の靴の特徴です。
これは質の低い革の粗悪さを隠すために、自然な染色ではなく、分厚い塗装を施しているようなイメージですね。
それに対し、しっかりとした品質の靴は先の写真のように手塗りで色むらを表現していたり、そうでなくても革が適度な光沢感と奥行きのあるしっとりとした風合いになっています。
Antonio Maurizi個人的にあまり光沢のある靴の仕上げは好きでないので、相当マットな感じにしていますが、革に自然な色むらがあるのが見えるかと思います。
⑤ステッチの細かさと精度
靴に限らず、鞄やシャツなど多くのファッション関係のアイテムに言えることですが、ステッチの糸が細く繊細で、精密に縫製がされているものは、高品質のものであることが多いですね。
例えば上の靴は先ほども紹介したシルヴァノ・ラッタンジですが、やはり縫製が細かく綺麗です。
シャツの世界で言えば、フライやブリオーニのシャツは恐ろしく精密なステッチで上質なものを作っていますが、その値段は5万円以上です。下のオリアーリのシャツも、襟のエッジを縫う繊細なステッチだけ見れば素晴らしいシャツだと分かります。
またバッグに関しては、より靴に近いステッチワークですので、良い靴のステッチを見慣れていき、革の質を見た目で判断できるようになれば、作りの良いバッグも見抜けるようになります。
いかがでしたか?
今回は革靴の良し悪しの見分け方についてを解説させていただきました。
次回をお楽しみに!