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主婦が台所で縫うネクタイが世界を魅了する。フランチェスコ・マリーノ

イタリアの主婦達が台所で縫う至宝ネクタイ

“生地をバイアス(斜め45度)にカットし、最適な芯地をマリーノが選ぶ。ネクタイの形にしてピンを打ち、仮留めとプレスをする。この行程を任されているのは12歳から始めて現在40歳になる女性だ。単純だが彼女以外には誰もできない。それを近所の主婦たちが持ち帰り、台所で縫い上げるのである。かくして、なんの変哲もない田舎町のネクタイ工房から世界でも指折りのネクタイが生まれる。誰も真似できない。まったく、痛快な話である。”

『ナポリ仕立て Sartoria Napoletana -奇跡のスーツ 片瀬平太』より

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イタリアのナポリは魅惑の都市です。ヨーロッパでありながら、アジアとも思えるような喧噪と多様性に満ちたこの都市には驚くべきほどの柔軟さと個性があります。

そしてそれが最も端的に現れているものの一つが、ナポリ仕立てのジャケットやスーツ、手縫いを用いたシャツ、そしてナポリの伝統的な手法で作られるネクタイです。

フランチェスコマリーノはナポリ近郊の街で作られる、第一級品のネクタイ。

世界で最も美しい宝石を女性の胸元に飾るのと同じように、男性の胸元に最も美しい宝石を飾ってくれるようなネクタイであるブリオーニや、ラグジュアリーと職人技を恐ろしく高いレベルで融合させたことで世界中の人々に憧れられるキートンのネクタイとはまた別の世界観で存在するネクタイ。フランチェスコマリーノのネクタイはそういうネクタイです。

世界中から最高級と言われるネクタイを集めてきたところで、フランチェスコマリーノのネクタイほど締め心地がよく、使う人に寄り添うネクタイはそうそう見つかりません。

その理由はナポリの伝統工芸的な習慣と技を生かしたフランチェスコマリーノのネクタイの作り方にあります。

冒頭に引用した文章がそれですね。驚くのは一人の女性がピンを打ったネクタイを、主婦達が家に持ち帰って台所で縫い上げるというところですよね。

なぜ主婦たちが台所でネクタイを縫うのか?これには理由があります。

絶妙な使い心地を生み出す、台所の手縫い

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ネクタイというのはシンプルでありながら奥の深いアイテムです。ミシン縫いで平準化して作ったのであればすぐに解けてしまう使い心地の悪いネクタイになってしまいますし、手縫いで作るにしても雑なだけではいけません。

また先ほど引用した本にあるフランチェスコメローラ氏の言葉よれば、ネクタイは手縫いであってもずっと同じ手順で作業を繰り返していると、まるでミシン縫いのようになってきてしまうということでした。確かにシンプルな作業であるネクタイの縫製ですから、一日中工房で机に向かって同じ作業をしていれば、手縫いであっても安定した縫い目で正確に縫えるようになってきてしまいます。

実はネクタイは安定した縫い目では使い心地が良くなりません。これはネクタイが引っ張られているときに力を様々な方向に効率よく逃すことによって、断然緩みにくくなるもので、これが平坦な縫い目だと力がそのまま緩みやすさになってしまうからですね。

よく安いネクタイをしていると気がつけばネクタイが緩んでいて、何度も位置を直したりしますよね。これはマシンメイドのミシン縫いによるネクタイなので、縫い目が均一で力に逃げ場が無いからです。

だからフランチェスコマリーノのネクタイは台所で主婦が縫っている。

彼女達が夕食の準備をしながら、そのあいまあいまに熟練した手先で縫うネクタイは「怠惰な慣れ」と全く縁のない、常に新しい手先で縫っている。そしてその縫い目は、細かいことは不明ですが、ナポリの伝統的な技を使った独特の縫い方なのだとか。

ちょうどマリアーノルビナッチのネクタイを見たときに「これは面白い!」と思った規則性の無い縫い目に似たも雰囲気ですね。

この規則性の無さが力を分散させ、言わばネクタイが色々な方向へ引っ張られるようにする。するとそえらの力は相殺し合い、結局ネクタイはその場にとどまってしまう。結果ネクタイは一度位置を決めるとずっとその場所にいて、緩んだりしにくい、と簡単に言えばこういうわけなのかもしれません。

 

いかがでしょうか。

通常のモデルであれば2万円以下で買えるこのネクタイ。

タイユアタイのネクタイがいかにブランド価値が高くても、やはりナポリの伝統工芸はそれとはまた違った価値を持っています。そしてその値段は価値を考えれば非常にリーズナブルと言えるでしょう。

ぜひチェックしてみてください!

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