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【昭和39年】57年前の赤ワイン(1964年)はどんな味【飲める?】

かれこれ10年以上も通っているワインバーに80歳近いお爺さんがいるのですが、ある日「お前、東京オリンピック知ってるか?」と聞かれました。
「延期になりましたよね〜」と答えると「そうじゃない」。
お爺さんが語ってきた東京オリンピックは、昭和39年の東海道新幹線が開通したときの話でした。

僕は1970年のEXPO大阪万博でさえ生まれていないので、前回の東京五輪は全く未知の世界で言っていることがチンプンカンプンでした。そのワインバーで「これを飲もう」という話が出ていて、有り難くも当時のワインを数杯+ボトルを頂けることになったのです。

1964年(昭和39年)とは何だったのか?

1964年についてウィキペディアで調べてみたのですが、かなり濃い一年だったようです。
これ以外にもマジで?という出来事が羅列してあるので、興味あればウィキを読んでみてください。

1月1日 – カルビーが「かっぱえびせん」を発売。
3月6日 – コンスタンティノス2世がギリシャ王国国王に即位。
4月1日 – 日本人の海外観光渡航自由化。観光目的でのパスポート発行が可能に。ただし年1度、所持金500USドルまでの制限付き。
4月17日 – ニューヨーク万国博覧会で、初代「マスタング」が発表される。
5月28日 – パレスチナ解放機構 (PLO) 設立。
8月10日 – 大塚製薬設立。
9月1日 – ホテルニューオータニ、東京プリンスホテル開業。
10月3日 – 日本武道館開館。

かっぱえびせんの販売期間すごく長いな…という。ニューオータニが開業というのも驚きです。
「日本人の海外観光渡航自由化」というのも初めて知ったのですが、昔は自由に海外に行けなかったんですね〜。

CH. CHASSE SPLEEN シャトー・シャス・スプリーン 1964
Moulis en Médoc  Appellation Moulis ou Moulis en Médoc

日本語のワイン関連文献では、ムーリスまたはムリスと書かれていることがある。しかし、AOC名も、コミューン名も、ムーリ・ザン・メドックが正式な名称である。
AOCムーリ・ザン・メドックは、メドックに6つある村名AOCのひとつである。ただ、マルゴー地区と同じく、複数の村(7ヶ村)で作られている。

後から認定されたAOCであるため、ワインはポーイヤックなど先行して認証された地区のものに比べ、やや軽めで、格付けのされたシャトーは一つもない。しかし、シャトー・シャス・スプリーン(Château Chasse Spleen)は、格付けに近い実力は十分にあるといわれており、評価の上がってきているシャトー(Château)も多い。 Wikipediaより引用

ムーリスというのは無名ですが、どうやら格付けに近い実力があるそうです。ボルドー格付け6級相当でしょうか。

恐る恐る半世紀以上前の赤ワインを飲んでみる…

さてそんな年に作られた赤ワインを実際に飲んでみました。
「本当に飲めるんですか!?」
ワインバーの席でお爺さんが出してきたボトルを手に、聞いてみると「全然イケる」とのこと。

よく見るとラベルが新しく、2000年代に売られてたのでは?と思えるほどにキレイです。

裏返すと、株式会社松澤屋のシールが貼ってあり、そこにはhttps://www.grandvin.net/と現代的な表記があります。
てっきり前回のオリンピック後に発売されたのを長い間もっていたのかと勘違いしましたが、どうやら最近(といっても10年以上前?)入手したもののようです。

「これが57年前の赤ワインかぁ…。」とグラスを傾けると完全にレンガ色に変色しています。
透明度が上がってグラスのふちが無水エタノールのような厚みがぷっくりとあります。
写真を撮るのを忘れてしまったのですが、それはもう感動的でした。

一口飲んでみると「酸っぱい!」飲めるには飲めるのですが、プラムのような果実の酸味が口に広がります。
とても飲めたものじゃないと思ったのですが、お爺さんの説明通りに30分以上待つと、急にまろやかになって酸味が消えているではないですか。

「半世紀寝てたんだから急に起こしたらダメに決まってるでしょ」と、確かにコルクを抜いて急に起こしたばかりに飲むのは間違いで、抜栓してから1周間は飲めるそうです。

ありがたく瓶も持って帰ったのですが、中には葡萄の沈殿物であるオリがびっしり。
お爺さんが言うに「ここの部分が美味しい」そうです。実際に最後の一杯も頂いたのですが、味が断然濃くなって凝縮した甘みのようなものがありました。

飲んでいるのは歴史と神秘

ここまでくると、「美味しい」だとか「まずい」ではなく「凄い…」と表現する他にありません。
蒸留酒のマッカラン50年は1000万円、山崎50年は3700万円するのに、蒸留もしていない果実を潰して発酵させ瓶詰めしたワインが数万円で手にはいり、それも半世紀以上持つのかと驚きました。

これぞ歴史と神秘ですね。もしかしたら2021年に作られた赤ワインが2100年に飲まれる可能性さえあるのです。
昔と違って醸造技術や保管の衛生問題など進歩しているので、22世紀に今のワインが飲まれてもおかしくありません。

2020年のワインを購入して僕が80歳過ぎたときに「お前、東京オリンピックを知っているか?」という掛け声で赤ワインを若者に飲ませてみたいものです。