イタリア人に英国紳士の装いはできるか?
“世界一の洒落者であるイタリア人も、英国スタイルを着こなすことはできない。英国のシャツが無ければね。”
イタリア人の洒落者は、イギリス好きです。
お洒落なイタリア人はジョンロブの靴を手入れして履き、サヴィルロウのスーツに憧れ、ブリティッシュトラッドの柄を身につける。ヴィンテージのイタリア製最高級生地にはわざと「Made in England」の文字が入ったと言われています。
昔イギリス人がイタリア人に憧れ、「グランドツーリング」と呼ばれるイタリアを目的地とした大きな旅をしたように。またイギリスのスーツをナポリの職人たちが独特の個性を以て改良し、ナポリ仕立てと呼ばれる今では世界的に人気な仕立てを作り上げたように。
イギリスとイタリアは深く、そして相互的な関係を持ちながらそれぞれのファッション文化を作り上げています。
しかしそこで、一つ問題がある。
それは、イタリア人は英国紳士になれるか?ということ。結論から言うと、彼はなることができます。そして英国のスタイルは私たちにも出来ます。しかしそのためには、徹底しなければならないことがあります。
英国のシャツを着ること。いくら美しい英国調のスーツを着ても、ジョンロブのビスポークシューズを履きこなしても、英国のシャツがなければ英国スタイルは完成しません。
ネクタイを締めてこそ美しい堂々とした襟形、絶対的な信頼感を覚えさせる重厚な縫製、そして紳士のシャツたる存在感はイタリアのシャツにはなく、英国シャツのみが持っています。
今回はそんな英国シャツの魅力に迫ります。
英国シャツの魅力
英国のシャツの魅力とはずばり言うと「紳士的な雰囲気」です。なんと新鮮なシャツ評を聞かせてくれるんだ、とイギリス流の皮肉を飛ばすのはまだ早いですよ。まあペールエールでも飲んで気を落ち着けなさい。
英国の言うところの紳士=ジェントルにはしっかりとした基準があります。ダンディズムのお手本とされ、世界で最もお洒落な人物であったとも言われている18世紀の人物、ボー・ブランメルの装いですね。
無駄な装飾を廃し、シンプルに洗練させた上質さと、エレガントで気品の漂う着こなしと立ち振る舞いこそをお洒落としたボー・ブランメルは、国王さえもひれ伏す存在で、その言葉は今なお人々の手本となっています。
ごく自然で無駄がなく、上質さでまとうお洒落な雰囲気と、立ち振る舞いからくるエレガンス。これをお洒落と定義するとき、英国のシャツはまさにそんなお洒落を実現するためにあると言っても良いでしょう。
まずは上質さ。
英国のシャツは上質な生地を使い、丁寧な縫製で作られていますが、その雰囲気はイタリア製とはまったく異なる。
イタリアの上質なシャツの多くはラグジュアリーで繊細な高番手な生地を使ったものだったり、光沢感に優れた生地を使ったものだったりします。縫製も非常に技巧的で、手縫いのボタンホールや袖付け、襟付けなどがいかに美しくできているかによって、その上質さが語られることが多いです。
それに対して英国のシャツは、上質でありながらも派手さを控え、番手競争からは外れ、素材そのもの質を追求した生地を使っていることが多い。縫製はミシン縫いがメインでありながら、どの部分にも一切の無駄がなく、丁寧で堅実な作りが成されている。
これらはまさに、英国の「紳士」というものをシャツで体現していると言えます。
もちろん派手な色彩を用いたシャツやネクタイが多いのもイギリスの特徴ですが、それは遊び心として用いるものでしかない。普段の装いはあくまで上質さとエレガンスを求め、休日や特定の日の装いに英国らしい茶目っ気を利かせているわけです。
“If a man is left alone in a room with a tea cosy, and he does not attempt to wear it, he should not be trusted.”
“もしティーコジーのある部屋に一人になっても、それをかぶってみようとしないような男は信用ならないね。”
とまあ、そういうわけですな。
英国シャツのもう一つの魅力は、着る人に紳士的な装いを要求する襟です。
イタリアのシャツというのはまあ「チャラい」もので、ネクタイ無しで着ても美しく、まるでそのために作られているかのように襟が決まる。センツァクラバッタすなわちネクタイをしないジャケパン着こなしはイタリア人の間では当たり前の着こなしです。
しかし英国のシャツはそうはいかない。英国のシャツの襟の形は第一ボタンまでしっかりととめ、ネクタイを締めたときにこそ魅力的です。つまり着ているその人に、常に美しい形でネクタイを締めているよう、英国のシャツは求めてくる。
結果として、着ている人がエレガントで気品のある立ち振る舞いを心がけるように、英国のシャツは要求してくるわけです。
個人的にも、きっちりと決めたい日には、自然とイギリスシャツに手が伸びるものです。そして、デキる男たちはみなそうしてイギリスのシャツを着て、自らが紳士にあれるよう優雅な立ち振る舞いを常に心がけているのです。
おすすめイギリスのシャツ
いかがでしょうか?今回はイギリスのシャツの魅力についてを解説してみました。もしあなたが気品漂う紳士のような男性を目指しているのであれば、イギリスのシャツを着て常にそれが美しく見えるように意識しましょう。
そうしているうちに、あなたは間違いなくそのシャツが似合うような立ち振る舞いを心がけるようになる。そして気づいたときには、紳士になっているというわけです。
では、実際にイギリスのシャツが欲しい人のためにおすすめをいくつか紹介しておきます。
Turnbull & Asser ターンブル&アッサー
かの有名な007の主人公で、英国紳士の模範的な装いをする人物と言われているジェームズボンドが愛用するシャツ、ターンブル&アッサー。
英国シャツとしては最も有名で、最も美しいシャツの一つです。イギリス製のシャツのインポートが極端に少ない日本でもやはりターンブル&アッサーのシャツは人気があり、百貨店や一部のセレクトショップなどで展開されています。
堂々として威厳のある襟の形、上質で目の詰まったコットン、素晴らしいシャツとはどういうものなのかを教えてくれるのが、ターンブル&アッサーですね。
GIEVES & HAWKES ギーブス&ホークス
トラッドスタイルのファンやスーツ愛好家であれば必ずたどり着くスーツの聖地が二つあります。すなわちイタリアのナポリと、ロンドンのサヴィル・ロウですね。
ギーブスアンドホークスはロンドンのサヴィル・ロウ1番地に店を構え、エリザベス女王、女王の夫君エディンバラ公フィリップ殿下、チャールズ皇太子と3つの英国王室御用達(ロイヤルワラント)に指名されているイギリスを代表するテーラーです。
最近になって見直されている英国スーツの筆頭ブランドとなっているギーブスアンドホークスのスーツやシャツは、都内の百貨店などで展開されています。
Dunhill ダンヒル
日本で最も手に入れやすい英国シャツと言えばダンヒルのシャツ。厳密にはルーマニア製などがメインで英国製ではありませんし、他の英国のシャツ専業ブランドに比べれば品質もそれほどではない。
しかし世界中で簡単に手に入れることができ、英国シャツのニュアンスをしっかりと感じることができるという点ではダンヒルのシャツは貴重です。
特にダンヒルの重厚感のある襟やクラシカルなサイジング、ラグジュアリーブランドらしい贅沢な生地は、英国シャツの入門としてはまったく不足ないと思います。
以上がおすすめの英国シャツブランドです。
ぜひチェックしてみてください。