基準になるシャツ、BARBA バルバ
イタリアには数多くのシャツブランドが存在します。
イタリアならではの色合いや生地感、丸みを帯びた着る人に沿うようなシルエット。もちろん日本のシャツも非常にレベルが高く、縫製の美しさや生地のレベルでは世界に通用するレベルです。しかしイタリアのシャツはより強く人々の心を惹き付ける。
それは「レベルの高さ」だけでは語り尽くすことのできない、絶妙な美意識の現れたディティールや、まるで思いやりのような手縫いの技、それにエレガントで優雅なシルエットの持つ魔力かもしれません。
そしてそんなイタリアシャツの中で、日本で最も人気と言っても過言ではないブランドがBARBA バルバです。
1964年に創業したバルバは小さなシャツ工房でしたが、今ではイタリアの中でも最も大きなシャツブランドの一つになっています。モダンなシルエットを持ち、手縫いとミシン縫いを合わせた手法によって作られるこのバルバのシャツは、ちょうど現代的なセミハンドメイドのシャツの見本、基準のような存在になっています。
例えばイタリアのシャツを語るときに、フルマシンメイドのシャツしか知らなかったとしたらどうでしょう。オリアンでも、ギローバーでも構いません。もちろんそれらは良いシャツですが、手縫いという手法がもたらす効果については、体感することができないでしょう。
逆にハンドメイドのシャツは、もはや嗜好品か芸術品の類いです。アンナマトッツォの手縫いシャツはお金を積んでも手に入れるのが難しいほどレアなアイテムですね。ナポリのハンドメイドシャツはボレリやフィナモレ、サルバトーレピッコロといった見つけやすいものでも4万円近い金額になるだけでなく、地方の都市に至っては目にすることもできない代物たちです。
しかしバルバは一般の人にも何かの拍子に手の届く値段で、日本各地のセレクトショップで化粧箱に入って並んでいる。作りは本格的なイタリアシャツがどんな縫製で、どんな生地なのかを知るのに最適なレベルで、その袖付けで手縫いのもたらす柔らかな着心地を体感することもできる。
だから、まずはバルバを着てみましょう。
これからイタリアのシャツを着る人に、そうおすすめしたくなってしまうのが、BARBA バルバのシャツなんですね。
BARBA バルバの特徴
バルバのシャツの特徴はなんといっても、袖付けです。バルバの袖付けは柔らかく、非常に甘く縫われており、動いたときにまるでニットの生地のように伸縮して腕の動きについてくる。
もちろんハンドメイドシャツともなれば当たり前の仕様ではありますが、それでもバルバの袖付けの柔らかさと、そこから来る着心地の良さはなかなか、値段からは想像できないほどのものだと思います。
ちなみにこのハンドの袖付けですが、「何回の洗濯でほつれるか数えるゲーム」というゲームにイタリアファッション好きは全員強制参加となっています。購入時に既にほつれている、というちょっとハードモードな設定の場合もあれば、がんがん洗っても全然ほつれないという勝ち逃げゲームの場合もあり、あたかもギャンブルのようです。
そしてバルバの第二の特徴は、やわらかい襟ですね。芯地を接着しないバルバのシャツの襟は非常に柔らかく、人によってはピッシリとした襟と違って合わせるネクタイに困ってしまうかもしれません。
しかし例えばタイユアタイなどのスカーフのように軽いセッテピエゲと合わせるのであれば、バルバの柔らかい襟ほど素晴らしいものはない。
シワさえもお洒落の一部として楽しめるようなリラックス感があるのが、イタリア南部、地中海を臨むナポリのシャツならではの特徴ですね。
また上の写真を見ていただければ分かりますが、鮮やかな発色の生地はイタリアのシャツだからこそ見られるものですね。山吹色のストライプや麻の霜の色合いを生かした光沢のあるピンクなど、上質さがあってこそ上品でお洒落に見える派手な色合いが、バルバのシャツをより生き生きとしたものにしていますね。
実際にバルバのシャツの生地を触ってみれば、その上質さがすぐに分かるでしょう。綿100%ならそのさらりとした手触りに、麻はざらりとした手触りとジャガード織のシルクのような光沢や滑らさに、原材料からのこだわり感じます。
もちろん、やや少しフェミニンな印象もある襟形もバルバのシャツの魅力です。バルバはナポリシャツの定番とも言えるセミワイドスプレッドの大きな襟のシャツから、タブカラー、ラウンドカラーのブラウス襟に至るまで非常に美しい造形で作りますね。
特にバルバルのタブカラーには、カジュアルな仕様でありながらもしっかりとした存在感と綺麗な印象を持った大きめの襟からナポリ人のエレガンスが感じられます。
BARBA バルバの次に選ぶシャツ
それでは、バルバのシャツを何枚も集めてしまった人の、次のシャツは?
幸いバルバのシャツからであれば、次なる感動を与えてくれるシャツに十分出会うことができます。バルバはマシンメイドとハンドメイドを掛け合わせた、現代のイタリアシャツの基準ともなるシャツですが、より手の凝ったハンドメイドシャツを探してみれば良いわけですね。
まずおすすめなのは、上の写真のMario Muscariello マリオ・ムスカリエッロ。同じくナポリのシャツですが、ハンドメイドを駆使した洗練された作りが、ハンドメイドシャツとは何たるかを教えてくれます。
現在最も注目のシャツブランドの一つですね。
またもっともっと手縫い感にあふれ、職人の手の通った後が感じられるようなシャツを体験してみたいのであれば、次のシャツはSalvatore Piccolo サルバトーレ・ピッコロです。
各所が手縫いにて作られているのはもちろんですが、サルバトーレ・ピッコロのシャツはその手縫いの温かさが他のシャツとは異なります。
甘く、優しく縫われたピッコロの縫製はまるで、母親が息子のために心をこめて作った手縫いのシャツのような風合いです(ちなみに作っているのは愛嬌のある男性です)。そしてその着心地は、ちょうど最高級のコットンで作ったカットソーを着ているかのよう。甘い縫い目が伸びしろとなり、人の動作にどこまでもついていきます。
いかがでしたか
今回はバルバのシャツを特集してみました。
もしも星の数ほど、とは言わずとも街の数だけ存在するイタリアのシャツ工房のシャツを尋ねて歩くときが来るのであれば、そのときまでに是非バルバのシャツを知っておきたい。
これからイタリアのシャツを体験する人には間違いなく、BARBA バルバのシャツがおすすめです。