ナポリ最古のシャツを着る。Luciano Lombardi ルチアーノロンバルディ

メンズファッション

ナポリ最古のシャツブランド

イタリア最古のサルトリアといえば、サルディーニャ島のサルトリアカスタンジアですが、シャツの聖地であるナポリの最古のシャツブランドは、ルチアーノ・ロンバルディ。

このルチアーノ・ロンバルディの創業は1892年。ガリバルディとヴィットーリオ・エマヌエーレ2世がイタリアを統一して、イタリア王国が建国されてからやっと30年が経った頃と考えれば、その歴史がいかに長いかが分かりますね。

そしてこのシャツの生まれたナポリという都市にも注目してみると面白い。

昔から物流や通商の地として栄えていた地中海の街ナポリはギリシャ人が作り上げた植民地であるネアポリスが起源とされていますが、その街は普通のヨーロッパ諸国の都市とはまるきり違います。まるでアジアのような喧噪とヨーロッパの優雅さが共存した、非常に個性的な都市なんですね。

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そして、その都市の人々はイタリアでも有数の粋な人々だとされています。

ナポリ人はイギリスから持ち込まれたスーツを独自の工夫と圧倒的な技術で、ナポリ仕立てと呼ばれるに至る柔らかく軽やかでありながら、エレガントな仕立てに解釈しなおしてしまった。そしてその技術は今、キートンやアットリーニといった世界的なラグジュアリーブランド、アントニオパニコといった伝説ともなりつつあるサルトリアとして世界を魅了しています。

さて、そんなナポリのシャツもまた世界を魅了している。かの有名なボレリのシャツに始まり、フィナモレ、サルバトーレピッコロ、バルバと日本のセレクトショップを彩るシャツはどれもnapoliの文字が入っています。

今回はそんな中でも最も歴史の古い、ルチアーノロンバルディのシャツの魅力に迫りましょう。

Luciano Lombardi ルチアーノ・ロンバルディ

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そもそもハンドメイドのスミズーラ(注文服)ばかりを手がけるこのブランドですが、プレタポルテのシャツもまた凄い。

今回紹介するのはマシンメイドラインと呼ばれている、なんと2万円ほどの定価設定のシャツです。

値段的に言えばオリアンやダノリスといったマシンメイドシャツのブランドと同じですが、レベルはバルバのシャツにも迫る。いや、バルバのシャツも持っていないような魅力を持っているのがこのルチアーノ・ロンバルディのマシンメイドシャツです。

まず手に取って気づくのはそのシャツの生地の良さです。さらりとして軽く、ややふんわりとした滑らかさを持ったその生地は間違いなく上質で、エジプト綿ではないかと思います。

生地にはフライやブリオーニのシャツのように際立ったラグジュアリーさはありませんが、南イタリアの気候に映えるややマットな風合いと明るいココア色のストライプの色合いが絶妙に合わさり、エレガントでクラシカルな雰囲気となっています。個人的には、日々のお洒落で着るシャツはこういった生地が好きですね。

また日中に野外で着ることも多いので、あまりにラグジュアリーな光沢感の強いシャツよりも、このくらいの軽やかさが欲しい。流石にナポリの地で最も長く続いているシャツのブランドだけあり、ナポリの人々が本当に求めるようなシャツを作り続けているのではないでしょうか。

次に見ていきたいのは袖付けの部分。

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バルバなどのシャツと同様手縫いによる袖付けです。これは非常に手のかかる縫製で、それだけでも貴重ですが、それよりも注目したいのはギャザーの寄せ方です。

非常にふんわりとした質感を持つこのシャツの袖付けは、着たときにふんわりとふくらみ、男性の肩に一種女性的ともいえるエレガントな立体感を作ってくれる。シャツはイタリア語でカミーチャと言い、実は女性形の名詞です。

こんな袖付けのふんわりとした優雅さこそが、女性形名詞で名前のついた「シャツ」の本来あるべき姿なのかもしれません。

もちろん優雅さはカフスの付け方など、様々な部分に見られます。

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非常に細かなギャザーの寄せ方は、かの有名な女性のシャツ職人、アンナマトッツォのシャツを思わせる柔らかさです。恐るべきことは、これがイタリアのインポートシャツとしては入門とも言える値段帯である2万円のシャツで、マシンメイドラインであるということですね。

この値段でここまで美しくエレガントなシャツを作られてしまっては、他のマシンメイドのシャツブランドが食いっ逸れてしまいます。幸か不幸か、ルチアーノロンバルディは日本ではそれほど有名なブランドではないため、多くの人はこのブランドのシャツを知らずにいます。

このシャツはルチアーノロンバルディの中でも一番安いグレードのマシンメイドラインです。ボタンホールなども含め殆どがミシン縫いでありながら、このエレガントさです。

なので、このシャツを手に取ったときの感想は「まあ、マシンメイドか」といったほどのものとはほど遠いものでした。すなわち「マシンメイドでこれなら、セミハンドメイドやフルハンドメイドはどうなってしまうんだ」といったものですね。

それほどこのシャツはコストパフォーマンスに優れているし、そしてルチアーノロンバルディ、ナポリ最古のシャツブランドのシャツは、魔力のような魅力を持っているというわけです。

恥ずかしながらまだルチアーノロンバルディのハンドメイドは目にしたことがありませんが、これはクラシコファッションを追いかけるものにとって、「探求をやめない」一つの目標になるので、むしろ良かったのではないかとも思っています。

皆さんももしどこかでこのルチアーノロンバルディを見つけたら、ぜひその優雅なシルエットを確かめてください。

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